シェイブテイル日記2

シェイブテイル日記をこちらに引っ越しました。

安倍内閣が主導する「失われた30年」

安倍内閣が今月30日に閣議決定する予定の「骨太の方針」が明らかになったようです。 政府が30日に閣議決定する骨太方針の全容が分かった。経済再生と財政健全化の両立に向けた「経済・財政再生計画(仮称)」で、2018年度に基礎的財政収支(プライマリ…

政府債務削減の意味は正しく理解されているか

消費税は国会で新たな法律が通らなければ2017年4月には更に2%引き上げられ10%とされることが決まっています。 ただこうした法律を通した国会議員や国民の間で財政再建のための増税のもつ意味について、正しい理解が得られているのかかなり疑問です。■金融…

日銀緩和と農水天下り団体の力比べ?

今日の市場は、黒田東彦日銀総裁の衆議院財務金融委員会での「さらなる円安はありそうにない」との発言を受け、円高株安の黒田逆バズーカショックに見舞われました。今のところ黒田総裁の発言の真意は分かりませんが、一部では金融緩和による円安政策を米国…

免税すれば外国人でなくとも消費は増える

安倍首相は6月5日、マスコミの扱いはベタ記事に近かったですが、日本経済再浮上の鍵となる重要な発表をしました。 安倍晋三首相は5日の観光立国推進閣僚会議で、訪日外国人客による旅行消費額を年間4兆円に倍増させる新たな目標を表明した。訪日客の増加…

ギリシャ危機と緊縮ポピュリズム

ギリシャが今日期限を迎えるIMFへの債務返済を履行するかどうかについて報道が錯綜しています。 ・IMF「ユーロ離脱の可能性も」 ギリシャけん制 ラガルド専務理事 5月28日 独紙フランクフルター・アルゲマイネ電子版)インタビュー ・Greece delays 5 Jun…

桶屋が儲からないのは風が吹いていないからか

まず最初に、金融政策一本槍リフレ派の方にお詫びしなければいけないことがあります。 前回書いたリフレ派の皆さんは、最近お元気でしょうか。 - シェイブテイル日記 で、「インフレターゲット下の金融政策だけでデフレ脱却できる」の対偶は「デフレ脱却でき…

リフレ派の皆さんは、最近お元気でしょうか。

リフレ派の皆さんは、最近お元気でしょうか。 増税を平気で口にする御大浜田先生に驚き呆れ、リフレ派を離脱してはいますが、当然今も、デフレ脱却は現在の日本に必須という部分を共有している私シェイブテイルは元気にしております。「インフレターゲット下…

経済学とは何だろうか(書評)

経済学者青木泰樹氏の著書「経済学とは何だろうか」は、私たち現代経済学を鳥瞰したい人に、興味深い観点を提供してくれています。青木氏は「経済学とは富士山のような単独峰とは捉えてはならず、山塊のようなものと捉えるべき」と説いています。その山塊も…

関門大橋が出来た頃

前回に続いて、ピケティの所得データベースネタです。まず米国から(図1)。 図1 米国の実質所得推移 出所:The World Top Income Database(ピケティ) 所得は2013年物価水準で実質化されている。これを見たら米国民は「オーマイガッ!平均所得は上がって…

日本ではピケティでr>gより大事なこと

ピケティの本の話題は多少下火になってきましたが、ピケティが編者となって今も構築が続いている世界各国の所得の詳細がわかるデータベース、The World Top Incomes Database があることをご存知でしょうか。そのデータベースから、世界主要国での上位10%、…

日本でジェネリック薬使用を増やすには

日本の医療では諸外国に比べてジェネリック医薬品(後発薬)のシェアが小さいことが以前から指摘されています。去る19日に開かれた経済財政諮問会議では、民間議員からジェネリック医薬品と効き目が同じでも価格が高い特許切れ新薬を使った場合、患者の自己…

米国「金融政策では過剰な財政再建策は打ち消せない」

少し前になりますが、米国財務書が今年4月に出した為替報告書で日本のアベノミクスについても触れられていました。*1 この報告書で、日本に関する部分はそう長い文面ではなく、その前半は日本の経済状況に関する事実の記載のみでしたので、改めて後半部分を…

財務省の懸念と荒物屋のゴミ箱

積み上がった政府債務がいかに危ないかという文脈で、「もし国債金利が1%上がると、金融機関が抱える国債は2.5兆円減価する」という話があります。 主要7カ国・G7のイタリアにまで広がった欧州の財政不安。国債買いが細り、長期金利が上昇した場合、日本では…

ラリー・サマーズの「豹変」に思う

今年4月に、元米国財務省長官や国家経済会議(NEC)委員長を務めたラリー・サマーズと前FRB議長バーナンキの「長期停滞」を巡る論争が話題をよびました。 「長期停滞論」とは、2013年11月にスタンレー・フィッシャー*1の業績を記念する行事の席上、ラリー・サ…

税収弾性値が1.1に見える人っていますか

日本の名目GDPはリーマン・ショック後の2009年度を底に反転し、昨今のアベノミクスにより5年連続で増加しました。 昨日の日経新聞では、国の税収が想定外に上振れしたことが報じられています。 景気回復などで法人税や消費税といった国の税収が大幅に増えて…

大阪都構想って利益相反行為なんじゃないの?

大阪市を廃止して5つの特別区を設ける、いわゆる「大阪都構想」の賛否を問う住民投票が告示され、来月17日の投票日に向けて、賛成派と反対派の運動が本格的に始まりました。私も個人的には行政の無駄というのは省けるものなら省けばよい、という考え方に…

中国は緊縮日欧を超えていく

4月9日に公表された米国財務省半期為替報告書では、欧州・日本での景気刺激策として過度に金融政策に依存しているとの指摘がなされています。 米財務省が9日公表した為替報告書は、日銀の金融緩和への依存度が高過ぎるとし、財政についても2015年度予算…

ケインズは他の経済学者と何が異なっていたのか

リーマン・ショック以降、ケインズ経済学の見直しがなされています。 実際、4兆元(当時56兆円)の財政出動を行った中国ではリーマン・ショックの悪影響は余りみられず、少々遅れて財政政策を金融政策と併用した米国は既に金利を上げる準備を始めています。 こ…

安倍首相が参考にすべきは均衡ではなく金鉱

現代日本でデフレが始まるまでは、世界金融史上、最も長いデフレ不況とは「大不況」と呼ばれた19世紀末のデフレでした。 ただそのデフレの終息は明確で、1873年に始まったデフレは1896年にはピタリと終息しました。 日本の場合、1994年頃からデフレ気味で、…

3月の自殺者数速報がでました

最近、3月の自殺者統計が内閣府からだされました。 それによれば、3月の自殺者数の前年同月比はマイナス1.8%とわずかながら下がったようです。こちらが今年3月の自殺者数推移です。 図表1 月別自殺者数の推移(総数) 出所内閣府自殺対策推進室3月は例…

これ、先生の真意ですか?

まず先入観なく、発言者も伏せて本日日経新聞朝刊の記事を読んでみましょう。 ――物価上昇率を2年で2%にするとした日銀の目標をどうみますか。 「インフレ目標はそんなに重要ではない。インフレを起こすのは国民に対する課税だからできるだけ避けたい。日…

米国は苛立ってますよ、安倍首相

これまでアベノミクスを歓迎していた米国ですが、かなり風向きが変わってきたようです。 米財務省は9日公表した半期為替報告書で、欧州と日本は景気を刺激する上で金融政策に過剰依存していると批判し、他の政策手段を利用しなければ、すでに悲観的な世界経…

日本の政府債務伸び率は世界最悪か

政府債務問題が日本経済の大きな課題であることは間違いありません。 ただその実態はかなり誤解されて伝わっている面があります。近年「日本の政府債務の対GDP比は世界最悪レベル」だとか「歴史的にみても戦中の1944年頃と同等以上に悪化」といったニュース…

中央銀行が債務超過に陥ればどうなるのか

先進国で中央銀行の資産が毀損して債務超過になれば、貨幣価値はどうなるのでしょうか。 最近、この疑問に対する答えが出ている国があります。その国とはスイスです。スイスでは今年1月15日にスイスフラン高対策として2011年以来設定してきた対ユーロ…

経済同友会は消費税財源で何をしたいのか

消費税増税について経済同友会の積極性が際立っています。 その目的は政府の財政再建、なのでしょうか。 同友会の広報誌には興味深い記述がみられます。経済同友会は1月21日、財政再建に関する提言を発表しました。 歳入面では2017年4月に消費税を予定通り10…

他国と異なる日本のドーマー定理

不思議な話なのですが、畑農鋭矢教授(明治大学・商学部)のリサーチによれば、日本の財政問題で頻出するドーマー定理(ドーマー条件)は、1940年代にE.D.Domarが提唱した説とは似ても似つかないものに入れ替わっているということです。事実であればまったくミス…

四半世紀に渡る経済政策の誤ちがわかる1枚の図

最近ピケティ本ブームで、高所得者と低所得者の所得格差が話題を集めています。 ただ、そこにもうひとつデータを追加してみると、日本では政府が大きな政策の誤りを犯していることが見えてきます。早速ですが図1をご覧ください。 この図で折線グラフは平均…

私が「減価する地域通貨」を諦めた理由

昨年の今頃、私は消費税増税を目前に控え、いくつかの自治体と連携して、地域通貨を実践する準備をしていました。 ところが調べていくうちに「今の日本では地域通貨はまず上手くいかない」という確信を持つに至りました。 この20年ほどの間に、日本で試行さ…

財政が悪くなれば「毒を食らわば皿まで」が正解

現在政府・与党では財政健全化計画に向けて検討が進んでいます。 財政健全化といえば、緊縮財政が当然として議論されていますが、本当に当たり前、なのでしょうか。これを考えるために、中学数学レベルの大変単純なモデルを作ってみました。このモデルでの結…

デフレの正体は借金不足

■デフレの正体は借金不足 突然こういっても何のことだかさっぱり解らないかもしれません。 しかし次の図1を見ていただければその意味がわかっていただけるのではないでしょうか。企業が債務を持てばインフレに、債務を返済すればデフレに 図1 企業の資金過…