シェイブテイル日記2

シェイブテイル日記をこちらに引っ越しました。

経済同友会は消費税財源で何をしたいのか

消費税増税について経済同友会の積極性が際立っています。
その目的は政府の財政再建、なのでしょうか。
同友会の広報誌には興味深い記述がみられます。

経済同友会は1月21日、財政再建に関する提言を発表しました。

歳入面では2017年4月に消費税を予定通り10%に引き上げるだけでなく、17%まで段階的に追加で増税すべきだと求めた。歳出も社会保障分野歳出も社会保障分野の大胆な改革と給付カットが必要だと訴え、年間5000億円のペースでの公費削減に取り組むよう促した。
(中略)
すべてをやり遂げたとしても必要十分とは言い切れないのが、日本の財政の現状だ」(岡本圀衛・日本生命保険会長)と危機感を強調した。

消費税17%、社会保障費削減を 経済同友会財政再建で提言日経新聞 2015/1/21

2月3日には麻生財務大臣に消費税率17%までの段階的引き上げを求める提言をしています。 

経済同友会は3日、財政再建のために消費税率を今後17%まで引き上げることなどを求める提言を麻生財務相に手渡した。
 経済同友会が麻生財務相に手渡した提言では、1000兆円を超える債務を抱える日本にとって財政再建は喫緊の課題で、問題を先延ばしすれば「破綻に突き進むことになりかねない」としている。


これらを見ると、経済同友会は政府債務膨張に対する危機感から消費税増税を求めているようにみえます。

ところが。
2013年8月の同友会会誌「経済同友」には論調の異なる記述がみられます。

(経済同友会による)現在の消費税増税というタイミングでの法人税減税の主張は、「企業vs個人」という形で捉えられがちですが、事実は決してそうではありません。
何よりも設備投資や株主配当、賃金・雇用の改善などに大きなインパクトを与えます。

法人税引き下げにより企業活動が活発化すれば、企業収益が伸び、税収は逆に増える」というパラドックス効果を指摘する声もあります。

代替する財源を手当てする、「ペイ・アズ・ユー・ゴー」の原則に忠実であるべきではないでしょうか。
本委員会ではそうした観点から、税収中立の立場で、代替財源のあり方について議論してきました。

消費税の追加引き上げを伴わない第一段階と、追加引き上げを行わざるを得ない第二段階に分けています。
第一段階では、法人税の税目を一本化させて減税し、その代替には個人住民税および固定資産税を想定しています。そして、第二段階では、法人実効税率をさらに引き下げ、その代替として地方消費税の拡充を想定しています。いずれにしても2020年度までには、ぜひとも法人実効税率25%を実現しなくてはなりません。法人税減税は、財政のあり方、社会保障のあり方とは切り離された形で議論されがちです。誰かが、財政問題も踏まえた形で訴えなくてはならないとの思いでまとめました。かなり思い切った改革案ではありますが、幸い何とか実現するべきだとの声も多数いただいています。今後も真摯に、実現に向け取り組んでまいります。
  法人実効税率引き下げで世界と戦う基盤づくりを急げ
広報誌経済同友(2013年8月) 


2013年8月といえば消費税増税の是非をめぐり、「集中点検会合」が開催されていました。 

その中で経済同友会

増税を先送りした場合には、国の信用が落ちて国債が暴落し、金利が大幅上昇して国の社会や経済の基盤が破綻してしまう。
(岡本圀衞 経済同友会副代表幹事、日本生命保険相互会社代表取締役会長)

と述べています。

それに対して全く同じ時期に刊行された同友会広報誌では消費税増税の目的は法人税減税だと言い切っています。

法人税減税は税前利益を増やすことにインセンティブを与えるのですから、同友会が減税を求める理由としているうち、法人税減税は株主配当には好影響を与えるにしても、設備投資や賃金・雇用といった税前の費用に相当する部分は圧縮する方向を企業は目指すでしょう。

日本の消費税は創設以来、消費税増税での税収増と法人税減収とが相殺され、名目GDP減少と家計は実質所得の減少、更に所得税収減収つまり総税収の減少と、デフレがもたらされています。

データで示せば、次の図のように実質GDPは維持されているのに、所得配分(=家計+政府+企業)の中で、中核であるはずの所得低位90%の国民の実質所得は、バブル崩壊と消費税デフレで減り続けています。


日本の実質GDPと低位90%平均収入推移
平均収入は2010年水準で実質化している。
所得配分の中で低位90%の家計への配分は減らされ続け
その他の主体(高位10%家計、政府、企業)への配分シェアが
増え続けている。

逆進性がある消費税を財源にして法人税減税を求めるということは、低所得者の実質所得を原資に、企業株主への配当に当てろと言っているも同然ですね。

経済同友会幹事企業には海外売上比率や外国人持ち高比率の高い企業が並んでいるのもその主張と整合的というわけでしょうか。