植田和男って誰ですか、という方に
私シェイブテイルもこの方については詳しくは存じ上げないのですが、以前この先生が書かれた日経新聞「経済教室」の記事を読んだことがありました。
その記事を引用しながら少々コメントを追加してみたいと思います。
ハイライトはシェイブテイルが入れたものです。
→(シェイブテイルコメント、以下シ)
植田和男先生は少なくとも2年前の段階では一般の人々同様に「政府債務は減らすべき」という理解をされたようですね。
この課題への対応とも関連して、いわゆる現代貨幣理論(MMT)による「自国通貨発行能力のある国ではインフレが起きない限り、政府債務増大を懸念する必要はない」という主張が話題を呼んだ。この主張が当てはまる最近の例としては、10年前後のユーロ危機時に、自国通貨発行権を持たず高水準の政府債務を抱えるイタリアなどでの国債金利急上昇が挙げられる。
だがこうした考察は、MMTによらなくても伝統的な経済学の範囲で可能だ。さらにインフレにならない場合に、本当に高水準の債務残高が維持可能なのか、経済に悪影響をもたらさないのかなどの疑問にはMMTを超えた考察が必要だ。
(シ)いやいやいや。MMT現代貨幣理論の会計部分はそんな薄っぺらい事実ではないですね。確かにMMTなら「自国通貨発行能力のある国ではインフレが起きない限り、政府債務増大を懸念する必要はない」と主張はするでしょう。ところが、植田さんがわざわざ引用したユーロ危機のイタリアなどは自国通貨を持たずしたがって政府債務は多すぎれば問題も起きるでしょう。ところが日本円の場合にはこれから植田先生が就任する日本銀行が原理的には無限に自己債務として円貨を創出できるんですよ。
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しかも例えば高齢者に移転支出をして発生する財政赤字を国債発行で賄い、その元利合計もまた国債発行で賄うといういわゆる「ポンジーゲーム(ねずみ講)」の余地が生じる。国債残高は金利の率で増えるが、経済はそれ以上の率で拡大するので、国債GDP比は縮小していくからだ。
(シ)えーっと。自国通貨建て国債発行って、個人向け国債のような例外を除けば、基本は国民の預金を借りたものではなく、逆に国民の金融資産を創造した結果生じたものですよ。つまり現実世界では、植田先生の主張とは逆に国民の預金が国債を生むのではなく、国債が国民の預金を生んでいるので、「ポンジーゲーム(ねずみ講)」なんていう批判は主流派経済学という宗教の中での、現実離れした批判ですが?
より根本的な問題はこの間、平均でGDP比4%を超える基礎的財政収支(プライマリーバランス)の赤字が継続し、政府債務残高が増え続けていることだ。この赤字が是正されない限り、よほど金利が成長率を大幅に、かつ長期間下回らない限り、債務GDP比は拡大を続ける。経済厚生引き上げの効果もあり得るとされる世代間所得再分配も、日本では既に極限まで進行しているといえよう。
(シ)植田先生。プライマリーバランス均衡を気にするべき国々とは日本とは異なり、自国通貨建てでは政府債務を賄えない国です。そこを間違えているというのは大変危険な思想ですね。
(シ)植田先生に良心があるなら、MMTの話をするのなら、まず主流派経済学のメガネを外しせめて数冊のMMT入門本を手にしてからにすべきです。どこのMMT論者が日銀に長短金利抑制策を継続せよと主張しているのでしょう?
(シ)日銀総裁がそんな現実離れのバカげた発想に留まるなら、日本経済への悪影響は計り知れませんよ。今からでも遅くないです。日銀次期総裁は辞退すべきでしょうね。植田先生みたいな方が次期総裁では失われた30年どころか失われた半世紀か失われた日本確定ですよ。