シェイブテイル日記2

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日本の政府債務伸び率は世界最悪か

政府債務問題が日本経済の大きな課題であることは間違いありません。
ただその実態はかなり誤解されて伝わっている面があります。

近年「日本の政府債務の対GDP比は世界最悪レベル」だとか「歴史的にみても戦中の1944年頃と同等以上に悪化」といったニュースをしばしば見聞きします。

では日本の政府債務の伸び率は世界的にみてどのレベルにあるのでしょうか。
図1がその答えです。

日本の政府債務伸び率(2001年−14年)は世界的には低位グループ

図1 政府債務伸び率
出所 IMF WEO Oct. 2014
政府債務は国際比較のためにドル建て換算とした。
2001年から14年までの政府債務伸び率を
「減少」「増加だが日本以下」「日本以上に増加」の
3群に分けて表示。
日本の政府債務伸び率ランキングは、伸び低位側から数えて160カ国中52位。

図1に示すように、比較可能な世界160カ国中、政府債務は減少した国々は22カ国でした。 政府債務は増加したが日本より増加率が小さい国々は29カ国。一方政府債務増加率が日本より大きい国々は108カ国もあります。

つまり政府債務増加率ランキングでは、イメージとは異なり、日本は低位グループに属するんですね。


もうひとつの見方として、世界各国をいくつかの似た国家群に分けてそれらの国々での政府債務伸び率と比較してみたのが図2です。

日本の政府債務伸び率はどの国家群の国々の平均伸びよりも低い

図2 世界の国家群と日本の政府債務伸び率
出所 IMF WEO Oct. 2014
政府債務伸び率はドル建て換算で2001年から2014年までの平均値。

日本の政府債務伸び率が低いのはかつての円高ドル安のせいではないのか、という疑問もわきますが、為替推移をみてみると、この期間の円高は年率1%程度です。

つまり国家間比較をするためにドル建てにしたバイアスを考慮しても、日本の政府債務伸び率はどの国家群の平均よりも低いといえそうです。

日本は政府債務の伸び率が大きいといわれていますが、それはあくまでも経済規模つまり対名目GDP比での話です。

日本の経済問題は政府債務規模やその伸び率の問題ではなく、比較される経済規模が伸びていないこと、とりわけ名目平均所得が緊縮財政の結果減少していることが諸悪の根源と言えましょう。