これ、先生の真意ですか?
まず先入観なく、発言者も伏せて本日日経新聞朝刊の記事を読んでみましょう。
――物価上昇率を2年で2%にするとした日銀の目標をどうみますか。
「インフレ目標はそんなに重要ではない。インフレを起こすのは国民に対する課税だからできるだけ避けたい。日銀も我々も2〜3年前に石油価格が半分以下になるとは思っていなかった。その責任を日銀がとる必要はないから(エネルギー価格の影響などを含んだ)消費者物価指数を目標とするのは合理的ではない。(デフレの主因である)需給ギャップが狭まっていることは間違いない。2%というのはどちらかといえばインフレの上限とみるべきだ」
「雇用の方を目標にするのが正攻法だ。(安定雇用のための)手段として中間目標の物価目標がある。完全雇用で成長率が良ければ(2%目標に)こだわる必要はないといってもよい。ただ、いまの状態ではインフレにしない限りそういう事態にはできない」
――成長率を高めるにはどのような政策が必要になりますか。
「法人税についてはまじめに考えてほしい。日本の法人実効税率は米国とともに世界的にみても高い水準だ。日本が法人税を10〜15%下げるといえば、投資機会を待っている外国企業から多くの投資が回ってくる。日本の投資がシンガポールに逃げていかない。日本は(20%台前半の)英国や韓国よりも下げるというジェスチャーが必要だ」
金融政策、物価偏重に懸念 日経新聞 2015年4月14日 朝刊
この取材は、リフレ政策の大御所でアベノミクスに助言役を務める浜田宏一内閣官房参与に対するものです。
「インフレ目標はそれほど重要ではない」
インフレ目標と量的緩和を実施すれば、たちまちデフレは脱却できるという話だったのでは?
「インフレを起こすのは国民に対する課税だからできるだけ避けたい」
物価を消費者物価指数(CPI)でみるからこそ、原油安はデフレ要因にみえますが−もちろん釈迦に説法でしょうけれど−ガソリンが安くなればドライブに出ようという人が感じる直観の通り、GDPデフレーターという物価指標*1で現状をみれば、原油安は輸入デフレーター低下を介して、GDPデフレーターは上げるデマンドプル要因なんですよね。
当たり前ですが、日本経済にとって、原油安は喜ぶべき要因です。
政府日銀は、物価指標として原油安では誤解を産み、またデフレ経済では上方バイアスが大きいCPIに加えて、GDPデフレーターや東大物価指数のような切り口が異なる物価指標を含め、正しい判断をするべきかとおもいます。
それにしても浜田参与が目指すインフレ、とはもしかして純粋なコストプッシュインフレのことでしょうか。それなら確かに国民に対する課税でしょうね。
そしてそうであれば、これまでのマイルドなデフレの方がまだマシなのでは?
「法人税(減税)についてはまじめに考えてほしい」
法人税が高いと言われる日本から主要企業、例えばトヨタやキヤノンのようなグローバルに展開する企業が、法人税逃れのために本社をシンガポールなどに移そうという計画は、私は寡聞にして知りません。
法人税減税とは税引前利益を増やすインセンティブを企業に与えるのですから、コストにあたる人件費や原材料費は減らそうとするでしょう。 それってデフレ促進策なのではないでしょうか?
法人税についてまじめに考えるなら、儲かった企業から取る法人税は高率にし、儲からない企業からさえ奪いとる消費税を廃止すべきでしょう。*2
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この取材記事、名前を伏せたままなら、私には財務省の役人あたりの発言とまるで区別がつきません。
国民が望んでいるのは確かにインフレそのものではないですね。需要が増大することによるデマンドプルインフレ。
需要増大をもっと噛み砕いて言えば、銀行に積み上がった家計・企業には使えないお金、マネタリーベースではなく、使えるお金がよく回る状態と言っていいでしょう。 その結果、我々国民の所得のかたまり名目GDPが成長し、税収増もあいまって、政府財政の健全化も図れます。
リフレ派重鎮から、家計・企業がお金が世の中を巡るような施策に対して一言も出ないのは失望を禁じ得ません。