名目GDP増加策と政策実現性の関係
今日12月14日は衆議院選挙当日です。経済政策ではアベノミクスを掲げた安倍自民党が圧勝しそうな勢いですが、気分は晴れません。安倍首相はこのままでは、本意か不本意かはともかく、消費税10%増税を実行し日本経済を壊滅させかねません。
そこで今日はそうした現実を踏まえて、絶対多数を背景にした安倍内閣に、我々の賃金のかたまり*1である名目GDP増加を実現してもらえる政策選択肢について考えてみます。
安倍首相が始めたアベノミクス(消費税5%)ではそれなりに景気が上向き、今年3月までは順調に名目GDPも増えていきました。(図表1)
アベノミクスの効果を消費税3%増税が打ち消した
図表1 名目GDPの四半期推移
出所:内閣府GDP統計 (青線)
赤い線は筆者が参考に追加したもので、名目GDPに含まれる消費税のうち
今年4月増税された実質2%分を引いたもの。*2
ところが、今年4月に消費税が3%分増税になると、それまでのアベノミクスの好影響はほぼすべて打ち消されてしまいました(図表1の参考赤線)。
この選挙戦では安倍首相は「この道しかない」と称し、8%さらに10%への消費税増税を肯定的に訴えていますので、2年後には消費税が10%にあげられるのが最も蓋然性が高いシナリオと言えましょう(政策実現性最大)
ただその場合には我々の賃金のかたまり、名目GDPは負の成長が加速し相当悲惨な状況になりそうです。
そう考えると、消費税を8%に据え置くという選択肢も考えられます。この場合、上記10%増税シナリオよりはマシですが、現状延長として、名目GDPの負の成長は止まらないでしょう。
仮に安倍内閣が消費税を5%に戻すとすれば、これがアベノミクス開始から今年3月までの状況ですから、名目GDPはゆるやかなプラス成長が見込めます。
これを延長して考えれば、消費税を執行停止(あるいは税率0%、消費税廃止)ならば更に大きく名目GDPは伸びるでしょう。
ただ安倍首相の今の主張から考えれば、消費税率を減らせば減らすほど名目GDPは高くなるが、政策実現性の方は低くなっていくでしょう。 つまり残念ながら今後の安倍首相が実施しそうな大抵の経済政策では名目GDP増加効果と政策実現性とがトレードオフの関係になっていると思われます。(図表2)
安倍政権下では名目GDP増加と政策実現性はトレードオフか
図表2 今後の名目GDP増加策と政策実現性の関係
安倍首相はアベノミクスをベースに次の政策を考えるだろう。
図中、パーセンテージは今後の消費税税率。
アベノミクス+消費税N%という政策選択肢以外には
金融政策+財政出動というポリシーミックス、国債の日銀直接引受
を財源とした財政政策も追記した。
図中プロットされた位置は筆者の現在の主観による。*3
消費税は消費にペナルティを課す名目GDP課税である以上、図表1のようにアベノミクス効果を消費税が税率が上るほど逆方向に効果を発揮することは理解しやすいでしょう。
安倍首相はアベノミクスで凄いことをやり遂げたと自己評価して今回の解散総選挙に打って出たのでしょうが、国際比較してみると、アベノミクス後を含め、日本の名目GDP増加率は世界最低レベルのままです。(図表3)
1997年以降の日本は名目GDP伸び率万年低位国
図表3 名目GDP水準の国際比較
出所:IMF WEO Oct.2014 2014年部分は2013年時点の推定値
各国の自国通貨ベース名目GDPを1997年=100で示したもの。
ドイツは世界的にみて名目GDPの伸び率が小さい国のひとつだが、
それでも1997年に橋本内閣で消費税を5%に上げた以降、
アベノミクスの期間を含め、名目GDP成長率は独>日となっている。
安倍首相自身がアベノミクス+消費税増税、つまりアベノミクス+逆アベノミクスを自ら選択し、しかも今後は逆アベノミクスに傾注しようとしていることに気づいてもらえれば、我々の賃金のかたまり名目GDPを増加させる政策の蓋然性は高まるのでしょう。 ただ安倍首相にこの事実に気がついてもらう手段が見えていません。
安倍首相向けというよりもすべての政治家向けに、消費税が逆アベノミクスであることを懇切丁寧に説いた書籍を作り、永田町中心に無償配布するというのもひとつの手でしょうか。それを実施するのに必要な費用は500万円程度かもしれません。 これで名目GDP(度々繰り返しますが我々の賃金のかたまり)が100兆円単位で増えていくなら、自費出版+配布費用の500万円などタダみたいに安いものです。
ただ、実際500万円の身銭を切ったとしても、財務省などとのシガラミに絡め取られ、我々の賃金向上策など考えたこともないであろう大半の国会議員は今の意見を変えそうにもありません。
であればその500万円はドブに捨てるも同然です。 私は今この辺りでもやもやしています。