政府債務問題は2030年に消失する?
現在日本の政府債務は1000兆円を超えています。
ところが現在のアベノミクスを続けていくと、2030年には政府債務問題は消失するかも知れません。
現在の政府債務残高は、国債に限っても約1000兆円です。
これを巡り、政界では「消費税は15%、いや30%でも財政持続不可能」といった意見や、学会でも「財政健全性を判断するドーマー条件を日本財政が満たすには」といった議論が繰り広げられています。
その一方で、日銀は現在アベノミクス・第一の矢として量的質的緩和を実施しており、その主な手段として毎月長期国債をグロスで7.5兆円買い入れています。
その結果、現在興味深い現象が起こり始めています。
長期国債総額は増えるのですが、財政問題として実質的に意味がある部分は減り始めているのです。(図表1)
財政問題として意味がある国債残高は減り始めている
図表1 国債残高とその内訳
出所:日銀資金循環統計
図表1は国債の保有主体を日銀とその他(家計・企業・金融機関・海外)に分けたものです。
国債残高全体は減る気配はありません。
ところが、アベノミクスで日銀が大規模に国債を買い入れるようになって以降、その他主体が保有する国債残高は減り始めています。
日銀が保有する国債についても政府は日銀に金利を払う必要があります。
ただ、日銀は政府の子会社のようなものですから、日銀は国債金利で上げた収入の大半を、政府に国庫納付金として納めます。 行って来い、でチャラというわけです。
従って、日本で問題にすべきなのはその他主体が持つ国債部分のみ、ということになります。
では今後その他主体が持つ国債部分はどうなっていくのでしょうか。
これはシェイブテイルの予想になりますが、アベノミクスが始まった頃は景気良く第一の矢、第二の矢をぶち上げ、また消費増税の意図も見えず、株価は上がり、ドル円レートは大幅円安となりました。
ところが安倍内閣が消費税増税の決断をし、今年4月に消費税が8%に上がってみると、現在の消費状況を示す東大日時物価指数は下げに転じました。
消費税増税により東大日次物価指数は下げに転じた
図表2 東大日次物価指数
出所:東大日次物価指数プロジェクトウェブサイト
異次元緩和と消費税3%アップの効果を比べれば、消費税アップの効果が上回っている、ということになるのでしょう。
すると、黒田日銀総裁の発言を聴いても、消費税増税には賛成されているようですから、日本は再び深いデフレの淵に沈むことになるでしょう。
そして異次元緩和は強めることはあっても、テーパリングなど弱めることは夢となる可能性があります。
仮に今のペースでの異次元緩和を将来とも続けるとなれば、国債残高はどのようになるかを描いてみたのが図表3です。
このままの状況が続けば、'30年にはその他主体が持つ国債残高はゼロ!?
図表3 現在の状況が続いた時の国債残高予測
現在の異次元緩和のペースでその他主体の国債残高が減ると
すると、'30年頃にはその残高はゼロとなり、全ての国債を日銀が
保有するという文字通りの異次元状態に。
現状の異次元緩和+消費税増税(デフレ堅持)政策が続けば、なんと'30年ころにはその他主体保有の国債は残高ゼロとなり、全ての国債は日銀保有となる計算になります。
この状態から考えれば、冒頭の政界での「消費税◯十%」だとか、学会での「ドーマー条件云々」といった議論をよそに、日本の財政問題は15年ほど経てば既に片付いていることになります。
ただ、その時にはグロスの政府債務は今よりはるかに多く、その一方で日本の名目GDPは消費税により強制削減され、政府債務の健全性を示す政府債務残高対名目GDP比は恐ろしい程高くなっているでしょう。
政府債務健全性指標は前代未聞の悪化で、実態としては政府債務問題は既に終焉。 なかなか面白い時代が来そうですね。国民の所得の固まりである名目GDPが低迷していることを脇に置きさえすれば。
[追記2014.09.09]
tdam氏:>財政再建至上主義と金融緩和万能論への皮肉なんでしょうけど
ネタを明かせば仰るとおりです。現在の政府が遂行する変質アベノミクスは、まさに金融緩和万能+財政再建至上主義ですから、それが行き着くところを想像しやすく描いて見せました。
元々狙っていたはずのデフレ脱却とはずいぶん違った姿ですね。