今の税制で法人税減税より重要なこと
昨年の一般税収はこれまでの政府見通しより遥かに多くなりました。
今後の税制を考える上で、現在の日本の税収は、政府が現在想定しているよりも名目GDPに鋭敏に反応するという事実を踏まえる必要がありそうです。
今日6月8日の日経朝刊によれば、2013年度法人税収が予想よりも1兆円以上上振れしそうだということです。
法人税収、最大1兆円上振れ
13年度納税額、大企業5割増 税率2%相当 減税論議に弾み
日経新聞2013年6月8日朝刊
財務省では2013年度の一般会計税収を何度か予測してきました。
図表1はそれを時系列に並べたものです。
財務省の昨年度税収予測は当初大幅に過少だった
図表1 財務省による一般税収予測の推移
出所:財務省。但し14/6予測は日経新聞による。
財務省は13/1時点では税収の伸びは対前年度比プラス0.8兆円としていた。
13/10には、低い税収伸びを前提に、消費税増税を決定。
13/11には税収伸びをプラス3兆円と修正。
今朝の日経の集計では伸びは3.7兆円以上と報道されている。
税収は名目GDPによって大きく影響を受けます。
では、昨年1月時点で財務省は名目GDPの伸びを過少に予測した結果、税収増が予測できなかったのでしょうか。
図表2は昨年1月時点、および現在における名目GDP予測と税収予測をプロットしたものです。
政府は昨年度の名目GDPの伸びは正しく予測したが
一般税収の伸びは実際よりも大幅に低く予測した
図表2 財務省による名目GDPと税収予測
出所:財務省。但し14/6時点での税収予測は日経新聞による。
破線は13/1時点での政府予測、実線は現在の修正値。
13/1時点で財務省は名目GDPの伸びはほぼ正しく予測していたものの、
一般会計税収の伸びについては実際よりも大幅に低く予測した。
昨年8月の内閣府による消費税増税に関する集中点検会合では、「税収弾性値は3-4」と主張していた本田悦朗・内閣官房参与らに対し、慶応大学の土居丈朗氏らは「高い税収弾性値には致命的な欠陥がある」。と反論しました。
「増税か成長か」論争再燃 改革阻む甘い税収期待
日経 2013/9/16
結局、政府は土居氏らの低い税収弾性値の考え方をとり、2013年度単年度の税収弾性値も1程度と見ていましたが実際には3.6にも達しています。
この間、誤った低い税収見通しに基づき、昨年10月には消費税増税も決定されました。
しかし、2013年の実績を待つまでもなく、デフレ期に当たる1997年から2012年の日本での税収弾性値は、政府が採った1.1*1より遥かに大きな値になるのは実際に計算してみればわかることでした。
やはり現在の税収弾性値は1.1ではない
シェイブテイル日記 2013-11-23
冒頭の日経新聞では、昨年度の税収が伸びたことから「法人税減税論議に弾み」がつくとしています。
日経新聞の、消費税を増税するかどうかを判断する際には、土居氏らのデフレ期の実績より明らかに低い税収弾性値などを根拠に「多少景気が上向こうが増税は避けられない」という論陣を張りながら、現実に税収が大幅に増えれば「法人税減税に弾みがつく」と、はしゃぐ姿に一貫性はあるのでしょうか。
それはおくとしても、現在の日本では税収弾性値が3-4といった大きな値をとるということは、消費税増税のような名目GDPを減らす政策では、政府予想より遥かに税収が減ってしまうということでもあります。
8%への消費税増税について、昨年7月頃には消費税増税に反対の立場だった安倍首相でしたが、そのタイミングでは既に増税阻止に動く時間が不足していた結果、10月には自ら消費税増税を決断させられてしまいました。
消費税増税の攻防経緯と今後の対策
シェイブテイル日記 2013-10-07
政府としては、法人税減税などを議論する時間があるならば、今こそ10%への消費税増税という名目GDP削減策が妥当なのかどうかを議論すべきではないでしょうか。
*1:税収弾性値1.1は、インフレ期であれば妥当な値です。