韓国では政府債務は日本より大きく伸びているのに財政は健全という謎
財政問題が深刻に報じられる日本では1990年から2013年までの24年間に、政府債務は3.7倍も増加しました。 ところが隣国韓国では政府債務は同じ期間になんと18.3倍も増加しています。
一方、日本の財政健全性指標(政府債務÷名目GDP)は243ときわめて大きいのに、韓国の健全性指標は34でしかありません。 これは一体どういうことなのでしょうか。
日本の財政健全性指標が悪いのに韓国は悪くないという理由を示したのが図表1です。*1
韓国の政府債務伸び率は日本より大きいが名目GDP伸び率はさらに大きい
図表1 出所 IMF WEO Oct 2014
両国を比較しやすくするために、名目GDPと政府債務を
共に指数化して示した。(1990年の両国名目GDP=100)
原点とグラフ終点を結ぶ直線の傾きが財政健全性指標に相当する。
1990年から2013年の間に、日本では政府債務は年率5.3%で伸びましたが、名目GDPの伸びはわずかに0.3%。
一方の韓国は政府債務は年率12.9%もの伸びを示しましたが、名目GDPの伸びは8.5%でした。
その結果、図表1に示すとおり、日本では財政健全性指標(原点-グラフ終点を結ぶ直線の傾き)の急増を招き、韓国では名目GDPの伸びの大きさにより、財政健全性指標はゆっくりとしか増大しなかったというわけです。
世界中に日本ほど名目GDPの伸びが小さい国はほかにありません。政府が消費税増税をはじめとする緊縮財政を継続することで、民間の活力を奪い、企業は債務を負って新たな事業を拡大するリスクはとることができず、マネーの裏づけとなる債務は専ら政府自身が背負い込むしかありませんでした。
つまり日本は政府の緊縮財政で民間の経済活動の結果である名目GDPは押さえ込まれ、税収は却って減り、政府債務は積み上がっていったのです。
韓国では政府が財政を拡大させることで民間経済は大きく伸張し、財政健全性は保たれました。
半世紀前の日本と同じ政策を踏襲して名目GDPを大きく伸ばしてきた韓国と、名目GDPは足踏みして政府債務だけ増やし続ける日本。
一人当たり名目GDPのドル換算値は 1990年には韓国は日本の26%に過ぎなかったものが、2013年には77%にまで肉薄されています。更にIMFの予測ではわずか5年後の2020年頃には両国の一人当たり名目GDPはほぼ並ぶとか。
ところで今日の日経新聞夕刊にはこんな記事が載っていました。
財政規模を維持拡大させて経済成長を促し、税収の増加を通じて財政健全化を図ろうとする「拡大均衡」的なやり方は、魅力的だが現実的ではない。課題の単なる先送りにつながりかねないからだ。
バブル崩壊以降の二十数年間を振り返ると、歳出が着実に増加してきた一方で、税収は横ばいどころかジリ貧で推移してきたことがわかる。ワニが口を開いたようだと言われるこのかい離を早く縮小させることが大きな課題だ。
歳出と税収の推移が強く示唆しているのは、景気を良くするため、あるいは少なくとも悪くしないために歳出を拡大しても、税収の増加が伴わなかったという事実だ。結果として、両者のかい離が拡大し財政赤字が大幅に累積してきた。「拡大均衡」は機能してこなかったのである。
この増加は社会保障支出の拡大といった構造的なものではない。減らせるはずだ。それができていない上に、足元でも3兆円超の補正予算と、96.3兆円という史上最大規模の15年度予算を立てようとしている。そこには財政で景気を刺激すれば税収が増えて、財政の健全化も達成できるとの期待がある。しかし財政支出は使っただけの効果はあっても、呼び水にはなってこなかったのが現実なのだ。
既得権を奪うことの困難さはよくわかる。しかしまずはどさくさ紛れのような歳出をカットし、その上で本命の社会保障改革をやる。歳出削減に手を付けない限り、財政の健全化は遠のくばかりだ。
肩書きからして一応経済の専門家であろう五十嵐氏は、日本の置かれた状況をいっそう悪化させる主張をしているのに、その愚に気がついていない様子です。
日本の政府や経済の「専門家」たちは、一体今後何年間、この馬鹿げた緊縮財政政策を続け、いつになったら自分たちが愚かな間違いを続けてきたことに気がつくのでしょうか。
*1:最近、シェイブテイルのブログをみていただいている方にはすでにネタバレ気味かと思いますが。