シェイブテイル日記2

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欧州危機と230年前の米国から日本が学ぶべきこと

欧州危機が一段と進展しています。

[ロンドン 23日 ロイター] 23日の欧州株式市場は急反落。ギリシャのユーロ離脱リスクが再び強く意識された。
(中略)
市場関係者によると、ギリシャのユーロ離脱に備えてユーロ圏各国が個別に対応策を用意する必要があるとの認識で当局者が合意したとするロイターの報道が材料視された。ギリシャはこの報道を否定したが、ベルギー財務相は、ギリシャのユーロ離脱に備えた危機管理計画が策定されていると明らかにした。

ギリシャ 失業率過去最悪“5人に1人” [NHKニュース;www3.nhk.or.jp/news/html/.../t10015047201000.htmlただしすでにリンク切れ)
ことし2月の失業率は前の月より0.4ポイント悪化して21.7%と過去最悪を更新し、この1年間では6.5ポイント悪化しました。
特に、25歳未満の若者の失業率は53.8%と、若者の2人に1人が失業という事態になっています。
こうした背景には、緊縮策などの影響で景気が急激に冷え込み、企業の倒産が相次いでいることが指摘されていて、地元の経済団体は、ギリシャの企業は去年までの2年間で6万社が倒産したうえ、さらに6万社が現在倒産の危機にあるとしています。

 現在の欧州での政策当局者の関心事は、危機の火種とされるギリシャがユーロ圏を離脱するかどうかにあります。
確かにギリシャがユーロ圏を離脱すればギリシャ以外の国の国債の下落は一旦止まるでしょう。一方でギリシャ自身は秩序なきデフォルトとなり、銀行は、すでに3割の預金が引き出されているといいますが、最終的にはパニック的な預金取付け騒ぎか、当局による預金封鎖かということで金融機能は麻痺するでしょう。 ユーロ圏に残る国々にしても、現在の緊縮財政を続けるならば、次の脱落者が誰が次の関心事というイタチごっこから逃れられないでしょう。 一体どこがおかしいのでしょうか? また例によって最も単純化した国家財政の図をみてみましょう。

図1 最も単純化した国家財政

欧州危機では、この図でみれば、1.政府、2.民間(企業・家計)そして3.銀行ともにマネー不足です。 にも関わらず、欧州各国当局、ECB、IMFなど関係機関
は、2.→1.→3.とマネーを流して3.にある国家の借金を返済しようとしています。結果は、2.民間から一層マネーがなくなり、企業倒産件数が急増、失業率も大幅に上がり、税収は減っています。

図1で1.〜3.にはマネーがないとすれば、誰がマネーを出すべきかはもうお分かりでしょう。 
 結局欧州中央銀行しかありません。
欧州中央銀行が無制限の債務借換えに応じる、といえばそれで危機は去るでしょう。 
可能性(possibiliry)としてはこの図に描いていないIMFなどもあり得ますが、財源はIMFから見て外貨であるユーロである必要があり、無制限の援助は不可能です。
 それではモラルハザードがー、と言っても欧州がそうなりつつあるように、財政規律を守る国々が破綻しては意味がありません。

世界史上、経済的に別々の国々だったものが統合されたケースの例としては、例えばアメリカ合衆国があります。
米国は独立直後の1780年頃には13の州に分かれ、それぞれが多額の債務を抱えていたました。

ノーベル賞学者が描く「欧州合衆国」 (NY特急便) 日経新聞 2011/10/13 
 そこには幾多もの独立した政府があった。それぞれが徴税権をもち、紙幣も印刷できた。中央の力は弱く、各政府の協力を仰ぐしかない。だが、まともな協力が得られることはまれだった。
 「この状況は何かに似てませんか」。欧州危機について聞かれこう答えたのは10日、ノーベル経済学賞の受賞が決まったサージェント・米ニューヨーク大教授だ。  実は教授が描写した冒頭の状況は1780年代の米国だという。当時、米国は13の州に分かれ、それぞれが多額の債務を抱えていた。債務返済のめどが立たず、債券の価格は大きく元本割れしていた。 この状況に手を打ったのが各州の債権者や後に大統領となるジョージ・ワシントン、その参謀であり「強い中央政府」の支持者だったアレクサンダー・ハミルトン
 合衆国憲法において、通商政策を連邦政府に一本化し、関税を独占的に徴収できる権利を付与。連邦政府に各州の債務を引き継がせるとともに関税を大幅に上げ、これを債権の返済に充てた。この結果、債券は元本価格を取り戻し、債務危機は解決に向かった。
 米財政の歴史に関し著書を出す計画というサージェント教授は、「我々(合衆国)は、欧州がまさに直面しているような問題に対処するための、決然たる解決策の中から生まれたのだ」と指摘。「ユーロに関しては何ら新たな論点はない。難しいのは政治が決断をできるかだ」とも述べ、ユーロ圏の危機を究極的に解決するには230年前の米国に倣う必要があるとの見方を示した。

日本の場合も債務危機がマスコミで喧伝されています。
しかし、日本の状況で欧州と異なることといえば、2.企業の一部と3.金融機関がカネ余りであることであり、2.企業・家計からマネーを吸い上げ金融機関にある政府債務の償却原資とする現在の野田政権は日本で無用に欧州危機を再現しようとするものです。 
結果は同じく、企業が倒産し、失業が増え、そして税収は減るでしょう。

日本でも誰がマネーを出すべきかは230年前の米国、現在の欧州と同じで、日本の中央銀行、日銀以外に答えはないでしょう。