95年財政危機宣言時の財政状態は悪くなかった
昨今では当たり前のようになってしまった日本の政府債務問題。これは客観的にはいつ頃から問題化したのでしょうか。
図は日本の政府純債務対名目GDPの世界でのワースト順位を示しています。
現在の日本は粗債務だけでなく、純債務でみても対名目GDP比が非常に高く、ギリシャに次いでワースト2位となっています。
データはIMFデータベースからとっています。 世界の国々では南スーダンのように最近生まれた国もあれば、内戦で経済統計を発表しなくなった国もありますので、政府純債務ワーストランキングは日本の順位に代えて、日本のワースト順位を国数で割ってパーセンテージで示しました。
日本はバブル期の80年代後半にはワーストランキングの低位にいましたがバブル崩壊でワーストランキングは次第に上がり始めました。
ただ、前回の記事でも触れた武村蔵相の「財政危機宣言」(95年)は、グラフからみてその当時世界の8,9割の国々は日本より財政状態は悪かったのですから、余りに早すぎたと言えるでしょう。
この財政危機宣言を受けて、97年に消費税を5%に上げてから、政府純債務対名目GDP比率は却ってどんどん悪化し、世界でのワーストランキングもどんどん上がっていき、今では世界1,2を争うほど悪化しました。
ただ、その中身ですが、
2013年時点で過去10年間を調べてみると、
政府純債務増加率は 33番目/88カ国
名目GDP伸び率は 88番目/88カ国
なんですね。*1
政府純債務はこの10年で日本は平均5%の伸びですが、米国は9%、英国は13%の伸びです。
一方名目GDPの伸びは10年でマイナス0.3%、米国は3.6%、英国は3.4%。
この10年間で名目GDPが減ったのは88カ国中日本とギリシャだけです。
消費税等で緊縮財政をすることで政府純債務伸び率自身は世界ランキングでも良い方から33番目で、国民の所得のかたまり、名目GDPの伸び率は世界最悪で、両者の比を取ると、世界で2番目の悪さということです。
以前ブログで書きましたが、債務がなければマネーは存在しません。
デフレでなければ健全な債務の担い手は企業ですが、デフレでは企業は将来負担が重くなる債務を返済しますから、政府以外に債務の健全な担い手がいなくなります。*2
1998年にデフレ化して以降の日本では健全な債務の担い手が政府しかないのにその政府が債務を返済しようとしているのですから、世の中のマネーの循環、つまり名目GDPが縮小気味になりますが、ランキングから見て、こんな馬鹿げた名目GDP縮小政策を採っているのは世界広しといえども日本とギリシャだけ。
ギリシャはユーロ建ての事実上外債ですので、債権国の言いなりに緊縮政策を続けてきましたが、最近その緊縮政策を止めることを謳った野党が政権をとりました。
日本は内債しかないのに、その内債のゆっくりとした増え方にさえ怯えて緊縮財政を続けていますが、それ自身が日本の経済規模を縮めているのは全く馬鹿げた話ですね。