シェイブテイル日記2

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「浜田宏一先生と同じ派」はもう無理です

リフレ派の重鎮、エール大学の浜田宏一名誉教授が、今日の日経新聞のインタビューに対し注目すべき発言をしています。
この発言をみて、私事ですが、現在のアベノミクスを支持するリフレ派でデフレ脱却は不可能という思いが強まりましたので、これまでの広義リフレ派という自己規定はやめ、高橋是清派を自称することにします。

 ――アベノミクスについて金融緩和の「第1の矢」から構造改革の「第3の矢」に移行すべきだと主張している。

浜田宏一 エール大学名誉教授
 「日本経済を今まで苦しめていたのは需要不足であり、不適切な金融政策がその原因だ。これを改善するため、経済に対する人々の期待を高め、黒田日銀による大胆な金融緩和を実施した。第1の矢は成功した。ただ、これ以上需要をふかしても、潜在成長率が低い日本経済が良くなるわけではない。 構造改革をもっと進め、供給力を伸ばさないといけない。

 「物価はマネーで動くが、みんながお金を抱え込んでしまうとマネーは動かず、金融政策の効果はない。しかし、日銀の岩田規久男副総裁が主張するように、うまくインフレ期待を生み出せば動かすことができる」

 「経済のパイを賃金にシフトさせることが先決だという意見もあるが、その結果、企業の収益が悪化し生産が落ち込めば経済が縮小してしまう。やはり物価や経済に対する期待を引き上げるのは大事だ」

 ――経済成長に対する期待はこれからも維持できるか。

 「インフレが順調に進めば、金融政策は出口に進まないといけない。インフレを止める必要も出てくる。このときに経済成長を続けるには、需要でなく供給能力を伸ばす必要がある。 そこは政治の出番だ。様々な圧力に屈せず、首相のリーダーシップで必要な政策が実施できるかが問われる」

――具体的にどういった取り組みが必要か。

 「今は法人税を大幅に下げるのが大事だ。 日本が活気ある企業のセンターでないといけない。高い税金をかけると会社は国外に逃げてしまう。法人減税を通じ、企業の国外流出を防ぎ、海外からの直接投資を受け入れる試みが必要だ。英国はすでに法人実効税率を20%前半まで下げている」

 「(現在30%台半ばの日本の法人実効税率は)相手国を出し抜くためにも3〜4年で25%くらいまで下げる必要がある。財源の一つとして租税特別措置の見直しが挙げられる。重厚長大な業種ばかり優遇されるシステムは見直しが必要だ。環境税の拡充も財源の候補だ。二酸化炭素の排出に対する課税は、財政収支と環境問題の双方を解決する」

 ――法人税以外に取り組むべき課題はあるか。

 「人口減が日本の経済成長を制約している。人口の半分を占める女性の活用を進めるべきだ。労働市場の柔軟化で、もっと女性が参加しやすくなる仕組みがつくれる」

 「外国人労働者の活用も検討課題だ。介護や看護などにもっと門戸を開けば、親族の介護が理由で仕事に就けない女性が職場に復帰できる道も広がる。ただ、外国人の受け入れは日本の文化や安全、心情に直接響くので、民主的な議論を踏まえなければならない」

 ――来年秋の消費再増税をどう考えるか。

 「今後も国内総生産(GDP)の落ち込みが続けば消費税を上げるべきではない。とはいえ、今は法人税を大幅に下げるのが大事だ。その意味で、前回の増税時より消費税を上げることに私は反対していない。大幅に法人税を下げることとセットなら、景気が良い限りは消費税の増税は我慢してほしいとおもう」

 「1〜3月期、4〜6月期のGDPは駆け込み需要とその反動で、ノイズが大きい。これに一喜一憂して政策を決めるべきではない。まずは7〜9月期の結果を見たい」

記事を読み、多様な疑問が湧いてきました。
・金融緩和+消費税二段増税という、現在のアベノミクス路線で本当に需要は十分回復したのか
・日本で潜在成長率が高くないのは、需要不足のせいか、供給不足のせいか
・現在のところ、岩田規久男副総裁は、マネタリーベースを増やした結果マネーストックが動き始めたと主張しているのか、動き始めるのは3-5年後と主張しているのか
・CPIと東大日次物価指数を比較すると、東大日次物価指数は大幅にマイナス乖離している。この現状で、インフレや金融政策の出口戦略が喫緊の課題として重要なのか
・20年デフレでも逃げなかった国内企業が、消費税を上げた原資でたった今法人税を引き下げなければ、海外に逃避してしまうのか。
・”租税特別措置””重厚長大な業種が優遇されるシステム(?)”は見直しが必要なのか
・8%増税に賛成した山本幸三議員や西田昌司議員も10%増税は無理と判断する今の経済状況で、”前回の増税時より消費税を上げることに私は反対していない”理由は何か

シェイブテイル自身、浜田宏一先生の著書を何冊か持っていますし、本田参与とともに参与の立場で安倍政権でリフレ政策を主導してきた浜田先生の実績は高く評価されるべきかと思います。

ただ、今回のインタビューへの浜田先生の回答は、デフレ脱却を目指す立場なのか、デフレ深化を目指す立場なのか、判断に苦しむ内容でした。

昨年、消費税増税を決定するまでのアベノミクスでは現実に物価は上昇しはじめ、名目GDPは増え、税収に至っては政府予測の数倍の増収幅となっていました。
すべてがうまく回っていたと言えるでしょう。

ところが、消費税増税を昨秋に決定し、今年4月から増税を実施したところすべてが暗転しています。東大日次物価は下がり、4-6月期名目GDPは年率マイナス7%減少。公表はまだですが、増税した消費税以外の法人税所得税は今期は落ち込んでいるでしょう。
増税決定後は変質アベノミクス、としか言いようがない代物です。

浜田宏一氏はその変質アベノミクスにより近くデフレを脱却するとの認識を示しておられるようですが、増税有効需要が落ち込んでいて、現実は逆で、デフレに反転中でしょう。
 

図1 物価などに影響を与えようとする考え方
作図はシェイブテイルによる.
政府の役割を小さくしたい新古典派は便宜的にゼロ点に描いた。

図1は、政府を介して物価・名目GDP・政府債務などに影響を与えようとする諸派の考え方を図示したものです。

2年間のアベノミクスは、前半と後半では様変わりはしましたが、いわゆるリフレ派の主張、つまりインフレ目標+大規模金融緩和という軸だけはブレずに来ました。

ただ、シェイブテイル個人としては、8%もしくは10%消費税の効果を、リフレ派の言う金融政策オンリーで、インフレ転換して、名目GDPを増大させるのはもはや不可能と感じています。 

最近では麻生太郎財務大臣西田昌司参議員議員らが主張し始めたように、金融政策と財政政策も同時発動(財金併用)する必要があると思われます。

これは、先の図1では当初のアベノミクス、あるいは高橋是清がデフレ脱却の方策として主張したものです。 

私は財金併用でなければ、効果的にデフレ脱却は不可能という立場ですので、これまでの(広義)リフレ派という自己規定はやめ、今後は高橋是清派と自称したいと思います。

現在高橋是清派はまだ殆どいらしゃらないかもしれません。

しかし、アベノミクスの当初の成果、あるいは70年前の高橋財政での目の覚めるようなデフレ脱却劇を考えれば、次第に同調していただける方は増えるものと思っています。

リフレ派の皆様。これまでいろいろと、大変お世話になりました。

ま、自称が変わっただけで、主張はこれまでと同様です。
デフレ脱却の必要性は皆様、あるいは土木派(藤井聡先生ら)とも共有していますので、今後共よろしくお願いします。