日本は世界一GDPシェアが減少しているがそれは人口減少とは無関係
蓮舫氏が辞めた後の民進党代表選挙に枝野氏と前原氏が立候補していますが、その枝野氏の打ち出す経済政策の背景には「人口減少など社会成熟化による需要そのものの減少」があるそうです。 *1
確かに日本は2008年をピークに人口減少に転じました。 ただ、世界を見渡せば、ロシアやポーランドなど他にも人口減少国はあります。
そこで日本やこれらの人口減少国を含めて世界経済での各国シェアの変動を調べてみました。
図1は1996年時点での名目GDP(ドルベース)の各国シェアとそれから20年後の2016年の名目GDP各国シェアの比をとったものです。
図1 名目GDP世界シェア増減率
元データ出所:IMF WEO April 2017
世界シェアの変動費率は、例えば日本の1996年の名目GDP世界シェアが15.2%で、2016年のそれは6.6%なので、
6.6÷15.2=43.4(%)を日本の世界シェア増減率とした。
なお、グラフの煩雑性を減らすため、2016年の名目GDP世界シェアが0.3%未満の国々は省略している。
このグラフをみるといくつかの情報が得られます。
まず、このグラフに載る主要な国々の中では日本のGDP世界シェア減少率が最大ということです。
日本に次ぐシェア縮小国はギリシャです。ギリシャはユーロを借りた相手のEUなどトロイカ体制から厳しい緊縮策を突きつけられています。
それに次ぐのがドイツ、イタリア、フランスといったEU主要国です。 EUでは「マーストリヒト条約」で、ユーロ参加の条件として財政赤字が対 GDP 比で3%、債務残高が対 GDP 比で 60%を超えないこととする基準(いわゆる「マーストリヒト基準」)が定められ、参加国は全て緊縮財政を余儀なくされて各国とも経済失速・失業増加などに喘いでいます。(通貨が経済力に対して常に割安に維持されるドイツの外需だけは例外ですが)
また、人口減少国ロシアやポーランドはこのグラフでは中位にあり、人口減少国だから経済規模が拡大しないということはないようです
ちなみに日本は2008年以降人口が減少していますが、1996年と2016年の比較では日本は0.9%人口は増加しているのに対して、ロシアは3.1%、ポーランドは1.7%人口が減少していますので、枝野説のように、「人口減という抗しがたい現象が経済規模減少の主因」と捉えることには疑念が生じます。
GDPシェア減少国は例外なく緊縮財政を持続的かつ強力に実行しており、人口減少国はGDPシェアを下げた国(日本)と上げた国(ロシアやポーランド)が混在しており、経済活動を縮小させることに対して、人口減少は余り意味を持たず、政府が緊縮財政をとることが非常に有効ということなのではないでしょうか。
もうひとつ、近年世界での日本の発言力が落ちるのと裏腹に中国の発言力が増していますが、GDPシェアが相対的に10倍も変動すれば、それもあながち不公平ともいえない気がします。
では日本のGDPシェアの推移もみてみましょう。
図2は、日本のGDP世界シェアを名目GDP(ドル換算ベース)と購買力平価ベースでみたものです。
図2日本の世界でのGDPシェア推移
生データ出所:図1に同じ。
このグラフに描かれた期間内には、世界・日本でさまざまな経済事象や東日本大震災などの自然事象が発生していますが、まるでそれらとは無関係かのように、日本のGDP世界シェアは右肩下がりで下がっています。
日本国内ではアベノミクスはそれなりにポジティブな評価がなされていますが、経済活動を名目GDPの世界シェアという切り口でみた時には、それとは随分と違う印象があるものですね。
安倍政権がいかに金融政策と規制緩和に努めようと、緊縮財政を止めない限り、この四半世紀つづく日本経済の縮小傾向を止めることはできないのではないでしょうか。
*1:ソースは枝野氏のウェブサイト