アベノミクスの本質とは何か
無茶苦茶ご無沙汰しています。 個人的に色々と忙しいことと、アベノミクスへの期待が失望に変わっていったことからブログの更新を怠っておりました。
さて、久々にブログを更新しようと思ったのは、アベノミクスの現状を端的に示す2枚のグラフをお見せしたかったからです。
言うまでもなく、アベノミクスとは(1)大胆な金融政策 (金融緩和)、(2)機動的な財政政策 (財政出動)、(3)民間投資を喚起する成長戦略 の3本の矢であったはずです。
大胆な金融政策については、GDP比でみたとき、世界金融史上にも例をみないほどのマネタリーベース拡大などがいまも続いています。
また成長戦略についても、有効性はともかくとして、経済特区や働き方改革などなど各種の施策が矢継ぎ早に打ち出されています。
しかし、財政政策についてはどうでしょうか。
図1のグラフは、財務省ウェブサイトに掲げられた一般会計の歳出状況のグラフを分かりやすく改変したものです。 *1
図1 一般会計歳出の状況
出所 財務省ウェブサイト
歳入・歳出のグラフから歳出部分のみを示した。
グラフ上部の西暦では、アベノミクス期('13年−)を強調表示している。
アベノミクス初年度の2013年こそ歳出規模で100.2兆円と、民主党政権時代の前年度比で増加となりましたが、その後は一進一退、今年度に至っては97.5兆円と、消費税を上げる前の民主党時代と同等あるいはそれ以下の緊縮財政となっています。
安倍政権になってから、消費税増税と社会保障関係の事実上の大幅増税を断行したにもかかわらずです。
差し引きでいえば、アベノミクスとは、民主党時代よりも一層、緊縮財政指向の経済政策だということです。
85年ほど前の高橋財政ではわずか1年でデフレ脱却しました。
物価は、高橋財政前年にはGDPデフレータでマイナス10%近かったものが、翌年はゼロ%更に翌々年には3%と、それ以上上げる必要がないレベルとなりました。
その高橋財政初年には財政規模を前年比でなんと23%ほど拡大しました。*2
一方、アベノミクスでは初年こそ前年比で1.5%ほど拡大したものの、あとは一進一退です(図2)。
図2 アベノミクスと高橋財政 財政規模前年比推移
アベノミクス期の財政規模は対GDP比、高橋財政期は対GNP比それぞれの前年比。
アベノミクスは近年の経済統計から、高橋財政期については「昭和恐慌の研究」(p252)から算出した。
高橋財政では、4年目以後は過剰インフレ気味から財政抑制策に転じて軍拡を求める軍部の恨みを買い、
1936年の2・26事件につながった。
私としましては、金融政策が多少の為替への効果を通じての製造業支援になっていることなどは否定しませんが、円安は輸入業者から輸出業者への所得移転政策とも考えられます。
日本経済には再配分は更に必要とは思いますが、必要なのははごく一部の儲け過ぎの人から大多数の低所得者へであって、本質的には輸入業者から輸出業者への所得移転が求められている訳ではないでしょう。
また成長戦略はサプライサイドを拡大しようとするものですから、デフレを脱却してはじめて重要性を持つものではないでしょうか。
安倍首相をはじめとするアベノミクス推進者たちが、なぜ85年前の鮮やかなデフレ脱却の成功事例を省みることなく、人気絶頂の政権奪取後から支持率が無残に下がった今に至るまで、無為に時間を費やしているのか首をひねるばかりです。