シェイブテイル日記2

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政府支出と財政健全性には相関性がない

過去2回のエントリーで、私たちは先進国では政府支出伸び率と名目GDP伸び率との間に高い相関関係があることをみました。

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それではプライマリーバランス均衡を介して財政健全性を高めようとしている安倍内閣の立場に立脚し、政府支出と財政健全性指標の相関関係もみてみましょう。

図表1では、先進37カ国での政府支出と財政健全性指標の相関関係を示しました。

図表1 政府支出伸び率と財政健全性指標増加率の相関
出所 IMF WEO Apr. 2015
IMFの分類による先進国全体での2004−2013年における平均伸び率。
財政健全性指標は政府債務残高÷名目GDPで算出した。

政府支出伸び率と財政健全性指標の決定係数(相関係数の二乗)はわずかに0.06。
全く相関関係はないといってよいでしょう。

一方、政府支出伸び率と名目GDP伸び率との決定係数は…(図表2)。

図表2 政府支出伸び率と名目GDP伸び率の相関
出所 図表1に同じ
図中、名目GDP伸び率が負の3カ国は、日本・ギリシャサンマリノ

政府支出伸び率と名目GDP伸び率との間での決定係数は0.83です。
政府支出を安定的に伸ばせば、名目GDPが安定的に伸びるという関係が見て取れます。

1997年に消費税増税と緊縮財政をした橋本内閣以降、現行安倍内閣を含む大半の内閣が緊縮財政を続けた結果、世界で唯一中期的に名目GDPが伸びない国、現代日本があるわけです。

図表1,2と同じ方法で、政府支出といくつかの経済指標との間の決定係数を調べてみました。(図表3)


図表3 政府支出伸び率と経済指標伸び率の決定係数 
出所 図表1に同じ。

政府支出の伸び率は財政健全性指標への影響は殆ど認められませんが、政府支出の伸びは名目GDPの他に、実質GDP及び物価(GDPデフレーター)との間にもある程度の正の相関が認められます。

 筆者は、過去何度かブログで触れたとおり、日本の財政問題とは、財政健全性指標の分子つまり政府債務残高の方ではなく、分母つまり名目GDPの伸びなさにあると確信しています。

 日本経済においては、安倍内閣閣議決定しようとしている緊縮財政の逆、拡張財政こそが、名目GDP伸長つまり民間経済健全化、GDPデフレーター伸長つまりデフレ脱却そして財政健全性指標の低下つまり財政健全化をもたらす一石三鳥の妙薬だと思います。