シェイブテイル日記2

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リフレ派にみていただきたい一枚の図

今日は見ていただきたい図表はたった1枚です。
大恐慌期の米国での物価と政府赤字(支出)額の関係です。
(図1)

デフレ期の政府支出と物価上昇は一見バラバラな関係?
図1 連邦政府赤字額12ヶ月移動平均とCPI対前年比伸び率
出所:向井文雄(2013)「日本国債パラドックス財政出動の経済学」p40
原著出典は全米経済研究所NBER Macrohistory Database

両者の間には一見して何らかの正の相関がありそうです。
ところが、よくみてみると1933年から1934年にかけては、物価上昇が政府支出に先行し、1936年から1938年頃は物価上昇(下落)は政府支出増加(減少)と同時または遅行しています。

このように、政府支出と物価上昇のタイミングがバラバラなことから、「財政政策と物価上昇との間には明確な関係は見出だせない」という主張もあるようです。*1

「日本国債パラドックスと…」の著者、向井文雄氏はこの一見矛盾した関係について次のように説明しています。

1)公共投資の効果(1933−34年)
1933年にはゴールデンゲートブリッジ(建造開始が1933年1月)のような、完成に数年を要する大規模公共投資が行われました。 公共投資の場合、発注を受けた企業は受注と同時に原材料・中間材料・設備投資を発注し、労働者を集めて建設や生産を開始します。 政府からの支払いは受注時ではなく納品後に行われるため、政府支出(急増は34年)を基準にすれば、市場での需要創造はそれに遡る発注時点から発生し、物価や賃金に好影響を与えると考えられます。

2)個人への一時金支給(1936−37年)
1936年6月には巨額の退役軍人年金一時金が一括して支給されました。
こちらは公共投資とは異なり、政府支出増加時点で民間にマネーが供給され、需要に巨大な影響を与えました。この一時金は支給後徐々に使われたでしょう。 従って、政府支出と同時に、もしくは遅行して物価には影響が及んでいます。

要するに、向井氏の主張では、一口に財政政策と言っても、公共投資と民間への一時金給付では物価や需要に与える影響はタイミングが異なっているというのですね。

シェイブテイルとしてはこの向井氏の説は説得力があるように思います。
デフレ脱却には財政は無効と論じる方々からの反論に期待したいところです。*2

*1:例えば田中秀臣安達誠司(2003)「平成大停滞と昭和恐慌〜プラクティカル経済学入門

*2:などとツイッターで言っている内に、相互フォローしていた田中秀臣先生からはブロックされてしまいました。これは先生としては「議論より不戦敗で結構です」という意思表示と解釈すべきなのでしょうか。