シェイブテイルのデフレ脱却実践記

シェイブテイル日記ではデフレ経済研究を行ってきました。今後はこれをデフレ脱却実践につなげます。

維新の会の道州制と欧州危機の関係

今朝の日経新聞では、新党「日本維新の会」を目指す大阪維新の会の政策検証記事が載っています。
また去る9月1日の同紙では維新八策最終版の全文が掲載され、その中で統治機構の最終型は道州制と明示されています。 *1

維新八策の前段ではこの道州制の狙いを

 「中央集権と複雑な規制で身動きが取れなくなった旧来の日本型国家運営モデルは、もはや機能せず、弊害の方が目立つようにな」り、「今の日本を覆う閉塞感を克服し、国民の希望を取り戻すには、国からの上意下達ではなく、地域や個人の創意工夫によって社会全体を活性化し、グローバルな競争力を持つ経済を再構築する必要がある」とし、決定でき、責任を負う統治機構を確立しなければなりません。

としています。

 現代日本の国家運営では、確かに国民の意思が直接政策に反映されることはほとんどなく、官僚主権のような状態と言えるでしょう。
ただ、その状態を解決するための手段として、道州制が最善解かどうかはよく考える必要があると思われます。
シェイブテイルとしましては、この日本の道州制を考える上で、現在の欧州危機がひとつの参考になるように考えます。

 欧州危機が発生する前のユーロ圏では、ドイツなどの経済が強い国々では、単一通貨ユーロになったことでかつてのマルクといった自国通貨では考えられないほどの通貨安のもとに輸出好調を謳歌しました。 また関税障壁が全くない南欧諸国の安い労働力をフルに活用できたことも経済好調の原因となりました。
 一方、PIIGSと呼ばれる経済が強くない諸国では、強いユーロ導入のおかげで、それ以前では考えられないほどの資本が導入され、雇用や地価上昇などが進みましたがバブルが崩壊すると銀行債務問題と財政政策を実施した政府の債務問題が残りました。そしてこの債務問題には、かつての自国通貨とは異なり自国の判断では切り下げることができないユーロが返済を困難にしています。
 そして、経済が好調だったドイツや北欧諸国は、PIIGSなどの諸国が存在することによる通貨安と安価な労働力を享受したにもかかわらず、PIIGS諸国が彼らにとっては強すぎる単一通貨ユーロの悪影響を被る姿を前に、自己責任論を主張し、欧州中央銀行PIIGS諸国の債務を肩代わりすることに強く反対しています。
 
 ユーロ圏内では、資本移動(国境・関税などの経済的障壁の撤廃)と、域内諸国での固定相場制導入と事実上同義となる単一通貨ユーロの流通を両立させていますが、金融政策は欧州中央銀行(ECB)に握られており、加盟各国が個別の政策を採ることはできません。 その結果、リーマン・ショック以降の景気悪化局面では加盟各国に合った金融政策は放棄し、財政政策一本槍での景気回復を図ろうとする結果、政府債務問題が一気に膨れ上がりました。

 さてここで、維新の会の唱える「最終型は道州制」という国の姿を考えてみますと、上記の経済的に混乱するユーロ圏と維新の目指す道州制とは相当重なるところが多いように思われます。 
道州制となれば、経済的に強い州を含めて、金融政策という手段が中央政府から切り離される結果、国家の信用やシニョリッジとは切り離された地方債務を背景とした財政政策中心の経済運営とならざるをえないでしょう。その上、経済的に強い、南関東などの州は、「日本全体の円にペッグされ」、州本来の実力よりも弱い円での繁栄を享受できる可能性はあるものの、逆に経済的に弱い州の円は本来であれば弱くなってバランスがとれるべき所が、不要な円高となり、地方政務債務の積み上がりは避けられないところでしょう。
現在の日本であれば、それぞれの地方の実情も踏まえた金融政策が取れることは当然の上に、橋下氏が批判する地方交付税などの仕組みにより、儲かりすぎる大都会の利益の一部は、安い労働力を提供してくれている地方へ還流されていますが、橋下氏はこの地方交付税制度も中央政府による地方コントロールの仕組みとして切り捨てることを明言していますので、都会と地方の経済格差は一層激しくなるでしょう。

更に、維新の会では、消費税の地方税化も掲げていて、どうやらデフレ下の増税に反対することはないようです。

橋下氏ら維新の会からの発言ではありませんが、増税賛成論者達から、去る1997年の消費税増税以降日本経済がデフレ化したのは、同年発生したアジア通貨危機の悪影響によるもの、という解釈を聞かされることがあります。
 世界中で経済危機は数年ごとに起きている中、なぜ15年も前のアジア通貨危機だけが、その後日本に賃金の継続的な下落といったデフレ状態をもたらしていて、他の全ての世界各国では危機直後を除けばその悪影響が観察されないのかの説明はなされていません。

 また、このアジア通貨危機というものも、通貨安定を通じた海外資本流入を意図したドルペッグ制の下に発生しており、シェイブテイルには、欧州危機、アジア通貨危機、そして維新の会による道州制への懸念という3つの事柄が、実はいずれも擬似的な固定相場による経済問題(とその懸念)という繋がりがあるように思われるのです。