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上念司氏国会でデフレ脱却を訴える

 6月13日の衆議院 社会保障と税の一体改革に関する特別委員会公聴会で、デフレ脱却国民会議事務局長の上念司氏が公述人として登壇し、日本は財政危機か、仮に財政危機だとして、今の日本で増税により税収が増えるのか、またどうすれば税収が増えるのかについて切れ味の良い論理を展開されていました。 動画と提示された資料をアップすると同時に、文字起こしをしたいと思います。

議長:次に上念公述人にお願い致します。
上念司氏
デフレ脱却国民会議事務局長の上念です。
私が今日申し上げたいのは誤った情報に基づいて誤った判断をすれば国が大変なことになってしまう、という一点です。
これは戦前、大本営連絡会議において誤った情報に基づいて対米開戦を決断した近衛内閣末期、そして東条内閣が日本をとんでもないことに陥れて、結果として日本を一度滅ぼしてしまった、という過去の歴史があります。
誤った情報に基づいて政策を決定してはならない、この点だけを私は今日訴えたいと思います。
私が今日訴えたい点は2つしかありません。 ひとつは日本は本当に財政危機なのか。 そして消費税増税によって本当に税収は増えるのか。

1.日本は財政危機か
まず一つ目。 日本は本当に財政危機なのか。 これについて権威がある方の意見を引用してみたいと思います。

 「日本国債は現在95%が国内でかつ低金利で消化されている。更に、経常収支の黒字はしばらく継続し、資本逃避のリスクも小さい。従って、資金フロー上の制約はない。 
 近年自国通貨建て国債がデフォルトした新興市場国とは異なり、日本は変動相場制の下で、強固な対外バランスもあって国内金融政策の自由度ははるかに大きい。更に、ハイパー・インフレの懸念はゼロに等しい。
マクロバランスとの関係では、貴社は「景気が回復し銀行の新規融資が増加し、金利が上昇すると財政赤字の削減は困難となる」としている。しかしながら、このような状況では、名目・実質双方の成長率が高まり、税収が増え、不良債権処理が促進されることから、むしろ財政再建を進める上では歓迎される。金利上昇の懸念のみを強調して、景気回復に伴うはるかに大きな効果を無視するのは適切でない。」
このようにその権威のある方が仰っています。 この権威がある方とは、財務省です。*1
財務省自らが日本は財政危機ではないと過去言っています。で、この時と今と経済財政のファンダメンタルズが変わったのか。 日本は変動相場制のままです。 国債の95%は今も国内で消化されています。ファンダメンタルズは何も変わっていません。
財務省の日本は財政危機ではないという見解は今も生きていると私は思います。

2.増税により税収は増えるのか
百歩譲って日本が財政危機だったとして、消費税増税がその財政危機を救うのかどうか。
お手元の資料を御覧ください。*2
デフレ下の増税は百害あって一理なし。増税しても財政再建できない不都合な真実です。
1ページ目にサマリーがあります。
税収は名目GDP×税率×税収弾性値で算出されます。
問題は、消費税率を上げることで名目GDPが減らないのか、ということです。
税率を上げる以上に名目GDPが減るのであればこの式の通り税収は減ってしまいます。
次のページをご覧下さい。
税収の源は名目GDPであるというグラフです。 2つの要因のどちらが関係が深いかということを表すのに相関係数というものがあります。
相関係数が0.3以下の場合は2つの数値の間に殆ど関係はありません。
税収は、税率とではなく、圧倒的に名目GDPとの間に強く相関しています。
これは日本だけでなく、外国の場合も同じです。
青い実線の名目GDPに対して青い点線の税収は殆ど一致しています。
ドイツアメリカの場合も基本的には名目GDPの伸びと税収というのはほぼ一致しています。
税率を上げるよりも名目GDPを上げることを考えたほうが圧倒的に税収増には効果があることをこのグラフは示しています。
次のページを御覧ください。
税収との関係だけでなく、プライマリーバランスを見た時にどうなるのか。
プライマリーバランスの推移と名目GDPの推移もグラフが大変重なりあっています。

3.なぜ日本で税収が減っているのか
私たちの日本でなぜ税収が悪化しているのか。これを示したのが次のページです。
なぜ税収が減っているのかといえばデフレが原因です。デフレが進行すると、企業は売上が減り、利益が減り、人件費も減らします。
すると人々はますますお金を使わなくなり、どんどん経済が縮小していく。
経済が縮小すると、先ほどの公式の通り、名目GDPが減少します。名目GDPが減れば、税率を上げようが、税収は減ってしまう、ということがこのグラフから明らかだと思います。
ではなぜ日本はデフレなのか。
デフレというのは特定の商品の価格が下がることではなく、物価全体、一般物価が2年以上連続して下がることです。
これはユニクロの出店数が増えたから、とかそういうことではなく、日本の貨幣量が不足していることによって発生する、貨幣的現象なのです。
だから日銀がお金を刷らないからデフレになっているのです。
そのことは次のページの「デフレは日銀が招いた人災」というチャートに示してあります。
リーマン・ショックの時に他の国々が二倍三倍と通貨量を増やした時、日銀は殆ど何もしていません。
この状況が続く限り、いくら税収を上げたところで、税収は増えません。
財政支出を増やせばマンデルフレミング効果というのが働いて、結局金利が上がって円高となり、全ての効果は海外に流れてしまいます。
金融緩和なくして財政政策なし。デフレ脱却なくして財政再建なし、なんですね。
次のページを御覧ください。
こういったことを言うと、「日本は人口が減っているからデフレなんだよ」と言う人が出てきます。
この「人口減少デフレ説」は完全なデタラメです。
ここに駒沢大学飯田泰之准教授が作られた、先進国の人口増加率とインフレ率のグラフです。 両者には何の相関性もありません。
R^2が0.0005と、殆どランダムです。
これが0.6以上なければ相関があるとは言えないんです。人口増加とデフレの間には何の関係もないのに、5月30日日本銀行から人口が減っているからデフレになっています、という恐ろしくデタラメなレポートが出されました。
この日銀のレポートでは先進国30数カ国から20数カ国を恣意的に選んで、また相関係数のR^2が書かれていない。 非常にインチキなレポートです。
これだけでも日銀総裁をクビにしてもいいんじゃないかと私は思います。
そして次です。
人口と経済成長は関係がありません。 両者のR^2 は0.18しかありません。
(これら両者が関係するという)日銀当局が言うことが正しいのなら、相関係数は0.6以上なければならない。 つまり日銀当局が言うことはサイエンスではない、ということです。
最後に、金利が上がって財政破綻する、という人がいますがこれも大嘘です。
名目成長率が4%以上になれば、通常GDP成長率は金利を上回ります。
すると、公債のドーマー条件という、公債が財政破綻するかしないか、という条件を財政破綻しないという方向で条件を満たすようになり、財政は健全化します。
これは戦前、高橋是清が行った金融財政政策の中で、高橋は新規発行した国債を日銀に買わせて、財政政策を大々的に行ったんです。そんなことしたら金利が上がって大変、という人が多いのですが、実際には金利は上がりませんでした。 3年半ほどは金利は安定していていました。
その後日本経済がおかしくなるのは高橋是清が2・26事件で倒れ、馬場えい一(えいは金偏に英)という国賊級の大蔵大臣が死ぬほどお金を刷って軍備拡張したんです。これが近衛内閣末期のことです。

4.税収を増やすには日銀法の改正を
最後に。私も財政再建はしたほうがいいと思います。また税収が増えるのであれば、消費税もぜひ上げてください。
ところが、今は日本銀行という問題がある団体がデフレを続けていることで、税率を上げても税収は増えません。増税したいのであれば、まず日銀法を改正して、日銀総裁をクビにする。そしてデフレ政策を改め、2−4%程度のマイルドインフレに持っていく。そして景気が過熱して大変だ、となれば、ぜひ増税をしてください。
私は増税そのものには反対していません。税収増えるのなら増税してください。
でも、日銀がこのような状態を続ける中、いくら増税しても税収は上がりません。
増税したい議員の皆様も、増税を妨げているのは日銀だということを頭に入れて日銀法の改正なくしてデフレ脱却なし、日銀法改正なくして財政再建なしということをご理解頂きたい。

【国会提示資料】kochokai20120613_jonen.pdf 直
この資料を見ながら、動画をどうぞ。

【動画】06.13 衆議院社会保障・税特別委員会公聴会 上念司氏

【追記】
同日、公述人として登壇した高橋洋一氏は、ご自身が訴えた内容を記事にされています。
6・13 国会公聴会
私が述べた消費税増税反対の10大理由

【追記2】
デフレ下ではないですが、リセッション下で増税したイタリアでは、「増税による税収減」に直面したようです。
イタリアの増税が裏目に、付加価値税収減少−緊縮策強化で

【関連記事】
そこまで言って委員会で上念司氏が増税推進・日本破綻不可避論者の辛坊氏を論破