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量的・質的緩和には大きな副産物がある

黒田日銀による量的・質的緩和は、10月のコアコアCPIをプラス転換させるなど、デフレ脱却に向けて一定の効果を発揮しているようです。ただ、量的・質的緩和にはもうひとつ、大きな副産物があるのに、黒田総裁は知ってか知らずか、それを否定しています。

 日銀の黒田東彦総裁は29日午前、衆院財務金融委員会に出席し、4月に導入した量的・質的金融緩和に関して「あくまでも物価安定の目標のためのもので、財政ファイナンス(赤字の穴埋め)では全くない」と語った。「今後とも財政のために(緩和を継続する)という考えは全くない」とも述べて、金融政策の目的が物価安定にある点を重ねて強調した。

 「財政の持続可能性に対する疑念が生じた場合には金利が乱高下、あるいは上昇する恐れがある」と説明。その場合には「金融政策(の効果)自体も影響を受ける恐れがある」と警戒感を示した。政府に対して「引き続き財政の健全化に努力していくことを強く期待している」と求めた。

  日銀総裁、金融緩和「財政ファイナンスでは全くない」 日経QUIKニュース2013/11/29

 日銀は現在量的・質的緩和として国債市中発行額の70%の買入れ実施しています。 市中から日銀に買われた国債についてはその利子収入の殆どを国庫納付金として政府に納付します。 これが買入れに使われた紙幣に関する通貨発行益となります。

 通貨発行益とは何か - シェイブテイル日記 通貨発行益とは何か - シェイブテイル日記

 市中発行された国債の7割について、その利子が日銀によって通貨発行益として補填されているのですから、これが財政ファイナンスでなくて何なのでしょう?

 日本経済が抱える最大の問題は、民間にマネーが少なくデフレであるのに政府債務が多いということです。

政府・日銀がもし2%程度のインフレ目標を達成した時には、名目金利はそれなりに上昇するでしょう。 その時には日銀が国債を大量に保有していれば、その分については金利上昇による政府債務の更なる増加を免れるのです。

 今更ながらの「たら話」ですが、もしもデフレに陥った時すぐに金利のつかない政府紙幣を適量発行して財政政策を実施して民間に十分なマネーを供給していたならば、早期にデフレ脱却もしていたでしょうし、政府債務残高ももっとはるかに少なかったでしょう。 

消費税が既定路線化しつつあり、デフレ脱却に効果の大きい政府紙幣は公式の議論が封印されている現在、通貨発行益による政府債務圧縮は要注目です。 市中発行国債の日銀大量買入れによる財政ファイナンスは、国債金利支払いが実質なくなることから、現在の政府債務問題に対する最善の問題解決策のひとつと言えるでしょう。

 逆に、税収弾性値が3といった高い値を取るデフレの中での消費税増税は、消費税収多少の増加はあるものの、大きく企業売上を毀損し、名目GDPを下げる結果、法人税所得税収を大きく下げることで、総税収は消費増税前より下がることは前回1997年の消費税増税で実証済であり、政府債務問題に対する最悪解でしょう。

ただ、どういうわけか、黒田総裁発言をみても日本では「財政ファイナンス」という言葉は最初から悪と決めつけられて議論される傾向があるようです。
あたかも、日本の財政の持続可能性に疑念が生じた時にのみ使わざるを得ない最後の手段のようなニュアンスで語られています。

おそらく、戦中の財政ファイナンスにより軍事費が維持され、その後のインフレ亢進を招いたことで「財政ファイナンスはインフレの元」ということから政界では「財政ファイナンスイコール悪」という短絡的思考が蔓延しているのかも知れません。

しかし、現在の日本はデフレです。財政ファイナンスはインフレの元、なのですから、現代世界で他に類をみない15年デフレの日本で、政府関係者や日銀がなぜ財政ファイナンスを積極利用してデフレ脱却をするという最善手を活用しないのか、あるいは活用しているのに、そう公言しないのか不思議です。