シェイブテイル日記2

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デフレ脱却に安倍総裁の政策と純リフレ政策のどちらがより有効か

 自民党安倍晋三総裁は15日、衆院選後に政権を奪還すれば、政府・日銀で2−3%のインフレ目標を設定し、デフレ脱却のためにあらゆる政策を総動員して取り組む考えを示しました。 *1
現在の日銀による「中長期的な物価安定のめど当面1%」に比べれば、2−3%のインフレ目標政策だけの金融政策でも脱デフレに効果的であることは論をまちません。

 では、安倍氏が同時に明らかにした、公共投資を増やした景気刺激型の予算を編成する方針は脱デフレに有効なのでしょうか、無効なのでしょうか。

高めのインフレ目標と十分な金融政策だけでデフレ脱却を可能と考える立場、いわば純リフレ派からすると、公共投資による景気刺激は脱デフレにとっては意味がないとされています。
 その論拠としては、マンデルフレミング(MF)モデルによれば、日本のように変動相場制を採っている国では、公共投資をしたとしても(金利高→)通貨高を介して純輸出減を介して無効となるためです。

 一方、京都大学大学院工学研究科教授の藤井聡氏は、デフレ環境下では(金利高→)通貨高というルートは働かない、とするデフレMFモデル無効論を唱えています。

 確かにデフレ日本では名目金利高は観察されていません。ただ、日本がデフレに陥った1990年代後半以降で見ると、公共投資額が35兆円と大きかった1995年-1998年頃は、交易条件だけで説明できない円高の時期で、公共投資が17兆円に落ち込んだ2006年頃は交易条件だけでは説明できない円安の時期に当たっています。*2

ところが、公共投資が減り続けた2001年から2006年は、その一方で日銀が金融緩和を進めた時期でもありますから、単純に「デフレ日本でもマンデルフレミングモデルは有効である証拠」とも言えないことになります(図1)。

図1 デフレ日本での経済政策とGDPデフレータ 
自民党歴代内閣と日銀はそれぞれデフレ脱却・経済テコ入れを狙って
経済政策を打ち出したが、デフレは脱却できなかった。 
民主党増税を唱える以外、デフレ脱却に有効な経済政策自身を打ち出していない。
注目すべきは、これまで間ケインジアン型政策とマネタリスト型政策を
同時に実行した政権はなかったこと。

私を含め、リフレ派が金融政策によりデフレ脱却が達成できるルートとしては、

金融緩和→予想インフレ率上昇と名目金利上昇→資産価格上昇による消費増、実質金利低下による投資増、または円安による輸出増

といったものを考えています。

だとすれば、仮にマンデルフレミングモデルがデフレ下の変動相場制でも有効だとした場合にも、金融緩和自身が円安効果を介して財政政策の有効性を維持する効果も有すると考えられます。
また金融緩和は、資産価格や円安といったものを介して二次的に名目GDPを押し上げるのに対し、財政政策が有効(輸出減に相殺されない)とすれば、直接的に名目GDPを押し上げるのですから、デフレ下の景気対策・デフレ脱却策としては金融政策もしくは財政政策単独でより、両者併用でこそ大きな効果が期待できるのではないでしょうか。

以上のことから、以前は純リフレ派的主張をしていた私シェイブテイルですが、現在では安倍総裁の、金融・財政併用の経済政策の方が、純リフレ派よりデフレ脱却には有効なのではないかと考えています。 恐らく実現するであろう安倍新首相の経済政策に大変期待しています。

*1:安倍自民総裁:インフレ目標2−3%、景気刺激型予算を編成

*2:片岡剛士「円のゆくえを問いなおす」図表4-3による