デフレになったら消費者物価指数はあまり下がらないのに、単位労働コストはひどく下がる
【要約】
・物価水準を示す指標には、消費者物価指数(CPI)、GDPデフレータの他に単位労働コストもあります。
・日本では’94年頃からデフレ傾向が始まり'97以降デフレが加速し現在に至っています。
・データを'97年の前後で分けてみると、どうやらデフレかどうかで物価の指標間の関係が変化しているようです。
昨日のエントリーで、「橋本内閣が消費税を上げたら、景気が後退して、デフレが顕著になり、所得が下がった勤労者はレストランを諦めて弁当を食べるようになった。」と推理されるデータをお示ししました。*1
その時にGDPデフレータとCPIを並べたグラフを見ると、'90年代半ば前後で物価のバイアスの大きさが異なっているように思えたので、今回はその点を検証してみました。
右の図は、'92年から'07年までで、同年のGDPデフレータとCPIの関係、及びGDPデフレータと単位労働コストの関係を散布図上にプロットしたものです。 矢印の部分が'07年のデータを示しています。 単位労働コストの方は、大体横軸のGDPデフレータが上昇すれば単位労働コストも上昇し、GDPデフレータがが下降すれば、単位労働コストも下降しています。これに対し、CPIはグラフ前半の'97年頃まではGDPデフレータが上昇すればCPIも上昇したのに、'97年以降にGDPデフレータが下降する局面でもCPIは下がっていません。 もう少し分かりやすくするためにこのグラフを'97年以前と'97年以降に分割してプロットしてみました。すぐ下のグラフは'92年から'97年までの物価3指標間の散布図(横軸GDPデフレータ;矢印が'97年;点線はGDPデフレータ自身つまり45度線)、更に下のグラフは'97年から'07年までの物価指標間の散布図(横軸GDPデフレータ;矢印は'07年)、です。
GDPデフレータで見た場合、日本は'97年以降にははっきりとデフレ転換しました。下の二つの図を見比べると、どうやら非デフレ期(上)とデフレ期(下)では物価指標間の関係が変化しているようです。非デフレ期にはCPIも単位労働コストもGDPデフレータと同等かそれ以上に上がりやすかったのに、デフレ転換すると、GDPデフレータが下がることに対し、CPIは感応しなくなっています。一方、単位労働コストは、GDPデフレータが下がる以上に下がってしまっています。
これだけの情報から色々と結論づけるのは性急過ぎるでしょうが、
1)デフレではGDPデフレータの下降をCPIでは反映しなくなるが、これは昨日のエントリーの話題に上げた「代替バイアス」が織り込まれるかどうかの違いである可能性がある。*2
2)'97年以降の単位労働コストがGDPデフレータの下降以上に下げている時期は、2000年代初頭の「景気回復実感のないイザナギ越え景気」の時期に当たっており、これ以降企業が正規雇用を非正規雇用に切替え、労働単価を引き下げて企業収益を上げるようになり物価が下がるとそれ以上のスピードで人件費が下がるようになった
というふたつの仮説が立てられるように思います。 皆さんはこれらのグラフをどう読みますか?