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デフレ下では消費税は誰が払っているのか

<<今日のエントリーについては、自前の実証データはナシですが、各種データを再構成して得た筆者の意見です>>
【要約】
1)デフレ下では消費税は消費者ではなく、中小・零細企業などが負担している。
2)中小・零細企業が負担した消費税は、中小・零細企業→→政府→大企業と流れている。
3)デフレ下で政府収入を増やす手段としては、日銀による国債の直接引き受けなどが適切。

昨今消費税論議が盛んです。例えば下の記事。

2011/7/1付 日経新聞
消費増税、時期明記せず 10年代半ばまでに10%
 政府・与党は30日、消費税増税の方針を示した社会保障と税の一体改革案を決定した。政府の原案は「2015年度までに10%まで引き上げる」との方向性を打ち出していたが、民主党の反対論が強く、増税時期は「10年代半ばまでに段階的に10%まで引き上げる」との曖昧な表現となった。閣議決定も見送り、内容は大幅に後退した。
 菅直人首相は政府・与党の社会保障改革検討本部で「まさに歴史的な決定だ。これからが本当の始まりだ」と表明した。そのうえで「野党各党に社会保障改革の協議を呼びかけ、成案を得て改革を実行する」と与野党協議を呼びかける考えを示した。

消費税推進論者は、「消費税は税負担が公平」と主張していますし、最終税負担者は暗黙かつ当然に消費者、とされています。
はたしてこの二点は正しいのでしょうか? 
税負担の公平性のうち、消費者の税負担の逆進性については今回割愛します。

 昨日のエントリーに書いたように、現在も日銀によるデフレ政策が続いています。*1
このようなデフレ下に消費税を上げた場合、企業、とりわけ中小・零細企業はその全額を消費者に転嫁させることができません。無理やり転嫁しようとすれば、同一業界か、関連業界に顧客を奪われます。*2
そこで税負担の一部または全部を自腹を切るケースが多数出てきます。顧客が大企業の場合にも、税額全部を転嫁させてくれない顧客は少なくないはずです。 大企業代表の経団連などはしゃあしゃあと「消費税アップと法人税減税をセットで」などと言っていますが、海外売上高の高い大企業などでは消費税は下請企業が自腹を切った税負担分は全額還付を受け益税になることを考え合わせると、一度の税改革で二度美味しい目にあうことになります。 経団連が消費税アップを熱心に唱えるのは別に消費税をもっと払いたいという自己犠牲の精神がある、というよりも単にゴウツクなだけです。 税転嫁できない自営業者などでは’97年の消費税アップ以降、自殺率が高まりました。
 政府支出の大きな部分を占める公務員給与はデフレを反映しないCPIに合わせて高止まりしていますから、 消費税を介する所得移転は雑駁に言えば
中小・零細企業→→政府→(消費税益税+法人税減税)→大企業、あるいは公務員
となっています。 また肝心の消費者は実質税負担は一部だけしかしていません。 
不当な税負担に耐えられない中小・零細企業は市場から退出し、デフレは一層進むが、こうしたことはCPIには反映されず、日銀は「バイアスのない物価指標」CPI=0%前後以上には物価が上がらないように引き締め気味の金融政策に励む、という訳です。

 これに対して、例えばデフレギャップを埋めるため国債を日銀が直接買い入れるとした場合、カネは日銀→政府→(財政政策)→民間、あるいは既発国債消却という具合に流れます。  何の問題もありません。 というよりも民間にカネが流れて景気がよくなり、諸悪の根源デフレも解消できます。 プライマリーバランスを達成することなく既発国債を減らすこともでき、一石三鳥です。
 政府関係者の中にも国債を日銀が直接買い入れれば国債が暴落する、という人も居ますが、巨大な買い手が現れた場合に合理的な市場参加者が国債を投げ売りするでしょうか? 

[追記]現代日本では精神疾患が増えています。 これと消費税を消費者ではなく自営業者などが払うこととつながりがあります。*3
【関連記事】 消費税のカラクリ−消費税によりなぜ零細・中小企業主が自殺するのか
【参考図書】消費税のカラクリ(↓、他)

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