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日本でレーザー核融合が大きく前進した

今日はいつもの日銀デフレの情けない話を離れて、世界のエネルギー問題を解決するかもしれない技術が最近日本で一歩大きく前進したことをお伝えしたいと思います。

レーザー核融合。 馴染みが薄い技術用語ですね。
核融合といえば、国際協力でフランスに建設中の熱核融合実験炉ITERなどが多少なりとも有名です。
こちらはトカマク型といわれるタイプの炉を1億度といった高温にしてその中に水素・ヘリウムなどの燃料プラズマを磁力で閉じ込めて核融合を起こそうとするもので、実用化は2050年頃、とも言われています。(右:核融合反応概念図)

 これに対し、レーザー核融合炉は慣性閉じ込め方式と呼ばれる方式のひとつで、米国ローレンスリバモア研究所のNIF(国立点火施設)という研究施設やカリフォルニア大学、そして日本の阪大が世界の研究をリードしていました。
その阪大から光産業創成大学院大学に招聘された北川教授が浜松ホトニクストヨタと共に世界で最初にレーザー核融合の連続反応に成功した、ということです。

レーザー核融合、連続反応に成功 光産業創成大学院大など  (静岡新聞2012/4/ 5 08:55)
 光産業創成大学院大(浜松市西区)は4日、浜松ホトニクストヨタ自動車などとの共同研究で、レーザー核融合反応を「爆縮高速点火」による手法で100回連続して起こすことに成功したと発表した。同手法での連続反応は世界初。効率良く大きな熱エネルギーを生み出す手法での達成に、同大学院大の北川米喜教授は「レーザー核融合発電の実現に向けた第一歩を踏み出せた」としている。
 レーザー核融合発電は、海水に含まれる重水素三重水素を混合した燃料にレーザーを照射して核融合燃焼を起こし、そのエネルギーを発電に利用する理論。CO2を排出せず、原子力発電に比べ放射性廃棄物も極めて少ないため、次世代技術として注目されている。
 爆縮高速点火は、レーザーで燃料を一度圧縮してから、点火する手法で、共同研究では、レーザーの連続照射装置を開発。燃料の2対の重水素の薄膜を回転させ、2方向から照射することで、核融合反応を毎秒1回のペースで連続的に起こすことができたという。今後は実用化に向けて、レーザー装置の高出力化などに取り組む。
 今回の成果は9日、米国物理学専門誌「フィジカル・レビュー・レターズ」電子版に掲載される。
(写真は浜松ホトニクスのレーザー施設)

現在の世界のエネルギーは、枯渇の懸念がある化石燃料が中心です。
近年、シェールガスなど新型天然ガスの開発により、当面は以前懸念されていたようにこれらの資源が枯渇することはないでしょう。 とはいえ、資源量が有限であることは間違いありません。現在話題の再生可能型エネルギーは、安全性からの期待は高いですが、高コストや低エネルギー密度など解決すべき問題も多く、今後の人口増加に再生可能エネルギーだけで対処可能かも相当怪しいところです。

 核融合は燃料が二重水素三重水素・リチウムなどですが、三重水素はリチウムから人工的に造られ、二重水素とリチウムは海中に無尽蔵にあることから、核融合が実現すれば、人類は永遠にエネルギー問題から解放されると言われてきました。

昨年3月11日以降、核エネルギーへの不信感が高まっているところではありますが、現在の核分裂原子炉に比べ、核融合炉は原理的には格段に安全性が高い、とされています。 核融合反応については、大阪大学レーザーエネルギー学研究センターウェブサイトに詳しい解説が書かれています*1。 
人類を半永久的にエネルギー問題から解放するかも知れない、この日本発のレーザー核融合という技術はすぐに実用化は難しいでしょうけれど、将来的には期待できそうに思います。

*1:核融合のメリットとして記載されていることは、核融合炉が完成すれば、ウランプルトニウムの核拡散問題から完全脱却可能・高レベル核廃棄物貯蔵問題からも解放される・低放射化材料で炉を造れば、構造物の放射化も激減、約百年で再利用可能なレベルに減衰・暴走事故は本質的に存在しない