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「政府紙幣発行問題」の顛末

【要約】
財務省政府紙幣になぜ反対するのか、事実に基づき詳細に書かれた本があります。
・「日本国の正体」。先日のエントリーに続いてこの本から引用します。
 
 
日本国の正体 政治家・官僚・メディア――本当の権力者は誰か (現代プレミアブック)【日本国の正体 p187〜p190】
 高橋(洋一氏)は経済危機が深刻化するのを見て「政府紙幣を発行して景気対策に使えばいい」という政策を唱えていた。09年1月末に安倍晋三元首相と菅義偉自民党選対副委員長に会って直接提案した。高橋案を聞いた安倍・菅両氏は前向きに応じた。特に菅は動きが速かった。
菅は2月1日に出演したテレビ番組で「政府紙幣に非常に興味を持っている」とぶちあげると、議員連盟の結成に動き、10日には早くも初会合を開く。
 議員連盟は「政府紙幣及び無利子国債の発行を検討する議員連盟」と名付けられ、初会合で高橋は講師役を務めた。
菅はここを舞台に提言の取りまとめに動く一方、安倍も高橋のレクチャーを受けて水面下で麻生首相政府紙幣案をブリーフしている。
 こうした動きに財務省は神経を尖らせていた。
管のもとには、財務省幹部が訪れ、「政府紙幣発行は難しい」と反対意見を述べている。
高橋に対しても、財務省関係者が「あなたがブリーフしているのか」と探りを入れていた。その矢先に起きたのが、14日の中川大臣の朦朧会見事件だったのだ。
 中川は安倍、菅、甘利昭行行革相の3人と共に麻生首相にもっとも近い一員である。 グループは4人の名前をとって「NASAの会」と呼ばれている。
なかでも安倍と菅の二人が政府紙幣に傾けば、中川も同調するのは目に見えていた。
 財務省政府紙幣に反対だった。
 なぜなら、すでに浮上していた大型景気対策政府紙幣によって賄われると、赤字国債を追加発行する必要がなくなってしまうからだ。「国債を追加発行しないでいいなら、結構じゃないか」と思われるかも知れない。ところが、そうではないのだ。
ここは普通の感覚では理解しにくいところなので順を追って説明する。
 まず政府紙幣財務省のバランスシートの上では債務になるが、国債を発行するわけではないので、償還する必要もなく、財政赤字は増えない。 それは財務省にとっては好ましくない。 なぜなら増税を狙う口実が弱くなってしまうからだ。
財務省の最終的な目的は増税である。
財務省にとっては政府紙幣景気対策の財源を賄って赤字国債を出さずに済ませるよりも、いっそ赤字国債を大量に発行して借金をふくらませる方がいい。
目先の財政赤字が大きくなれば、将来の増税を訴える口実になるからだ。「国の財政は赤字が増えて大変です」と新聞記者に訴えて、財政再建の必要性を大キャンペーンし、将来の増税を確実にしたほうが良かったのだ。
 いったん政府紙幣を発行すると、「赤字国債の追加発行なしで財源を賄える」ことが明らかになってしまう。そうなれば「借金は塩漬けにすればいい」という議論が高まるかもしれない。
そんな事態を恐れていたのである。 (つづく


左から安倍晋三元首相・菅義偉高橋洋一・故中川昭一元財務・金融担当大臣の各氏

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