再考・バカの壁-なぜ政治家や官僚にはバカが多いのか-
【要約】
・政治家や官僚がバカに思えることは少なくありません。
・そう思えるのは政治家や官僚の「バカの壁」のせいかもしれません。
「バカの壁」。
言うまでもなく、脳科学者養老孟司氏による2003年の著書で、400万部のベストセラーとなりました。
端的に言えば、「人間同士が理解しあうというのは根本的には不可能である。理解できない相手を、人は互いにバカだと思う」というのが本書の要点でした*1。
ではなぜ立派な人同士が理解できないのでしょうか。
人がモノをしっかり考える時には枠組みというものが必要となります。 この枠組みにより前提条件が決まり、この前提条件の下で解を探します。
枠組みがない人(例えば小さな子ども)には緻密な計算は無理です。ただし「自由な発想」で「裸の王様」を指摘することはできますが。
しっかりモノを考えようとしたら、可能性(possibility)があること全てを枠組みの中に入れて考えるのではなく、どうしても蓋然性(probability)がある程度高いことに絞って考えるしかないのです。
しかしこの枠組みの外側こそがいわゆる想定外というやつです。
M8.5までしか想定していなかった原子力施設の専門家にはM9.2の地震は想定外でした。 有史以来最大の地震は1960年のチリ地震のM9.5でした。
ならば有史以来最大の、M9.5まで考えておけば地震対策の漏れはなさそうですね。
ところが地球上で起きうる地震の最大規模はM10とか。
更には6500万年前、ユカタン半島に落ちた巨大隕石による地震はM11以上だったとか*2。
M8.5でもM9.5 にも想定の枠組みつまり「バカの壁」が存在し得て、その枠組みの外にいる観察者から見ればあり得る前提を外して考える壁の内側の人はバカに思えるのです。 それは、たとえ壁の中の人が東大を出ていようが、優秀なジャーナリストだろうが、経産省や日銀・財務省などの優秀官僚でも同じことです。
行政に携わる人々は自分がルールを作る側と思っていますから、警察官僚を除けばルールの外側で起こることには関心が薄いように思えます。
だから政治家や官僚には国民から見て「バカ」が多いのでしょう。
政治家や官僚の方々へ。
折角天から与えられた優秀な能力と地位とを活用するためには、時々立ち止まって、自分の想定が狭すぎないか、想定外を想定することが必要でしょう。 そうすることによって、一生懸命バカなことをする政治家・官僚から国民から尊敬される人になれるのではないでしょうか*3。
バカの壁は誰にでもある
- 作者: 養老孟司
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2003/04/10
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