シェイブテイル日記2

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リフレ派スペクトルと薔薇マーク運動、ポストケインジアン

最近リフレ派内の分裂が目立ってきました。

これについて偽トノイケ☆ダイスケ(久弥中)‏ @gannbattemasenn さんがうまく分類を考えてくれました

 リフレ派は金融政策重視では差がないものの、財政政策については積極財政から緊縮財政の順に 「薔薇マーク派」「自力リフレ派」「他力リフレ派」「緊縮リフレ派」があるという分類です。リフレ派内のスペクトルといったところですね。

 

これも参考にさせてもらって、私シェイブテイルが属する(市井)ポストケインジアンも含めた経済クラスタを分類してみました。

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リフレ派スペクトルとポストケインジアン

縦軸の財政政策は上が積極財政、下が緊縮財政と分かりやすいと思います。

横軸の貨幣生成の捉え方について、「外生的」あるいは「内生的」貨幣生成というのが聞き馴染みがない方も少なくないことでしょう。

 

これについては吉田暁氏*1の小論文に簡潔な対比が載っています。

西川元彦は「貨幣がまずあってそれが貸借されるのでなく,逆に貸借関係から貨幣が生まれてくる」と述べたが 、内生的貨幣供給論の本質を示す名言である。 また内生的貨幣供給論の中心的主唱者Moorは主流派の金融論との違いを「現在標準的なパラダイム(注:外生的貨幣供給論)は特に米国の経済学者にあっては ,中央銀行がマネーベースを決定しそれによってマネー総量を決めるとしている 」が、これらの 「現代金融理論は貨幣が商品(金銀) であった世界では妥当であった考え方を商品貨幣と信用貨幣の基本的な違いを認識することなしに継承している」と述べている

:内生的貨幣供給論と信用創造 

https://www.jstage.jst.go.jp/article/peq/45/2/45_KJ00009509884/_pdf

 

 吉田暁氏は元全国銀行協会連合会勤務とあって、貨幣と貸借つまり負債との関係をよくご存知でした(いわば経済学の地動説)。

貨幣は中央銀行が創り出して、これが上限となる負債の受け皿になっているわけではなく、民間企業なり政府が負債を負うことで貨幣はゼロから生まれているということです。

 

一方、現代経済学で主流派を名乗る経済学派はいずれも商品貨幣説型の間違った貨幣観を引きずっています。(経済学の天動説)。 

その間違いの「しっぽ」が例えば教科書レベルでは、貨幣発生の物々交換モデル(実際には物々交換をやっていたという人類史上の証拠はなく、金属貨幣が生まれるはるか前から貸借関係の記録が残されている)、信用創造の又貸し説(実際は銀行が貸出することで、それと両建てで貨幣がゼロから生まれている)、財政出動によるクラウディングアウト、国債発行で財政出動→貨幣市場タイト化→金利上昇→民間経済抑制といった誤解(実際には国債発行して財政出動すると貨幣は純増するので金利抑制要因)あるいは、政府貯蓄という不思議な概念(政府は家計と違い、必要に応じて政府あるいは中央銀行信用創造して無から貨幣を増やせるため、貯蓄する意味がなく、T-Gという計算結果には意味がない)に出ていると思います。

 

 過去6年の3本の矢からまず積極財政を止め、ついで金融緩和を止めて、構造改革1本槍に変質したアベノミクスは、もはや財政破綻派と区別がつかなくなっています。*2

 

 そうした閉塞感からの反発として逆に薔薇マークリフレ派の方々が力を得ていることは喜ばしいことで大いに期待できます。

ただせっかく積極財政を唱えるのであれば、貨幣と負債の本質まで知っていただき、ポストケインジアン派に転向されれば施策面でもしっかりした提案がなされるものと期待しています。

*1:1933年東京生まれ。1955年東京大学経済学部卒業。1955~1985年全国銀行協会連合会勤務(調査部長、事務部長、事務局次長)。1985年~2014年武蔵大学経済学部教授、名誉教授) 決済システムと銀行・中央銀行』より

*2:他力リフレ派が最近緊縮アベノミクスの成果として総雇用者報酬増加など少子高齢化帰結を戦果として誇っているのは、緊縮しても経済は良くなると主張していることになり、増税派のイヌに成り果てていることは困ったことです。上の図でも緊縮派と大差がないですし。