シェイブテイルのデフレ脱却実践記

シェイブテイル日記ではデフレ経済研究を行ってきました。今後はこれをデフレ脱却実践につなげます。

「キプロス問題」はキプロスが問題なのか

 20日付のブルームバーグでは、現在多少収まっているキプロスでの預金カットをめぐる混乱の舞台裏について書かれていました。*1

ドイツのショイブレ財務相が17日、欧州委とECB、キプロス政府が普通の銀行口座にも課税する案をまとめたとARDテレビに語り、非難合戦の口火を切った。「彼らはこれについて、キプロス国民に説明しなければならない」と述べた。

そのころにはキプロス市民が現金自動預払機(ATM)の前に列を成し、手のひらに「NO」という文字を書いて突然の措置に抗議していた。最も小口の預金者に関しては課税が免除されるように修正された後もこの法案は、議会でただの1票の賛成も得られなかった。

16日早朝には満場一致で支持されていた。

政策を助言するリデファインのマネジングディレクター、ソニー・カプーア氏は「キプロスをめぐる大失敗は典型的な犯人探しの様相になってきた」として、「誰かがどこかで決定をしたのだが、今となっては誰もどこでもそんなことは決めていないという雰囲気だ」と話した。

キプロス国民の怒りを受けて他の財務相らも自身の無実を訴え始めた。フランスのモスコビシ財務相は10万ユーロ(約1240万円)未満の預金を課税免除にすることを求めたと述べ、オーストリアのフェクター財務相はECBがそれを不可能にしたと主張した。

フェクター財務相は18日、ECBが大口預金者の税率を低くするために少額預金への負担を重くしたのだと説明。ブリュッセルで15日から16日にかけての徹夜会議に参加したアスムセンECB理事は「課税のこの特定の構造」をECBが主張したわけではないと無実を訴えた。

10万ユーロを下回る預金への課税は自分の意見ではなかったと訴えるのはほかにスペインのデギンドス経済・競争力相やフィンランドのウルピライネン財務相。欧州委も20日、課税を含めたパッケージの「全ての要素」について全面的に良しとしていたわけではないと釈明。「決定したのは加盟各国だ」と付け加えた。

当局者の証言をつなぎ合わせると、こういうことだったらしい。まずドイツとIMFキプロスの銀行の債権者と預金者に損失負担を求める完全な「ベイルイン」を要求。この劇薬を回避するため欧州委がECBを後ろ盾にして預金課税の案を持ち出した。そして、主にロシアからの大口銀行顧客を失うことを恐れたキプロス政府が税負担を2種類の預金者の間に配分したということだ。

ブリュッセルの会合に出席していなかったメルケル独首相は犯人をズバリと指摘した。首相は20日、ベルリンのドイツ商工会議所連合会(DIHK)で、キプロスは「持続不可能な銀行事業モデルと決別しなければならない」と言明。「リスクを取る銀行と誤った事業モデルで営業する銀行は、それぞれの国ばかりでなく全ての国にとっての脅威であることを、われわれは皆知っている」と述べた。


キプロスの新聞紙上のドイツとIMF首脳
キプロス最大の新聞Phileleftheros紙に掲載されたラガルドIMF専務理事、ショイブレ独財務大臣を従えたメルケル独首相。
欧州を蹂躙し神の災いと恐れられたフン族の王アッティラの姿となっている。


キプロスの銀行は、タックスヘイブン化していて、元来つながりが深かったロシア資金などを大量に受入れ、ギリシャ国債などに投資した結果、巨額の損失を抱えました。

銀行の損失は巨額過ぎてとてもキプロス政府だけで対応しきれずEUに救済を求めたところ、ドイツとIMFが主導して、少額預金者ごと一律預金カットという制裁を課そうとして、取り付け騒ぎが始まり、これが世界の金融市場を動揺させたという流れでした。

 今回EUがキプロスの銀行の預金カットにより節約しようとした支援額は70億(約0.9兆円)ユーロとか。
これに対し、例えば世界の株式市場はこの問題が報じられて2日ほどの間に、筆者推定で一時約2兆ドル(190兆円)の損失が発生しました。 桁が大きすぎてちょっと実感しにくいですが、だいたいこんな感じです(図1)。 これ以外にも債券や為替市場の動揺での被害も少なくなかったでしょう。

キプロス問題は費用対効果が悪すぎる

図1 EUが節約しようとした金額と株式市場での損失額
EUがキプロスの少額預金者も含めて預金カットして節約しようとした援助額70億ユーロ(紫)を
節約しようとした結果、株式市場に限ってもその後の2日間で世界でおよそ2兆ドルの損失(緑)を被った。
株式市場損失規模は筆者推定による。

EU、特にドイツとIMFは欧州問題でしばしば行き過ぎた緊縮型の措置を繰り出していますが、それが問題の解決に多少なりとも寄与したか、と言えば筆者は否定的に捉えています。

むしろ、欧州中央銀行ECBが緩和的措置を打ち出すことで危機は平穏化していることは明らかです。
こうしたことは、1930年代のアメリカの大恐慌でも同時期の日本の昭和恐慌でも経験されたことであり、もうそろそろ、財務首脳も緊縮型の金融財政政策で恐慌型の経済から脱却はできないことを学んでも良いのではないでしょうか。