シェイブテイルのデフレ脱却実践記

シェイブテイル日記ではデフレ経済研究を行ってきました。今後はこれをデフレ脱却実践につなげます。

20年間に輸出が1.5倍に伸びたら日本は健全か

録画しただけで見損なっていた「朝まで生テレビ元日スペシャル」を先ほど眺めていましたら、司会の田原総一朗氏が「日本の国際競争力はバブル直後の1990年に第1位だったのが、2011年には27位にまで落ちた。 これはなぜだろうか。」という問いかけをしていました。

これに対し、出演者のひとり、藻谷浩介氏*1は、「1990年には日本の輸出額は40兆円だったのが、現在は60兆円と1.5倍になっている。」と答えていました。

 田原氏の問いに対する直接的な答えではなかったため、田原氏から「では日本の国際競争力が落ちても問題はないのか?」と重ねて訊かれ、やや問答が噛み合っていないようでした。

 それはともかく、確かに藻谷氏の指摘するように、日本の輸出額はバブル崩壊後1.5倍に増えているのは事実です。これを見る限り、藻谷氏ではないですが、「輸出額が伸びていて、それの何が問題?」という気もします(図1)。
 ただ、輸入も大きく伸びていて、貿易黒字額としては1998年の14兆円がピークで、2011年は原発停止によるLNG大量輸入の影響もあり、バブル崩壊後でははじめて通年で赤字に転落しています。


図1 日本の輸出入額推移  
出所:財務省貿易統計から作表(単位 兆円)。
輸出額はリーマン・ショック前の80兆円は回復していないが、
バブル崩壊直後の40兆円から見ると、1.5倍に増加している。

さて、日本はこの20年で輸出額が1.5倍、輸入額が2倍になったわけですが、同じ時期に世界的な貿易はどうだったでしょうか。 世界貿易は国際連合貿易開発会議(UNCTAD)の統計データベース *2から確認することができます(図2)。


図2 世界貿易額推移
出所:UNCTAD-stat.(輸出) から作表(単位 兆ドル)。 

日本の輸出額が1.5倍増にとどまっている間に、冷戦が終わり、BRICSなどの国々が世界経済に組み込まれることで、世界貿易額は1990年の3.5兆ドルから2011年の18.2兆ドルまで5倍以上に増えていたんですね。
ついでに貿易世界シェアも見ておきますと、日本は世界経済の伸びについていけず、そのシェアは1993年をピークに凋落が続いています。(図3)


図3 世界貿易シェア推移
出所:UNCTAD-stat.(輸出) から作表(単位 %)。*3

最後に日本の貿易相手国シェア変化も見てみましょう。

図4 日本の貿易相手国推移
出所:http://www.jftc.or.jp/kids/kids_news/japan/country.htmlから作図
冷戦までは米国やドイツ台湾韓国などが主要貿易国だったが、冷戦終了後は
中国・東南アジア諸国が主要貿易国に取って代わった。


こうして世界貿易を見た後で図1をもう一度見なおしてみれば、近隣諸国が急速に経済を活発化させる中、日銀無策による円高により、価格競争力のなくなった国内中小零細企業に代えて、製造バリューチェーンの中に近隣国を入れざるを得ず、日本の輸出入が近隣国を中心に伸びたという姿が見えてきます。 

 藻谷氏が日本の国際競争力低下という問いに対し、貿易量が1.5倍に伸びたので問題ない、と答えたわけはご本人でなければ判りませんが、「データ分析者には、データを広めに眺め、仮説との齟齬があれば仮説を見直す姿勢が必要」という教訓を藻谷氏という反面教師から引き出すことができそうです。

*1:デフレは人口減によって起きているという「デフレの正体」の著者

*2:http://unctadstat.unctad.org/ReportFolders/reportFolders.aspx

*3:本題からは外れますが、内閣府のデータでの日本の世界貿易シェアは8%位です。これは恐らくUNCTADデータはモノの貿易量のみ、内閣府はサービスも込みという差ではないかと思われます。