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日銀デフレ下で消費税論議を進める愚かさ

ギリシャ危機以降、菅首相は「このまま行けば、日本はギリシャのようになる。」、またそうならないためには「税と年金の一体改革を進めるべき。」という主旨の発言を繰り返しています。 
 しかし、ご存知のとおり、日本では持続的なデフレ状態にあります。右の図は日本の物価(GDPデフレータ)推移ですが、’95年頃から年率1−2%のペースで物価水準が低下しています。

物価水準が年率1%強のペースで縮んでいるということは、いわば年間1%強のペースで減る椅子(紙幣)をめぐって椅子取りゲームをしている状態のようなもので、椅子を取られた商品、引いてはそれを生産していた企業や従業員は業界や人材市場から除外されてしまいます。
こうしたイス取りゲームを民間に強要しているのが日銀です。 日銀はなぜそんなことをしているか、といえば、年間1%程度経済が膨らんで見える歪んだ指標である消費者物価指数(CPI)を通して世間の物価を監視しているからです。 このCPIの歪みがいわゆる「CPIの上方バイアス」と呼ばれるものです。
 実際には椅子が増減していない状態(真に物価が変動しない状態)を、歪んだ指標・CPIで見れば+1%程度椅子が増えているように見えているため、「日銀が目指す椅子の数が増減しない状態に戻さねば!」と椅子(紙幣)を本来必要な量より減らそうとします。
そうすると、世の中にカネが減れば製品は売れないわけですから、減った椅子(紙幣)に合わせるため、民間は供給を減らそうとします。つまり、投資を抑制し、雇用も減らします。家計は消費を減らし、将来に不安を持つことから少子化も進みます。これが世界でも日本特有の日銀発デフレの正体です。
そして経済規模が縮むと、その経済規模に見合った紙幣の量は更に少なくても良いように日銀は判断し、更に椅子を減らしにかかるという具合です。

こうした日銀デフレの、不安な状況を放置したまま消費税を上げたとしましょう。
 
「税金」というものは民間のカネを一旦政府に吸い上げた後、ある意思の元に再配分するわけですが、今の日本で消費税を上げた場合、若年労働者から勤労しない高齢者に向けて更なる所得移転が起きます。 その結果、将来に不安を抱えた若年層は日銀デフレだけの現在以上に子供を作ろうとはしなくなるでしょう。
 結局、「現在の年金制度の安定化のために消費税を上げる」という筋書きのはずが、それを支えている労働者層の困窮化を介して年金制度崩壊を加速する結果に終わりそうです。 
 
 財政再建の名のもとに経済オンチの菅直人を踊らせて若年層の財布に手を突っ込むことばかり考えている財務官僚は、前回97年の消費税アップ後の不景気・デフレ突入の経験があるのになぜ同じ過ちを再現しようとしているのでしょうか。
 また、消費税増税で若年者を疲弊させ、却って年金制度を崩壊させることに血道をあげるよりも、日銀デフレを止めさせ、経済成長による税収増で年金制度を維持する方が自分たちの将来も安定化ことになぜ気がつかないのでしょうか。 理解に苦しみます。

 ついでに書きますと、菅直人は財務官僚の「ご進講」を真に受けて数年後に国債発行が行き詰まるように思い込んでいるようですが、その論拠は日本政府のグロスの債務額が1000兆円に近く、家計の貯蓄額1400兆円に近付いているということかと思います。 しかし実際には日本政府は多額の資産もあり、純債務額はグロスの1/3です。 
 経済オンチの現政権下で拙速に消費税論議を進めなければならない必然性はないのです。