シェイブテイル日記2

シェイブテイル日記をこちらに引っ越しました。

円高の理由とデフレの理由

(できれば、先にこちらから読んでもらえればここで私が書きたいことが伝わりやすいかと思います)

最近の円高に対し、財務省・日銀が円売りドル買い介入に動いたことは記憶に新しいところです。
ところが直近のシドニー市場では81円台前半という介入前の水準も突破し、15年ぶりの円高となっています。

ところで、「ソロスチャート」というものをご存知でしょうか。
これはヘッジファンドで有名なジョージ・ソロス氏が考案したチャートで、ドル円レートと日米両国のマネタリーベースの比を同時にプロットすると、両者はかなり高い相関を示す、というものです。
実際のソロスチャートは下図のようになっています。

図1 ソロスチャート

これを見ると、現在の円高も、かなりの部分は日本の円があまり刷られていないことで説明がついてしまうことが分かります。
 
また、アメリカにしても日本にしても物価水準に目標を明示してはいませんが、GDPデフレータで、アメリカは2%、日本は−1%のインフレ(日本はデフレ)ターゲットを狙っているように振る舞い続けていることは既に指摘しているところです。 それぞれの国で差し引き3%、通貨価値が相対的に変化し続けています。
’87年の為替水準が150円/ドルだったとして、その後両通貨の価値が毎年3%変化していったとした場合、その後のドル円水準は図2のようになります。

図2 通貨価値が毎年3%変化していくと…

図1、図2からは、日銀が円(マネタリーベース)を増やしていかなければ今後もかつて経験したことがないレベルの円高になることが強く示唆されています。
特に図2についてよく考えると、先の円売りドル買い介入の際に、「現在のドル円相場は、購買力平価から見てそれほど円高ではない。」という海外金融関係者からの冷ややかな声が聞こえましたが、これは「日本は円の価値を高くする政策を続け、米国(及び欧州も)では通貨価値を緩やかに減価させる(=マイルドインフレ)政策を取っているため、円高は当たり前」と言っていることになります。
円を売って、外貨を買うような政策をするくらいなら、国内で円を刷れ。
そういうことです。

あともう一点。
ソロスチャート(図1)で丸で囲んだ部分は、日本でいわゆる量的緩和が行われた時期にあたるのですが、この時期には日本でベースマネーが増えた割に円高は是正されませんでした。
これはちょっと考えると不思議な感じに思える話ですが、8日の「包括的金融緩和」のところで書きましたように、量的緩和の時期に「市場」に投入されたという30から35兆円レベルのカネは金融機関にのみ投入されていますから、「実質金利」の壁により実際カネが必要な非金融部門にはほとんど漏出することはなかったと考えられます。
ようするに2000年代前半の「量的緩和」はいわば見せ金に過ぎないことを、ドル円相場は反映していたのでしょう。

結論。
先の量的緩和は見せ金に過ぎず、デフレ解消には全く効くはずがなかった。そのことがソロスチャートの異常にも反映されている。
今回の包括緩和もほとんどが見せ金。 意味があるのはわずかに0.5兆円。
日銀さん、こんなものでデフレが解消するわけがありません。

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