ブラジルだけでなく、人類は皆アミーゴ
都会地に住む人達なら、電車で隣に座った若い男が、足を広げて寝ているのはだれしも嫌なものである。
先日、混みあった通勤時間帯なのに、電車内で高校生と思しき若い男が、大股開きの間に、大きなスポーツバッグを挟んで私の隣の席で寝ていた。 もしかすると寝たふり、だったのかもしれない。
寝ている(?)彼は、しばらくすると私に寄りかかってきた。
スポーツで鍛えているのか、随分体格が良い高校生だったので、押されて、重い。
その時内心、私は「チッ!」っと思ったかもしれない。そして、どうせ同じ高校生が寄りかかってくるのだったら、女子高生の方が、とも思ったかもしれない。
その時私はとても面白いエッセーを読んでいた。
「生きるコント」。 「生きるヒント」ではない。
大宮エリーという妙齢の女性の、実話らしい。
その中に「ビキニ」という抱腹絶倒の話が載っていた。*1
準備不足か諦めか、大学薬学部の国家公務員試験をサボったらしい彼女は、なぜか開催日が一緒だった、サンバを見に、ブラジルはリオに向かう。
kwskはネタバレになるので、そのあたりは「生きるコント」を読んでいただきたいのだが、そのショートエッセーの中に、
アミーゴの国、ブラジル。すごいよこの国は。誰とでも会った瞬間からトモダチなのか?
という表現が、目に止まった。
「ふーん。ブラジルって凄いなぁ。会った瞬間からトモダチかよ」と思った私は、ふと、
「なるほど。それなら、俺がブラジル人なら、この大股広げて私に寄りかかって寝ている男子高校生だってアミーゴかぁ」と思った。
そして、ふてぶてしく寝ていた、隣のアミーゴ男子高校生()の耳元で、優しく小さな声で、「お兄ちゃんよ。疲れてるとは思うけれど、電車の中だから、(アミーゴ)」と、私の耳打ちが終わるよりも前に、彼は慌てて恐縮し、足元の荷物まで小さくまとめて、彼は縮こまり、彼の全身が申し訳ないという空気になった。
気を良くした私は、また耳打ちで「アミーゴ」に、「まぁ、誰だって疲れて寝ることはあるからねぇ。」と微笑んだところ、彼は一層済まなそうな顔で、でかい体に似合わないほどカワイイ照れ笑いを返したのだった。
しばらくして、彼の方が先に電車を降りたが、降り際に、アミーゴ男子高校生は見ず知らずの私をちょこっと振り返り、小さくペコリと一礼し、ニッと笑って電車から出て行った。
- 作者: 大宮エリー
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2008/03
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*1:この話はおすすめです(笑)。