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「インナーサークルに入っていたい」という大人の判断が日本を潰す

著名なリフレ派経済学者の間でも消費税がデフレを促進するということをご存知ない方が多いように見受けられます。今日は消費税とはデフレ促進税である証拠をお見せしましょう。またそれを知った上で消費税に賛成した人たちの心理も考察してみたいと思います。

早速ですが図表1をご覧ください。

1997年に消費税が上がった時でもスーパーでは売価を上げられなかった

図表1橋本消費税増税(1997)前後での物価の動き
出所:消費者物価指数(CPI)=総務省月次データ、
東大物価指数=専用サイト月次データ 縦軸:物価対前年同月比(%)
赤枠内、1997年消費税増税でCPIは上がったが、POS売上げデータからの
東大物価指数は却って下げ気味。

図表1は物価指数の対前年比です。いわゆる消費者物価指数(CPI)は1997年にほぼ2%上がりました。1998年には価格が維持されて前年比0%に下がっています。

一方、スーパーなどのPOSデータから集めた物価、東大物価指数は、消費税が上がった1997年にもむしろ物価が下がっています。この一見不思議な現象はどう解釈すべきなのでしょうか。

物価調査での個別物価は消費税により上がります。特に公共料金など独占性の高い商品・サービスではそのまま転嫁されているでしょう。 ところがPOSシステムに反映される価格では、同種製品内でも、消費税が上がったら価格転嫁する製品から転嫁しない安い製品に購買嗜好がシフトします。 その結果、消費税を転嫁した製品はスーパーでは売れないという主婦感覚では当然のことが起こります。

この時の価格内訳を考えてみましょう(図表2)。

消費税が上がった時、価格競争があればコストカットせざるを得なくなる

図表2 消費税は誰が負担しているのか(スキーム)
出典:斎藤貴男著「消費税増税乱は終わらない」p144図から作成
ここで「現状」とは1997年の消費税+2%増税前の状態。
「想定」とは国税庁が想定する完全価格転嫁できた場合の状態。
「実際1」とは消費者に価格転嫁できないスーパーなどでの負担状態。
「実際2」は実際1では経営できないスーパーが価格を仕入先コストに転嫁した状態。

国税庁などは「消費税は取らない企業が悪い」などと国会答弁します。これはデフレ経済の日本の実情を無視した役人の戯言です。現実には図表2で図示したように、最終顧客には転嫁できないケースが多く、転嫁できなかった消費税は結局仕入先への強い値下げ圧力になるだけなのです。 こうして消費税がデフレを強烈に推進します。

黒田日銀が100兆円、200兆円とベースマネーを増やして半年経ってようやく物価は少々上向きましたが、コアコアCPIでちょうど0%、東大物価指数では△0.5%と、CPIの上方バイアスを考えれば未だに物価はマイナスのデフレです。 一方、消費税は半年どころか、一瞬にして日本社会をデフレの淵に放り込んでいます。

今日本が消費税をいじるのであれば、消費税5%を10%にしてデフレを強化するのではなく、0%に下げてやれば相当強烈にデフレ脱却を推進できるでしょう。  *1
こんなことは日本経済の中にいる、経営者や自営業者さんたちは肌で知っているのです。
ではなぜ、中小零細企業を代表する立場であるはずの日本商工会議所は消費税に賛成したのでしょうか。

その理由が消費税の歪みを追求してきたジャーナリスト斎藤貴男氏の著作に載っています。

◆インナーサークルに入っていたい
僕(斎藤貴男氏)は日本商工会議所の幹部に聞きましたけれど、
「でも消費税増税に反対すると、我々は共産党と同じ立場に立つことになって、権力のインナーサークルから外れてしまう。自分たちはあくまでも内側にいたい。だからこれは賛成して、そのかわり、後で補助金でいただきます。」
哀れなものなんですが、社会的には大迷惑。ますます利権だらけの世の中になるんですね。
斎藤貴男著 消費増税「乱」は終わらない(p154)

消費税増税により、売上減どころか、払ってもいない消費税を払わされる価格決定権のない中小零細企業を代表するはずの日本商工会議所が、共産党と同じでは嫌だ、補助金をもらえればそれでいいという官僚と余り変わらない発想から、消費税5%増税を許した現実があります。

 今回の8%増税、更には10%増税も、同様の「理論」で、現実に目をつぶった「大人の判断」が日本中の中枢部分でなされた結果、当面のデフレ強化政策は決定してしまったようです。

【関連記事】以前、私も実際に日本商工会議所に聞きました。
消費税に対し日本商工会議所はどう捉えているのか - シェイブテイル日記 消費税に対し日本商工会議所はどう捉えているのか - シェイブテイル日記

「大人の判断」でお約束のお断り:筆者には日本商工会議所だけを吊し上げようという意図は全くございません。 消費税は絶対ダメとわかっていながら賛成に回った組織・個人の一つの例として取り上げさせていただきました。

*1:冒頭書きましたリフレ派学者さんたちは、消費税を毎年1%ずつ上げる位であれば、金融緩和でなんとかなるという発想のようですが、消費税を上げなくても2年で2%の物価上昇が厳しそうな現実を前に、消費税で物価を下げてもデフレ脱却は可能だという何らかのエビデンスがあって、消費税上げを容認されているのでしょうか。