昨日の報道によれば、みんなの党は次の参議院選の公約として国家公務員5万人削減を掲げるようです。
国家公務員を5万人削減、みんな参院選公約
2013年6月2日08時54分 読売新聞
みんなの党の参院選公約の原案が明らかになった。行財政改革のため5万人の国家公務員を削減するとしつつ、消費税増税には反対を続ける考えを打ち出した。憲法改正の発議要件を定めた96条見直しも盛り込む方向だ。4日の党役員会で決定する。
原案では、公務員に労働基本権を付与するとした。公務員の身分保障は撤廃し、降格やリストラを可能にする。「国家公務員の数を5万人削減し、給与、退職金、年金を民間水準に引き下げ、総人件費は2割削減する」とも明記した。
消費税率引き上げ関連法は廃止し、「財政の健全化は、埋蔵金の活用および経済成長を通じた税収の拡大を通じて行う」とした。国会議員は衆院で180人、参院で142人削減する。
国家公務員を削減しようという意図は、国家財政負担を減らそうということなのでしょう。
ではまず国家財政に係わる公務員人件費の実態を見てみましょう。
国家公務員は現在公称343万人となっています。 *1 (図表1)
公務員人件費総額については、政府発表資料が見当たらないのですが、労働運動総合研究所の資料から推計することができました。これによれば公務員に支払われる人件費総額は20.4兆円です。
図表1 公務員等の人数比率 図表2公務員等の人数と総人件費
いずれも労働運動総合研究所資料(H23)から作成
なお、人事院資料(H24)での公務員数は、国家公務員63.8万人、地方公務員279.4万人。 一方労働総研資料では公務員合計は354万人。ただしこの他に、公務員ではないが人勧を通じて給与が決まる人が「その他」の272万人がいて、合計626万人となる。
ただ、人事院勧告により人件費が決まる人たちはいわゆる公務員だけでなく、準公務員や私学職員など多岐にわたります。*2。
公務員とこれらの人事院勧告により給与が決まる労働者を併せて「公務員等」と呼ぶとすれば、公務員等の人数は626万人に達します。*3 そして先の労働運動総合研究所資料から、公務員等全体に支払われる人件費総額は34.7兆円です。
図表3公務員等の平均年間給与(万円)
出所は、労働運動総合研究所資料。
オレンジ色の線(409万円)は民間の平均年間給与。
煉瓦色は非正規雇用職
この資料では、階層別の年間給与も示されています。その平均は555万円です。 これをサラリーマンの平均給与409万円と比べれば約35%公務員の方が高いことが分かります(図表3)。
このように公務員人件費が高止まりしてしまった原因のひとつはインフレ率の上方測定誤差の問題があるように思います。
従って、国家公務員給与を国の債務削減の観点から2割減らす、というのは一理あるのです。
ただし。現在の日本はまだデフレが続いています。
支出面からGDPをみた式は、GDP=消費+投資+政府支出+輸出入ですから、単に国家公務員を5万人削減するだけなら、政府債務削減には寄与しても、政府支出減を介してGDPを押し下げ、同時に5万人の失業者を産むことになります。
また、5万人といえば、64.4万人の国家公務員の8%に相当しますが、現在の国家公務員のうち24万人は自衛隊員ですから、比例計算で自衛隊員を今2万人削減するといったことになりますから、それを発表すれば、尖閣諸島を狙う中国はみんなの党に泣いて感謝するでしょう。
みんなの党はデフレを悪化させる消費税(政府支出削減)には反対しながら、公務員削減(こちらも政府支出削減)では失業者を5万人産もうというのですから、政策的整合性はどうなのでしょう。
どうしても国家公務員を5万人削減するというのであれば、例えばそれと同時に、2割以上人件費を落とした非正規公務員を6万人以上雇用するといった政策とセットでなければ、現在のデフレの悪化を招くだけに終わりそうです。
正攻法は、今の上方バイアスがある消費者物価指数に変えて正しい物価指標により物価水準を判断した上で、アベノミクスをより強力に推進することで早期にデフレを脱却すると同時に、今後の公務員等の給与の伸びを今後伸びるであろう民間給与以下に抑制することでしょう。