今日の読売オンラインによれば、「安倍政権は年明けから、日本銀行総裁人事の本格調整に着手する。最優先課題であるデフレ脱却に向けた姿勢を国内外に示す重要人事として注目されており、すでに複数の候補が取りざたされている。」とのことです。
記事によれば右写真の7人の名前が具体的に上がっており、4人が学者出身者、3人が財務省出身者となっています。
右写真は上から順に
◯岩田一政 日本経済研究センター理事長(元日銀副総裁)
◯伊藤隆敏 東大教授(元財務省副財務官)
◯岩田規久男 学習院大教授
◯竹中平蔵 慶応大教授(元経済財政相)
◯武藤敏郎 大和総研理事長(元日銀副総裁、財務官)
◯黒田東彦 アジア開発銀行総裁(元財務官)
◯渡辺博史 国際協力銀行副総裁(元財務官)
次の日銀総裁の手腕によって、日本のデフレ脱却への道筋がつくかどうかが決するといっても過言ではありません。
そこで、これら7氏のこれまでの金融政策への発言などをまとめてみました。*1
◯岩田一政氏
・リフレ政策への理解
小泉内閣時代に竹中財務大臣の誘いで日銀副総裁に就任し、2007年日銀利上げでは、政策委員中唯一人反対しました。
ただ、2006年3月にはコアコアCPIがマイナス状態での量的緩和の解除に賛同したという一面もあります。
・リフレ関連書籍
「デフレとの闘い」(日本経済新聞社)
・特記事項
内閣府の経済社会構造に関する有識者会議(座長)で、インフレによる物価上昇によって名目成長率を高めて税収を増やしても財政収支は悪化する可能性が高く、財政再建はできないとする中間報告をまとめました。消費税引き上げ論議の際に民主党内などから出たインフレによる財政再建論をけん制する狙いがあるとみられます。(2011/10/17 時事通信)
◯伊藤隆敏氏
・リフレ政策への理解
2000年頃より岩田規久男氏らと共に、日銀に対しリフレ政策を主張しています。
ところが、近年では、デフレ下の消費増税賛成派*2となり、また「物価安定の目途もそうだが、政治に強制されてやるという印象を持たれるは最悪だ。押せばもっと動くと思われると、目標に対する信頼も失われ、行き過ぎてしまうリスクもある」 *3といった日銀官僚型の発言が目立つようになっています。
・リフレ関連書籍
「インフレ・タ−ゲティング」(日本経済新聞社)
「デフレから復活へ」(東洋経済新報社)
◯岩田規久男氏
・リフレ政策への理解
リフレ政策の旗頭的存在です。
・リフレ関連書籍
「インフレとデフレ」、「日本銀行は信用できるか」、「まずデフレを止めよ」他多数
・主張
古くは「日銀はマネタリーベースのコントロールを介してマネーサプライのコントロールが可能」と主張し、日銀を代表する翁邦雄氏と論争を繰り広げました(マネーサプライ論争)。
・消費税よりも前にデフレ脱却の必要性を説いています。
◯竹中平蔵氏
・リフレ政策への理解
「多くの国がそうしているように、プラス1%から2%の物価上昇を実現することを日銀総裁候補に求めるべきである。」と発言しています。
・主張
どちらかと言えば新自由主義的であり、雇用調整助成金などには反対しています。
規制緩和での潜在成長率アップを狙う考え方をとっています。
◯武藤敏郎氏
・リフレ政策への理解
日銀の金融政策に対し「まだ工夫の余地はある。」としています。ただ、「目標は3%では市場がどう反応するか。当面1%で間違いではない。」とも発言しています。
・主張
リーマン・ショック後の問題は日銀にではなく実体経済にあるとしていました。
「消費税増税ができなければ、国債格下げのリスクがある。 景気が良くなれば税収が増え、国の借金もなくなるとは考えない。」と発言しています。
◯黒田東彦氏
・リフレ政策への理解
金融政策手段は「国債からインデックス債、株式など山のようにある」とし、GDPデフレータでマイナス1%という状態を脱するためにも一段の金融緩和が必要としています。
・リフレ政策関連書籍
「財政金融政策の成功と失敗―激動する日本経済」(日本評論社)
・主張
財務官時代、S&Pによる国債格下げに対し、経常黒字国の自国通貨建て国債のデフォルト・リスクはないことを意見書として表明しています。
◯渡辺博史氏
・リフレ政策への理解
日銀の追加緩和については「トータルを2―3倍にしてもしょうがない」として、一段の量的緩和策は効果が見込みづらいと分析しています。
・主張
最近「貿易収支が恒常的に赤字のため、日銀に強力な金融緩和を求める自民党の安倍晋三総裁の発言がなくても円安だったかもしれない」と述べています。
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こうして比較してみますと、シェイブテイルとしましては、学者畑ではやはり岩田規久男氏、財務省畑では黒田東彦氏がそれぞれリフレ政策への理解があり、また主張も安倍政権の考え方になじむように思いますが、いかがでしょうか。
いずれにしましても、今後5年間の日本経済のゆくえを左右する日銀総裁・副総裁ですから与野党ともに熟慮の上での判断をお願いしたいところです。
*1:7氏の発言に対するネット検索の結果であり、独自研究結果などではありませんので、漏れや齟齬などがあればご容赦を。