内債が破綻する時とは
日本の国債が積み上がり、GDP比では世界最高水準となっていますが、日本の場合、円建て債券で、国内保有者が95%を占めています。
内債の場合、必要に応じてマネーを刷って返せばよいので、破綻の恐れはないと論じられることが少なくないのですが、ロゴフ教授の大著「国家は破綻する」では、ことはそう単純ではないことが論じられています。 同書によれば、1800年以降のデフォルト事例では、対外債務でのデフォルトが250件であるのに対し、内債でのデフォルト事例も70数件発生しており、内債でのデフォルトがそう珍しい事例ではないことが述べられています。 *1
「国家は破綻する」は過去800年、66カ国に及ぶ経済史の中の経済破綻事例をつぶさに分析したものであるため、個々の事例について、背景分析などはそれほど記載されていません。
廣宮孝信氏は、ロゴフ教授の内債破綻事例分析中、背景分析がしやすい1970年以降の42例の背景を調べ、内債破綻は3つのパターンに集約されることを指摘しています*2。
1)政情不安(内戦など)25件
国家存亡の危機ともなれば、内債といえども返済は保証されない、というのは考えれば当然かも知れません。
2)実質外貨建て 13件
物価変動リスクを回避するためなどの目的で、内債ではあるものの、ドルなどの外貨とペッグした債務も少なくありません。経済危機に際して、それを強制的に国内通貨に強制転換する、などの事例があります。 現在の欧州危機もPIIGS諸国などの債務は自国で自由にコントロールできない共通通貨、ユーロ建てであることから、万一破綻した場合はこのパターンのひとつと考えられます。
3)高インフレ対応 4件
少数ですが、物価連動債の破棄など高インフレに対応するために内債のデフォルトを選択した事例も記録されています。
内債破綻事例(1970年〜)の分析
42件の内債破綻事例は、政情不安・実質外貨建て・高インフレ対応の3パターンに分類し得る。
内債破綻事例は長い経済史の中には散見されるものではあるようです。
それらの中で、「実質外貨建て」債務の破綻というのは内債破綻に分類するのが適当がどうか疑問に思えます。
残るパターンのうち、政情不安(内戦等)と高インフレ対応は、いずれも将来に亘って紙幣と交換される商品が供給されるかどうか不安視される状況での破綻です。
翻って日本の状況を考えると、国債の残高は大きいとはいえ、見通せる将来に、商品にあふれる日本の国債が上記の3パターンのどれかに該当するようになるとはちょっと考えにくいところです。
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