シェイブテイル日記2

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死ぬ必要がない病気(1)

今回は経済とは全く関係がないお話です。
最近、筆者の知り合いの親戚が、喘息で亡くなったそうです。
まだ若い方だったので、亡くなった方の家族は悲痛だったということでした。

古い話になりますが、テレサ・テンという歌手がいてかなりの人気でしたが、ある時喘息で亡くなったのを思い出しました。*1 
喘息で亡くなる方ってどれ位いるのでしょうか。
こうした情報は厚労省の「人口動態統計」などから取ることができます。
喘息薬に強い新薬メーカーのサイトにそのデータが載っています。

日本での喘息死推移 厚労省人口動態統計
喘息では以前は日本で毎年6,000人が亡くなっていました。 1997年頃から死者数が次第に減少し、現在では年間約2,000名が亡くなっているようです。
私はこの2,000人の方たちは死ぬ必要がなくて亡くなっていると思います。
それは喘息については症状をほぼ完全になくす薬が完成して市販されているからです。
その薬は「吸入ステロイド薬」と呼ばれており、相当に重症な患者でもこの吸入ステロイド薬で症状をコントロールすることができるのです。
では、なぜそうした画期的新薬が登場したのちも喘息死がゼロにはならないのでしょうか。
これは筆者の推測になるのですが、「吸入ステロイド薬」という名前と関係があるのではないかと思います。
吸入ステロイド薬は名前の通り、ステロイド系薬剤に分類されます。 ステロイドといえばご存知の通り、使い始めた時には症状が良くなるが、多様な副作用があり、離脱困難とされています。
 ところが吸入ステロイド薬はちょっと違うのです。 喘息患者が吸入ステロイド薬を吸入するとその一部が患部である気管支から細気管支に広がります。
ここで作用を発揮するわけですね。 ところが吸入されたステロイドの約8割は気管支の繊毛運動に乗って唾液などとともに食道・胃・小腸と消化管の方に移ります。
もし消化管から吸収されれば血中に入って副作用の原因となるはずです。 しかし。 吸入ステロイドは、消化管に入ると簡単に分解されるようにデザインされた薬なのです(プロドラッグといいます)。 したがって気管支で喘息抑制効果を発揮するが、消化管に入れば速やかに分解されて消失するのが吸入ステロイド、ということになります。 私の近所にも喘息に悩む方がいらっしゃって話を聞いたことがありますが「いや、吸入ステロイドが効くってことは聞いて知っています。でも副作用が怖いから使っていないんですよ。」と語っていました。 「生兵法は怪我のもと」このことわざが筆者の頭に浮かんだものです。
 吸入ステロイドが副作用のないステロイドだという知識が全ての喘息患者に浸透すれば、日本での喘息死はゼロになると筆者は確信しています。
 
吸入ステロイド(ブランド名:フルタイド)と吸入ステロイド+気管支拡張剤(ブランド名:アドエア)
吸入ステロイドは気管支の炎症を抑制し、気管支拡張剤は炎症で腫れた気管支を拡げ、呼吸を楽にする。
なお吸入ステロイド薬はこの他にもいくつか病院で処方されている。

*1:テレサ・テン(訒麗君、デン・リージュン、1953年1月29日 ‐ 1995年5月8日)あともう少し生きていれば、特効薬と出会えたのに残念ですね。