日本の財政悪化突出
「IMFは3日世界20ヵ国(G20)の債務残高見通しを公表した。
日本については金融危機対応の景気対策に加え社会保障費の伸びなど「財政出動圧力が特に強い と指摘し、2014年にはGDPの2. 5倍に拡大するとした。
G20全体では約0.9倍、G20内先進国は1.2倍。」 以上 読売新聞091104.
さてなぜ、このようなことになったのでしょうか。
IMFが指摘するように、直接的には繰り返された不況対策などに伴う国債発行、少子高齢化により医療費や年金支払が大きく伸び続けていることが、国の債務残高の伸びにつながっています。
しかし、その背景には、1980年代後半のバブルを、金融引き締めで潰した挙句、経済が冷却し始めても金融引き締めを止めなかった当時の三重野日銀総裁と、不動産取引の総量規制で、死にかけている景気に止めを刺し、日本に「失われた10年」をもたらした当時の大蔵省の愚挙がありました。
歴史にもし、は禁物とは言え、バブル崩壊後、もっと早めに金融緩和を行っていれば金利による景気浮揚も可能で、これほどまでに債務残高を膨らませずに済んだはずでしょう。
そしてその後日銀は金融緩和をし始めた訳ですが、今度は中世のイタリアでの低金利記録を400年ぶりに塗り替えても目だった景気回復は訪れず、ゼロ金利の下、さらに日銀は、2001年3月より量的緩和政策をとりました。
そしてその後2002年2月から、2008年8月までは「戦後最長」といわれる景気回復局面に入りましたが、この景気回復について、日銀のゼロ金利・量的緩和政策でもマネーサプライは増えない状況で、日銀の政策が果たしてどれだけ景気回復に寄与があったのか疑問です。
これに対し、2001年頃を境に労働分配率は一段と低下しており、また非正規雇用者比率は増加の一途を辿り、特に2001年頃から増加が加速していることから、2002年から2008年にかけての景気回復は、家計部門から企業部門への所得移転が起きて達成されたと見るのが自然で、世間的(企業ではなく家計の視点)には「実感なき景気回復」であったのは当然です。 家計部門の、特に低所得者層(低所得者層ほど消費性向は高い)の可処分所得を犠牲にしての「景気回復」ですから、家計の消費回復は望むべくもなく、戦後最長だが最弱の景気回復だったこともまた当然の帰結でしょう。
同じパイの大きさで、家計から企業への所得移転を行っても、企業からみた景気回復はあっても、国全体として景気が良くなるわけがありません。 家計が消費を増やせる状況を作って初めて税収も増え国の債務残高増に歯止めがかかることでしょう。
しかしデフレ状態では、消費を後回しにすることにインセンティブがありますから、消費は増えません。
GDPデフレータで物価を見ると、現在の日本の物価下落は史上最長を更新中です。 消費税アップという人為的物価上昇があった、1997年から数えても既に11年以上経過し、これは世界的にも中世以来史上最長とされています。
それ以前の、日本の過去での継続的物価下落は、1925年からの7年間が最長で、米国でも1913年以降1930年から33年の4年間が最長でした。
世界的に最長の物価統計があるのは英国で、1264年以降のデータがあるとされるそうですが、英国最大の不況「大不況 」(1873〜1896年 )でさえ連続5年間が最長ということです。
日銀は、金利がゼロ以下に下げられないし、量的緩和もマネーサプライの伸びにつながらないため、現在のデフレ不況には日銀として打つ手はない、という立場のようです。
しかし、持続的なデフレ、つまりモノに対してカネの価値がありすぎる状態になっていることに対し、打つ手は本当にないのでしょうか?
日銀による無利子国債の引き受けでも効果はあるでしょうし、政府紙幣の発行を行っても効果はあるでしょう。
これらが財政規律の崩壊の恐れがある、というのであれば、マイナス金利政策、例えば減価する電子マネーの交付も真剣に考えるべきだと思います。
無為無策では日本経済に将来はあり得ません。