シェイブテイル日記2

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事業の優先順位付け(2) 正味現在価値分析

前回からの続きです。

民主党構想日本による事業仕分けとは、国や地方自治体の事業が必要かどうか、その組織が事業主体として適切か(他の自治体や国、民間が事業主体となる方が適切な場合もある)を検討した後、その事業内容をチェックするという手法だとされています。 [1]

しかし、大阪府WTCを取得すべきかどうか、あるいは府庁を移転させるべきかどうか、と言った判断に事業仕分けといった手法で十分かといえば疑問が残ります。

こうした場合、正味現在価値分析と呼ばれる方法が使えます。
正味現在価値分析とは、その事業にかかる投資キャッシュフローを、将来その事業から生じる営業キャッシュフローで補うことができるかどうかを判断するもので、通常プラスの営業キャッシュフローとマイナスの投資キャッシュフローを足し合わせ、その総額(=正味現在価値=その事業の価値)がプラスならば基本的に事業にゴーサイン、マイナスならば、ストップ、と言った判断をします。

ただ、大阪府のような地方自治体は、必ずしも採算性がプラスの事業だから進める、という判断ではありませんので、仮に正味現在価値(=採算性)がマイナスであった場合、どの程度のマイナスが予想され、そのマイナスの価値に対し、採算性では評価できないどのような効果が期待できるのかを明らかにし、最終的には府知事・府議会が判断することになるのでしょう。

将来の営業キャッシュフローの算出は、勿論将来のことですから、1つの数字で決め付けることは出来ません。 そこで前提となる予測数値には最もありそうな値である、最尤値(さいゆうち)、悲観的予測に基づく悲観値、楽観的は予測に基づく楽観値など少なくとも3つの値を使って計算します。
お役人はこの前提の数字を弄ることで、結論の数値を自分の好きなように誘導するのがお好きなようですが、こうした行為については「公務員処罰規定」のようなものを作り、現役時代はもとよりOBになってからも責任を追及できるようにしないといけないでしょうね。

なお、正味現在価値分析のテキストなどを見ると、将来のキャッシュフローを現在の価値におきなおすための「金利」(割引率といいます)の議論が多く、そこでイヤになってしまいますが、この金利を余り厳密に考えず、金利=0で計算しても、今の日本の低金利時代にあっては問題は生じないと思います。 

それよりも将来の姿を描く前提が重要です。  ごまんとある前提のうち、どの前提が、採算性の結果に及ぼす影響が大きいかを見極め(見極めの方法には、例えばトルネードチャートなどあり)、その結果への影響の大きい数個の前提に絞って、調査にコストをかけ、議論を尽くせばより精度の高い採算性分析を行うことが可能となります。