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社会保障と税の一体改革の正体は「負の財政政策」

昨日のエントリーでは、国際的に比較して日本の消費税が標準税率が低い、とされていながら、実際には国税にしめる消費税比率は現在でも低くはなく、増税を強行すれば、世界最高水準の比率となることを書きました。
麻生財務相が触れようとしない消費税の真実 - シェイブテイル日記 麻生財務相が触れようとしない消費税の真実 - シェイブテイル日記

本日は、日本の消費税とは「負の財政政策」だ、というお話を書きたいと思います。

このブログでも何回か指摘しましたが、ある政策の効果を検証するには、その政策をやる場合とやらない場合の効果と費用(コスト)を同時に比較する必要があります。

来年4月に予定されている消費税増税の根拠は、改めて言うまでもなく「社会保障と税の一体改革」と呼ばれるもので、内閣官房のHPによれば「社会保障の充実・安定化と、そのための安定財源確保と財政健全化の同時達成を目指すもの」とされています。簡単にいえば、将来社会保障給付財源が尽きる可能性が高いので、それに備えて増税しましょう、という話ですね。

この内閣官房HPに記載された内容を消費税増税ありの場合となしの場合で、費用と効果を簡単に比較してみましょう(図表1)。

図表1 消費税増税有無による費用と効果の差異
消費税増税ケースと増税回避ケースの差分を取ると、
当面の効果には差がなく、増税だけが発生することが分かる。

消費税増税があれば、将来の社会保障財源が確保できるといいますが、消費税が増税されたからといって当面(現在と近い将来)の社会保障給付が増えるわけではありません。従って、将来はともかく、当面は、費用(コスト)としては増税があるのに見返りとなる効果は(遠い将来になるまで)何もない、ということになります。
端的に書けば図表1の①−②が今回予定されている消費税増税の費用対効果ということになります。

ところで、図表2は財務省HPから採った、平成23年度の政府歳出の内訳です。


図表2 平成23年度政府歳出の内訳
出所:財務省HP

消費税増税で、仮に税収が増えるとした場合*1、この増分はどこに充てられるか、と言えば、増税したからといって当面は社会保障給付が増えるわけではなく、他の政策の財源に充てられるわけでもなく、結局は国債費の増額に向けられることになります。
 つまり、増税して増えた税収は国債の償還費用に消える、というのが「社会保障と税の一体改革」と呼ばれる政策の実態ということです。*2

つまり「社会保障と税の一体改革」という政策では当面国民への給付はなく、マネーは「民間→政府財源→国債費」と流れていくわけで、これは通常の財政政策「国債→政府財源→民間」の全く逆、つまり「社会保障と税の一体改革」とは負の財政政策にほかならないと言えるでしょう。

 日本の景気が過熱している局面ならば負の財政政策を検討する余地もあるでしょうが、アベノミクスでデフレ脱却を最優先にしている現在、負の財政政策を来年4月に予定します、というのは悪い冗談としかいえないでしょう。

*1:1997年の橋本内閣での消費税増税では景気が落ち込んで税収全体としては減りました。

*2:この国債費が将来の社会保障費の財源になるという方が適切かも知れませんが、当面に話を限れば大差はありません。