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NHKスペシャル「日本国債」の本当の問題II

前回、NHKスペシャル「日本国債」の本当の問題 NHKスペシャル「日本国債」の本当の問題 で、

 26日に発足する安倍新政権が日銀を制御しデフレを脱却し、無意味な消費税増税を行わなければ、NHKスペシャルでおどろおどろしく語られた「日本国債」問題は氷解してしまうのではないでしょうか。

と結論づけたところ、多くの読者の方から賛同のお言葉をいただきました。

ただ、この結論にはジャンプがあるのでは、というニュアンスでのご批判もいただきましたので、多少続編を書きたいと思います。


まずデータを見ながら考えてみましょう。 IMF World Economic Outlook Oct.2012版で、主要国の名目GDP成長率と政府純債務のGDP比の変化の相関を見てみました。 


図1-1〜-4 主要国の名目GDP成長率と政府純債務GDP比変化率の相関
出所:IMF WEO Oct2012。
日本は、デフレ前(1997年以前)を煉瓦色で、デフレ期(1998年〜現在)をオレンジ色でしめした。


日本はデフレ気味の1997年の橋本消費税増税でデフレ期入りし、続く小渕政権・森政権では景気対策として財政出動をせざるを得ず、政府債務が急増しました。
米国ではイラク戦争を開始した2004年には、名目GDPが6%ほど成長したのに、政府債務比率が20%ほど増えるという現象がありました(米国グラフ内の時計で1時方向の出っ張り)。
しかし、おしなべて、各国とも名目GDPが増加すれば、政府純債務の対GDP比率が下がり、名目GDPが減少すれば、政府純債務対GDP比率が上がる関係が見て取れます。

 デフレを脱却すれば、物価が上昇することで、名目成長率が上がります。 名目成長率が上がると、名目ベースでの法人収入や家計の収入が増えるので累進性のある税収増を介して累積債務の負担が軽減されることが期待できます。 また、名目GDP全体がインフレで増加することで、固定金利の債務の割合が小さくなる効果もあるでしょう。

ただ、この図を見ても、「インフレ税により政府債務が減ったんだよ。」という感想を持つ ひねくれた熟慮の方もいらっしゃるでしょう。

図2は 同じデータベースで日本の物価変化と実質GDP成長率の相関を見たものです。

図2 物価と実質GDP成長率の相関
日本(1981−2008年)
出所:IMF WEO Oct.2012
「インフレ税」仮説が正しいのなら、マイルドインフレになれば、
実質GDP成長率は右肩下がりに下がらなくてはならないが、
実際にはマイルドインフレになると実質成長率が上がる。

この図から推測すると、日本のように物価が安定している場合、物価がマイルドインフレ、つまりGDPデフレーターで1,2%、あるいは消費者物価指数で2,3%ならば、現在のように実質GDP成長率が1%程度の環境でも、実質3%、名目で5%の成長も可能かもしれません。

いかがでしょう。 日本でデフレを脱却すれば、国債発散の恐れも遠のき、何より国民経済が名目だけでなく実質も大きく改善するのです。 今日発足した安倍新内閣が金融・財政の両輪をフル回転させてデフレを脱却すれば、NHK「日本国債」の杞憂は雲散霧消することと思います。 *1

*1:蛇足ながら、日本の消費税は逆進性があることや、輸出企業への補助金の性格があることなど問題がありますが、なんといっても5%への消費税増税によってトータルの税収は増えるどころか減ったんですね。日本国債を憂える人は消費税増税には反対し、累進性のある所得税などの減税に反対するのが筋ですね。