シェイブテイルのデフレ脱却実践記

シェイブテイル日記ではデフレ経済研究を行ってきました。今後はこれをデフレ脱却実践につなげます。

デフレ状態で紙幣を刷るとその分紙幣価値は下がるのか

「紙幣を刷ると、その分紙幣の価値が下がる。」
一見当たり前の話のようですが、これは前提によらずいつでも正しいのでしょうか。

インフレ状態で更に紙幣を刷った場合には、額面価値に相当する商品の量は当然減ってしまいます。
この前提では「紙幣を刷ると、その分紙幣の価値が下がる。」といっていいでしょう。
問題は現在の日本のようなデフレ状態でも、同様に紙幣を刷るとその分紙幣の価値が下がるのかどうかです。

この命題を考える時、紙幣の価値とは何かを考えた方が真偽がはっきりするように思います。
紙幣には「額面価値」があることは誰にでもわかります。 ただ、その紙幣がちゃんと通用するか、という面から考えると、紙幣を通用させるには、価値の裏付け「アンカー」が必要でしょう。 

岩村充氏(早稲田大学富士通総研)は不換紙幣のアンカーは「政府への信頼」であり、紙幣価値とは「政府の株価」だとしています。*1
これはこれで貨幣の価値に関するひとつのモデルとは思います。 ただ、単位量の貨幣と交換される商品の量は、期待や思惑で形成される一般的な株価とは全く異なり、短期間では比較的安定していることや、政府が存在しなくなっても貨幣が価値を持ち続けたというソマリアの事例*2など、このモデルにはいくつも反例が思い浮かびます。

シェイブテイルは、紙幣は額面価値のほかに、紙幣と交換が期待出来る商品あるいはそれを生産する生産力を価値の裏付け(アンカー)を有している、というモデルが妥当ではないかと思います。

このモデルでデフレ状態での紙幣の価値を考えますと、デフレ状態で紙幣量を減らせば、単位量の紙幣に対するアンカー、つまり担保の量は増えますが、紙幣の価値は額面価値までであって、単位量の紙幣がそれ以上の価値を持つことはありません。 逆に言えばデフレギャップがあってアンカー(単純に言えば商品)量が紙幣より過剰である間は、紙幣を増やしても、単位量の紙幣の価値は変わらないでしょう。 
つまり、インフレ状態で紙幣量を増やした時には紙幣価値は減るのに、デフレ状態で紙幣量を増やした時には紙幣価値は変わらない、ということです。
マクロで見れば、デフレ状態で紙幣量を増やせば、遊休設備や余剰労働力が活用され、こうした余剰がある間は紙幣価値は保持されるということになります。
デフレ状態で紙幣を増やしても、貨幣価値が減ることで損を被る人はいないということも言えるでしょう。

この「額面価値+生産力アンカー」という紙幣価値モデルは、インフレ・デフレによらず、また不換紙幣・兌換紙幣といった貨幣制度にもよらず一般的に貨幣価値を説明できると思うのですが、いかがでしょうか

*1:岩村充著『貨幣進化論』p219

*2:himaginaryの日記「不換紙幣には政府の裏付けは必要ない