シェイブテイルのデフレ脱却実践記

シェイブテイル日記ではデフレ経済研究を行ってきました。今後はこれをデフレ脱却実践につなげます。

SSRIと日​銀はどちらが危ない?

1.SSRIとはなにか
 皆さんはSSRIというものをご存知でしょうか?
最近の日本は高ストレス社会ですから改めて言うまでもないのかもしれませんが、SSRIとは「選択的セロトニン再取り込み阻害薬」(Selective Serotonin Reuptake Inhibitor) と呼ばれる抗うつ剤の一群です。 SSRIは約20年前にイーライリリー社からプロザックという名前の製品が発売されたのが最初で、当時うつ病患者が劇的に症状が改善することから、「ハッピードラッグ」と呼ばれて一躍有名になりました。 日本でも1999年に別のSSRIが発売されると、うつ病治療は三環系抗うつ薬と呼ばれる従来薬からSSRIに主役が交代しました。

2.SSRI 自殺原因説
 ところがこのSSRIが何と逆に自殺を増やしている、という説が出てきています。
日本では1999年にSSRIが発売され、この頃から自殺が増えた、というのが論拠のようです。
例えば「1998年以降抗うつ薬の売り上げ増加と自殺者激増が一致」(SAPIO2011年10月5日号)がそのひとつです。
この中での論拠として、自殺者の中には精神科医でSSRIを処方させている人達が多かったことをあげています。 これに対し、読者からは、「それでは火事の際には消防車がいつも見られるから、火事は消防車が原因で起きている可能性が高い。」といった反論が多いようです。
しかし類似の説はジャーナリスト以外にも何人かの医者からも唱えられています。精神科医冨高辰一郎氏は、SSRI発売によりうつ病(の顕在化)が顕著になり、自殺の方は単位人口あたりでは「逆に減っている」という論調です。 その論拠となったのが図1です。*1

図1 人口10万人あたりの標準化自殺率

冨高氏は、現在と1960年との比較で、日本では自殺は「むしろ減っている」との結論を導いています。
しかし、この図1からは逆に好不況と自殺数の相関の方が目立ちます。

3.日銀デフレの恐ろしさ
 SSRIうつ病治療を身近なものにしたため、統計上のうつ病患者数が増えた、ということは大いに考えられるところではあります。
ただ、1997年のデフレ下での消費税増税の翌年から日本での自殺者が2万人台央から3万人台央へといきなり1万人ほど急増したことを、現在の10分の一ほどしか売上がなかった発売直後のSSRIで説明しようとすることには無理を感じざるを得ません(図2と図3)。
 日銀がデフレを放置し、1997年の消費税増税で一層デフレが悪化したことで、自殺者やうつ病患者が増えたという事実を、全く別のトンチンカンな原因に責任転嫁されると、平成不況のために自ら命を断った10数万人の方たちの魂も浮かばれないのではないでしょうか。 なおこのエントリーと同趣旨の、「SSRI犯人説」への反論は、医師うろうろドクターのブログにも掲載されています

 
図2 向精神薬の売上推移
緑色の抗うつ薬の一部(現在では大半)がSSRIの売上。
 

図3 自殺者数の推移
抗うつ剤の売上は1999年以降毎年増えているのに対し、
自殺者数は平成10年(1998年)に1万人急増した後は3万人台で高原状態になっている。

*1:図1は冨高辰一郎「うつ病の常識はほんとうか」(2011)、日本評論社からの引用