シェイブテイルのデフレ脱却実践記

シェイブテイル日記ではデフレ経済研究を行ってきました。今後はこれをデフレ脱却実践につなげます。

サルでもわかる日本国債の不安を除く方法

最近欧州危機が再燃の兆しを見せるなか、日本もギリシャ化する、いや日本はギリシャ以上にひどい状況で、改革は待ったなしだ、などいろいろ議論されています。
今回は日本国債の積み上がりを抑えるためには何が有効で何は有効でないかを考えてみましょう。


図1損益・バランスシート両面から見た日本の国家財政 
国家財政に収益をもたらす3グループと、主な支出先4グループ、
それからバランスシートを示した。
バランスシート中の8.プライマリーバランスは4.国債費と2.新規国債発行額の差。
 
図1は日本国家(政府)の損益とバランスシートをざくッと見たものです。 企業の財務諸表と同様、国の損益とバランスシートは同じ国家財政を、ふたつの切り口、1年単位で見たものと累積で見たものであり、

4.国債費−2.新規国債発行額=8.プライマリーバランス

という関係でつながっています。*1 プライマリーバランスとは借金のある家計でいえば、年間借金純返済額といったところで、このプライマリーバランスを0以上に増加させれば国債残高は減っていきます。
日本国債の不安をなくすためには、現在大きくマイナスであるプライマリーバランスを、たとえマイナスのままでも現在より増加させる(より0に近づける)政策をとる必要があります。 それではプライマリーバランスを増加させる政策とその効果を順に見ていきましょう。

表1 政府支出抑制策 
主な政府支出抑制策としては、公務員給与抑制、年金減額、医療費や公共投資抑制などの
その他政府支出抑制がある。表中、緑色のセルは、国民生活に直接影響のある部分、
レンガ色は直接には影響しない部分を示す。

表1は政府支出を抑制してプライマリーバランスを改善しようとするものです。 現在の欧州危機への対応もまさにこの政府支出抑制型ですね。
政府支出抑制には一見大きく異なって見える公務員給与抑制、年金減額、医療費や公共投資抑制などがあります。減額した政府支出分を4.国債費の増額にまわしてプライマリーバランス改善を目指します。ただ、こうした緊縮財政策は、国債費を増額した分だけ5.〜7.の支出減を介して民間へのマネーを抑制します。 緊縮財政策は、マネー減少による景気抑制とデフレ傾向が伴います。 好景気でインフレ状況ならば大変結構な策ですが、景気が良くない欧州や、景気が良くない上にデフレの日本では緊縮財政策は自殺行為です。 また景気悪化を介して税収を減らしますので、緊縮財政策を介して財政再建をなしえた政府はない、といわれるゆえんです。


表2 収入増加策(その1税収増)
何らかの方法での増税策、昨今話題の消費税増税の効果。
比較のために何らかの原因での好景気の影響も記載した。

表2は増税による政府収入増加策です。仮に、何らかの方法で増税したとすれば、その分を4.国債費に回すことができます。ただ、プライマリーバランスは一旦は改善するしょうが、増税で民間のマネーを吸い上げるのですから、景気が悪化し、税収が下がるので、増税の効果を継続するためには、それ以上に好景気が続かなければ持続性がありません。 なお、消費税増税は、財務省ウェブサイトでも確認できますが、トータルでは税収減少要因です。
デフレ日本で消費税を上げると、税収が減る上に景気が悪化し、プライマリーバランスの悪化が加速し国債破綻不安は加速するでしょう。
 また仮に、何らかの要因で好景気になったとすれば、税収が増える分、4.国債費に振り向けることができます。 日本でも小泉首相の時代には好景気により税収が増え、プライマリーバランスが改善していましたね。 ただ小泉改革では、日銀のデフレ政策をやめさせずに雇用流動化策をとったために、非正規雇用が促進されてしまいました。 小泉改革では、見かけ上「好景気」による税収増は、デフレ下にあるためサラリーマン給与が減り続ける中での企業増益でした。結局、家計(労働者)→企業→政府というルートでのマネー吸い上げでしたから、「実感なき景気回復」というのもうなずけます。


表3 収入増加策(その2 国債・通貨発行)
新規国債発行でプライマリーバランス改善ができるのか、国債増発で
財政政策を実施したら効果、通貨増発の効果をみた。

表3ではその他の方法によるプライマリーバランス改善策を見てみましょう。 まず新規国債発行でプライマリーバランスの改善が可能かどうかを考えて見ます。プライマリーバランス自身が国債費−新規国債発行高ですので、新規国債発行により、国債費を賄うというのはちょっと考えても無理です。
では、この新規国債をまず公共投資などの財政政策に使って、景気浮揚による税収増を介してプライマリーバランスを改善しようとすればどうなるでしょうか。これは、小渕政権などで繰り返し実施された建設国債による公共投資そのものであり、先に増発された国債増加より、税収増による国債費増加は小さく、プライマリーバランスは却って悪化させます。 「乗数効果があるので、建設国債による公共投資はプライマリーバランスを改善させるはず」という考え方は、10数年まえまで、日本政府の主流的考え方だったかもしれません。 ここはサルでもわかるように説明は困難ですが、発行された国債の全額が税収で回収されるとは考えられない上、建設国債も償還時期には返済せざるを得ず、返済時点では乗数効果は負であることを考えると、国債発行による財政政策はプライマリーバランスを悪化させることは不思議でも何でもないと思います。
さて、最後が通貨発行です。表1〜表3の3.通貨発行を見ていただくと、表3の最後以外は0つまり、中央銀行も政府自身も通貨を発行しないという前提でここまで話を進めてきました。しかし、もし政府が発行した国債中央銀行が直接引き受けて紙幣を発行するにしても、政府自身が政府紙幣を発行するにしても、この発行した通貨を直接4.国債費に振り向けることが可能です。このような国家の通貨発行権こそが国家と企業や家計との最大の違いでしょう。政府または日銀からのマネーにより、プライマリーバランスは直接改善できます。 税収から国債費に回さねばならない部分が減るのですから、マネーが民間に残り間接的に景気を改善する効果も期待できます。 

こうして表1〜表3と分析してみると、次のような結論に至ります。
 デフレ日本での支出抑制策はもってのほかであり、増収策の中でも税収増を先行させても持続的にプライマリーバランスの改善は期待できません。ましてやデフレ下での消費税増税は、税収全体を減らすことは財務省ウェブサイトでも確認される事実ですから、国民経済を縮め、かつプライマリーバランスの悪化を加速する愚策中の愚策です。 国債を発行し、市中消化して財政出動しても、国債が積み上がるだけです。
 デフレ日本で意味があるのは通貨を発行し、これで国債費を賄うことです。

 筆者としましては、国債のバランスを中心に国の経済を考えるのはいかがなものかと考えています。
 国債の日銀直接引受や、政府紙幣の日銀両替で政府がマネーを獲得したら、それを直接に国債費として使うよりも、公共投資・減税や補助金その他で民間にマネーを流せば、好況にもなるでしょうし、デフレ脱却もできます。 好況になれば税収が増えるのですから、自然にプライマリーバランスが改善します。

 いずれにしましても、デフレ国の為政者としては、国の財源として税収・国債のほかに紙幣発行があることを知らなければ、「出口のない国債危機」からの脱出は不可能でしょう。

*1:これは国債中心に見た式であり、逆に言えば、”「公債金収入を除く歳入」と「国債費を除く歳出」の差”と同じです。