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ギリシャと日本の国債は同列?

【要約】
ギリシャ国債はいよいよ破綻の様相を強めています。
・だからといって日本国債も危険な状態、というには両国の経済環境には大きな違いがあります。

ギリシャ国債の破綻リスクが改めて認識され、欧州の金融債ソブリン債の保証コストは急上昇して過去最高を記録しています。 *1
 また9日の報道によれば、ギリシャ5年物先物で見た場合同国の債務不履行の確率は94%と示唆されているとのことです。*2
 このように市場ではギリシャ国債破綻はほぼ避けられないという見方が広まりつつあります。
こうしたことからギリシャ国債と同様に長期国債が積み上がっている日本も危ない、という見方が一部に出ています。(例えば、小黒一正著「2020年、日本が破綻する日」日経プレミアシリーズ)
 では、ギリシャ国債と日本国債とは同列と見るべきなのでしょうか? 
 取り敢えず現象面から見ると、ギリシャ国債は2年物で利回り53%に対し、日本国債は利回り1%程度でギリシャ国債金利が連れ高することもなく、市場では「安全資産」のひとつとみなされていて、市場はふたつの国債を同列とは見てはいないようです。これは一体なぜなのでしょうか。

 そこでまずギリシャという国が置かれた環境を考えてみます。
 現在ギリシャEU圏の中にあります。EU圏全体を1つの経済単位としてみた場合、EU圏は日本・米国と同様に、変動相場制を取り資本移動も金融政策も自由になされています。 ところがEU圏を個々の国の集合と見た場合、例えばギリシャの通貨はかつてのドラクマから現在はユーロとなっており、いわばドラクマをドイツマルクに対しペッグしたような一種の固定相場となっています。つまり現在のギリシャは1)固定相場と2)自由な資本移動と3)独自の金融政策をとろうとしていることになります。
この3つの条件は、1997年に経済破綻したタイをはじめとするアジア諸国通貨危機*3と全く同じ構図となっており、これら1)固定相場と2)自由な資本移動と3)独自の金融政策を同時にとりつづけることができないことは 国際金融のトリレンマとして知られています。*4
 従って、ギリシャのように財務が脆弱な国は現在のEU圏の枠組みでは遅かれ早かれ破綻の危機に瀕するものと思われます。
今後財務が脆弱なEU加盟国が破綻を避けるとすれば、ユーロの使用を止め、ギリシャドラクマなど、自国独自通貨での変動相場制に復帰するか、逆に自国の金融政策をも放棄して、経済的に完全に一体化したEU内の1地方政府を目指すしかないのではないでしょうか。

 翻って日本は、変動相場制をとっており、国際金融のトリレンマに抵触する状態ではありません。 
日本国債が破綻に瀕しているかどうかについては改めて別のエントリーで述べますが、小黒一正氏の主張のように単に長期国債残高の対GDP比率の高低で今後の破綻を占う、というのは少々議論が粗すぎるとは言えるでしょう。

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