シェイブテイルのデフレ脱却実践記

シェイブテイル日記ではデフレ経済研究を行ってきました。今後はこれをデフレ脱却実践につなげます。

日本国債は破綻し得るのか?

【要約】
・日本国債は破綻し得るのかをシナリオに分けて考察しました。
・結論から言えば、日本国債が破綻するシナリオは現実的ではないと考えられます。

 最近、米国国債格付け会社のひとつが最上級のAaaから1ランク格下げしたことに端を発して国債の破綻リスクに改めて関心が高まっています。
昨日はムーディーズが9年ぶりに日本国債の格下げを発表しました。 そこで、日本国債は本当に危ないのかをシナリオ別に考察してみました。

【0】返済不要シナリオ(亀井静香*1三橋貴明氏らの主張)
まずは「国債は日本人が買っており、日本人が日本人に借金しているだけであって、右のポケットから借りて左のポケットに移すようなもの」という意見から考えます。 もし右のポケットと左のポケットならば同じ人の服ですが、国債では日本人Aさんから別の日本人Bさんがカネを借りているのですからちゃらにするというならそれこそデフォルトそのものです。 これは論外の意見と言えましょう。

【1】家計型破綻シナリオ
よく「日本を家庭に例えれば、収入が年300万しか収入がないのに、900万円で生活し、借金が1億円ある状態」などと言われ、現在の国債を買い支えている(?)家計の金融資産1400兆円と国の借金が同額となった途端、日本国債は破綻する、という話を見聞きします。 このシナリオは分かりやすいですが、以下で見るように、国家と家計の本質的な差を全く考慮していないと言えるでしょう。その意味は以下のシナリオで明らかにします。

【2】IMF管理シナリオ
 過去の国家破綻ではしばしばIMFが国に乗り込んで、その管理下に置く、というケースがあります。ただ、現代日本をIMF管理下に置くというシナリオは考えにくいです。なぜならば、破綻国家に代わって不足する外貨をIMFが肩代わり(融資)して復興を促進するのがIMFの仕事ですし、仮に日本が経常赤字国に転落し、ドルを借りるためIMFに救援を求めたとしても、IMFは日本を救済することはできません。 それは、日本の国の借金の規模が1,000兆円クラスであるのに対し、IMFの新規貸出能力は10兆円以下と言われていて、全くカネが足りません。*2そもそも日本以外の全世界の外貨準備を全部合わせても、6兆ドル(=500兆円)ですから*3、日本の借金を肩代わりできる機関や国家は世界中どこにもない、ということです。

【3】増税シナリオ(野田、与謝野氏、財務省官僚らの主張)
 世界にはどこからもカネを引っ張ってこれないなら、国民に重税を科して国債を買い支えさせる、というシナリオも考え得るでしょう。 しかし【1】以下で考えているシナリオでは既に家計の金融資産と国の借金が同等になっている、というのですから、税を払うために預金を解約しようとしても、その預金で買っている既発国債を売らないことには新規国債が買えないということを意味します。従って、増税によっては景気を悪化させる事はできても、国債破綻を恒久的に避けることはできそうにありません。

【4】日銀による国債直接引き受けシナリオ
  経済的に見て国家と家計の最大の違いは通貨発行権の有無でしょう。 比喩的に言えば、日銀が輪転機を回せば日銀券を発行できます。 より正確に言えば、日銀が国債を買い入れて政府に日銀券を渡せば、日銀のバランスシートが拡大しますが、それだけで政府の財源が生まれます。 今のところ、日本国債に破綻の気配はないので、日銀が自らのバランスシートを圧縮気味にし、不可解なデフレターゲティング政策を取りつづけることに対し、世界各国は競争相手国(日本)の自殺行為による没落として内心歓迎しているでしょうが、日本国債が現実にデフォルトしかねないとなれば、IMFなど何の役にも立たないですから、世界各国へのマイナスの影響は甚大です。
 そうなれば、ようやく世界各国は日本政府に対し「助言」というか「外圧」により、日銀が国債を引き受けて破綻を避けるという当然の策を採るように要求することは必定でしょう。 

【1】から【4】で見たように、日本の国の借金を引き受けられる主体とは、家計でもなければ、IMFでも国際社会でもなく、日本の中央銀行、日銀以外にはあり得ません。
そして、日銀による国債直接引き受けが行われた場合、日銀券が政府や家計に回ります。 そこで次のシナリオも考える必要が出てきます。

【5】日銀による国債の引き受けすぎによる高インフレシナリオ
 日銀が国債を引き受けても何ら害はなく、新発国債をどんどん消化して行ってくれることに味を占めた政府が必要以上に国債を乱発し、高インフレとなることはないのか? 
 これは可能性(probability)としてはあり得ます。ただし蓋然性(possibility)としては余り高いとは言えません。なぜならば日本はこの20年ほど需要を供給が大きく上回るデフレギャップ状態が続いています。 そこで国内のマネー乱発でインフレ率が急上昇する、とすれば、全ての製品価格急上昇、ひいてはその中に含まれる全ての雇用者の所得急上昇なしにはあり得ません。 つまり戦前のように、好景気を経て需要が生産を大きく上回れば(戦前なら軍需と戦争による生産能力急低下により)、高インフレの恐れが芽生えますが、好景気でも戦争でもないのに高インフレにはなりようがないでしょう。

 筆者の結論としましては、将来的に日本国債にデフォルトの恐れが現実問題として認識されるようになれば、巻き添えを恐れた国際社会の外圧により、日銀が国債を直接引き受けるように誘導され、またそれ以外に手段はなく、そしてこの直接引き受けによって何か問題が生じるか、と言えば、引き受け方が少なければ今と同様の不景気が続き、大量に引き受けて財政政策を行えばデフレも脱却し好景気になる、といったところがメインシナリオだと考えます。
 思考実験としては色々のシナリオがあり得ますが、実際問題としては、日本国債が近い将来に破綻するシナリオはあり得ないでしょう。

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*1:国債は本当に「右のポケットから左のポケットに金を移すようなもの」か? http://d.hatena.ne.jp/shavetail1/20091213/1260709656

*2:2005年時点で、「IMFの新規貸出能力は780億ドル」だとか。 http://www.anti-rothschild.net/truth/part1/01/part1_16.html 【追記】その後欧州危機への対応から増資がなされているようです。最終的にどこまで増資されるかはわかりませんが、少なくとも全世界の外貨量を大きく下回ることは確かでしょう

*3:各国の外貨準備高 http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%90%84%E5%9B%BD%E3%81%AE%E5%A4%96%E8%B2%A8%E6%BA%96%E5%82%99%E9%AB%98%E4%B8%80%E8%A6%A7