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マネタリーベースが積み上がってデフレのスイス

今日のロイターによれば、スイスでデフレ傾向が強まっているようです。

チューリヒ 5日 ロイター] - スイス連邦統計局が4日発表した7月の消費者物価指数(CPI)は前年同月比1.3%低下した。9カ月連続での低下で、1959年以来の大幅なマイナスを記録した。

低下幅は6月のマイナス1.0%、ロイターのまとめた市場予想のマイナス1.1%を超えた。

1月にスイス国立銀行中央銀行)がスイスフランの対ユーロ相場の上限を撤廃して以来、フランが上昇し、デフレ圧力が高まっている。

前月比では0.6%低下。市場予想は0.4%の低下だった。6月は0.1%上昇だった。

統計局は、衣料や新車価格の下落が主因だと説明。ヒーティングオイルやホテル宿泊費も下落した。ガソリン価格は上昇した。


スイスは、ユーロなどに対して強すぎるスイス・フランを下落させるべく2011年9月から今年1月まで、外貨買い・フラン売りを実施し、売ったフランを市場に放置する非不胎化介入をおこないました。

その結果、スイスでは名目GDPの6割に達するマネタリーベースが積み上がりました。(図表1)
それにもかかわらず、1959年以来の大幅物価下落を記録したわけです。
スイスは元々物価が低い国のひとつですが、2012年以降は継続的にCPIがマイナスとなっています。

スイス・日本は記録的な額のマネタリーベースを積み上げてもインフレにならない

図表1 スイス・日本・米国での物価とマネタリーベースの関係
出所: マネタリーベース=各国中銀ウェブサイト、CPI=IMF
デフレ傾向の日本・スイスと一般的な国のひとつとして米国を示す。
日本の2014年は消費税増税の影響を除いた推定値。
破線は日本の現在のマネタリーベースレベルを示す。

1998年当時は、スイスや日・米は量的緩和や大規模為替介入などを実施しておらず、マネタリーベースの名目GDP比は10%前後でした。 その後、日本はデフレ対策として量的緩和を実施し米国はリーマン・ショック後の金融崩壊対応として量的緩和を実施し、スイスは為替対策として非不胎化介入を実施した結果、それぞれマネタリーベースが膨らみました。

そのうちのスイスと日本ではマネタリーベースの増加スピードが早かったわけですが、両国とも物価は殆ど上がらないか下落しています。

日本以外のスイス・米国両国は物価上昇を狙ってマネタリーベースを積み上げたわけではないのですが、それにしても金融史に残る程のマネタリーベースが積み上がる中歴史的な物価下落を経験しているスイスの状況は、今後の日本の政策を考える上で参考にすべきではないでしょうか。