内閣府モデルの大罪(1)
10月16日に開催された参議院 財政金融委員会で、与党・自民党の西田氏が、政府が政策立案に使っている内閣府モデルの欠陥について指摘しています。
西田昌司氏の発言は昨日10月16日の参議員・財政金融委員会でのことです。 *1
以下はそこからの、かいつまんだ書き起こしです。
(動画8分過ぎ)
西田昌司
ゼロ金利、異次元緩和。これだけやってもマネーサプライは増えていない。日銀も頑張っておられる。しかしその効果はマネーサプライには現れていない。岩田規久男日銀副総裁 (かなり時間を取った説明の中で)
マネタリーベースを増大させることで、マネーサプライは増えなくとも、期待に働きかけて実質金利は下がっている。
1930年代にもそうだったが、銀行貸出が増えるのはデフレ脱却して3-5年経ってからだ。西田
私はアベノミクスを批判している訳ではないが、信用創造があるからこそ、お金がない人も投資をして、お金が回ってGDPが増える。それが後からくると副総裁がおっしゃるならそれには期待したいが、副総裁も認められているように、現在は間接金融が機能していないということ。
そこをどうするかということだが、結局は麻生大臣も仰ったように財政出動しかない。ところがこの財政出動をしてGDPが増えるという常識が最近では政府内で通じなくなっている。その一番の原因が、麻生大臣も仰った竹中(平蔵)さん。
この人が大臣だった時に、内閣府のマクロ経済モデルを変えちゃった。
このモデルを使うと、政府支出をすればするほど、乗数効果が0.いくつという考えられないことになっている。
数学でも判ることだが、1出したものがなんで0.いくつになるのかという話だ。
これが理由で財政出動ができなくなっている。参議員には調査室があり、その調査室では(内閣府モデルではない)マクロ経済モデルを持っている。
そのモデルで、前提として、公共投資を10年間、10兆円ずつ100兆円やる。2%の消費税はこの段階では先送りするべきとの判断で2年間先送りし、その2年半後に所得税を増税。
そうすると、シミュレーションでは、このまま放っておくよりGDPは増える。税収もぐっと上がる。GDPに対する財政収支も当初は悪くなるが結局改善される。10年ものの金利もたいして騰がらない。こういうモデルを使うことで財政出動ができるが、政府の(内閣府)モデルはそうではない。
今政府が使っているマクロ経済モデルを変えなければ駄目。聞くところによれば(内閣府モデルは)IMFモデルと言われていて、財政破綻した後進国でインフレが起き、財政出動ばかりやって破綻している国を治すためには、財政出動を小さくして税収を増やすという、財政健全化のためのもの。
ところが日本は財政健全化といっても、そもそも内国債で、はじめから財政破綻の心配がない。その心配がないところに日本に当て嵌まらないモデルを使うことから出てきていること。
麻生財務大臣
経済モデルは前提によって結果は異なるが、自国通貨建てで国債を発行している日本で財政破綻は物理的に考えれれないと理解している。西田
おっしゃるように日本で財政破綻はするはずがない。するはずがない破綻を前提にする必要はない。 麻生大臣は(内閣府モデルが)違っていると思っていても口には出せないかも知れないが、おかしいに決まっている(議場内薄笑い)。(動画22分30秒)
麻生大臣が、西田氏に釣り込まれてか、日本では財政破綻はあり得ないと発言、普段の消費税増税は不可避という論調と矛盾した発言をしていますね。
とりあえずそれはおくとしまして。
竹中平蔵氏は小泉政権時代の2002-3年頃に経済財政担当相・金融担当相を務めていました。
この当時に、まともだった当時の政府のマクロ経済モデルを、自説に都合がいいIMFの財政破綻国向けモデルにすげ替えてしまったんですね。
その結果、財政政策の乗数効果が1を下回る、というとんでもない内閣府モデルが作られ、その結果民需が枯れるデフレ下に、毎年のように公共投資が削減され、デフレが深化するという結果をもたらしました。
そしてアベノミクス第二の矢で公共投資を拡大しようにも既に縮んだ建設業界では、人材が枯渇してしまっていて、第二の矢は機能しないという現状につながっています。
竹中平蔵氏が勝手に変えてしまった政府のマクロ経済モデルが、竹中氏が政権を離れた今でも日本経済のデフレ脱却を困難にしているというのは全くひどい話で、西田氏も指摘するように日本に合ったマクロ経済モデルに戻すべきでしょう。
竹中平蔵氏
竹中去るともモデルは消えず。