シェイブテイル日記2

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日経平均68,000円の世界

黒田日銀の異次元緩和により、日経平均株価はついに15,000円を超えるところまできました。
欧米の金融ショックが襲った諸国でも中央銀行が大規模な金融緩和に乗り出すことで、リーマン・ショック前の株価水準を回復していますので、日本でもリーマン・ショック前の18,000円どころは既に射程距離に入ったと言えそうです。

黒田日銀が高株価政策を続ける必要がある理由については以前にこちらで書きました。
 日銀が株価高騰政策を続けなければならない理由 - シェイブテイル日記 日銀が株価高騰政策を続けなければならない理由 - シェイブテイル日記

では、中期的下限が18,000円として、中期の上限はどのあたりなのでしょうか。
これを考えるのに、先進諸国での中長期での株価とGDPの伸び率に着目してみました。

まず、株価指数の伸び率です。 中長期の株価指数の推移から算出された年平均伸び率を図表1に示しました。
株価指数の年平均伸び率は日本を除き、5-9%と大変高い伸び率を示しています。計算期間内には各国ともリーマン・ショックや欧州危機などの暴落時期も含んでいますが、それでもこれだけの高い伸び率になっています。これに対し日本は3%を下回る伸び率です。

欧米諸国の株価指数は5%超の伸び、日本は3%以下

図表1 先進国での株価指数伸び率
株価指数は各国通貨ベース。期間は'90年から直近まで。
ただし、日本は'90年にはバブル期に当たるため、'80年から直近までをとった。

では、同じ期間で、実質GDPの成長率はどうだったのでしょうか。実質GDPの伸び率を図表2にしめしました。

実質GDP伸び率では日本は他の先進国に見劣りしない

図表2 先進国での実質GDP伸び率
出所:IMF World Economic Outlook Apl, 2013
期間は'90年から直近まで。
日本は'90年にはバブル期に当たるため、'80年から直近までをとった。

さて、図表1での日本の評価期間の起点に当たる1980年では日経平均株価は6,500円ほどでした。その後の日経平均伸び率は実際には2.6%でしたが、図表2に示すように実質GDP伸び率では日本は他の先進国に見劣りしないことを根拠に、他の諸国の株価指数の伸び率の平均値、7.4%で日経平均も伸びたとしたら、現在の株価はいくらだったでしょうか。

その答えは68,000円です。バブル時の株価ピーク40,000円をはるかに上回る値となりました(図表3)。

日銀の金融政策が正しかったら現在の株価は68,000円だった!?

図表3先進国の株価指数の変化
株価指数(縦軸)は対数表示。
日本以外の各国では年平均伸び率5-9%のレンジで、傾きは似通っている。
日本でも他の先進国同様の伸び率であったとすれば、日経平均は68,000円どころとなる。

日本も他の欧米諸国も大きなバブルを経験したという点では同様です。

ただ、バブル崩壊後、日本では日銀がバブル潰しに躍起になり、その後の20年間、必要な金融緩和には大変消極的でした。また橋本内閣では無謀なデフレ下の消費税増税にも踏み切り、デフレを強化してしまいました。

この日本の失敗に学んだ欧米諸国はバブル崩壊後には中央銀行が積極的な金融緩和を実施して、危機を早期に乗り切る努力をした点では日本と他の諸国に大きな違いが生じています。

筆者としましては、円高により産業の海外移転が進み、またデフレにより失業率が高く、就職率は低く、賃金は低下が続き、婚姻率が低下して、少子化が進んだ日本での現在の妥当な日経平均株価が68,000円、とするつもりは毛頭ありません。

ただ、日本(特に日銀)が現在のアベノミクスのように、時代にあった正しい政策を採っていれば、これに近い株価が妥当な日本経済であっただろう、とは思います。

そして、そのような高い株価が妥当な日本経済であれば、日本経済の世界でのプレゼンスは現在よりはるかに大きく、またまた国債も積み上がっておらず、社会保障制度の綻びもほとんどなく、失業率は低く、賃金もずっと高い世の中だったであろう、とも思います。

アベノミクスで今後日本が回復できる部分と、今さらどうにもならない部分とがないまぜ、というのが近い将来の日本なのでしょう。