シェイブテイル日記2

シェイブテイル日記をこちらに引っ越しました。

日銀は今こそ日銀券ルールについて自己評価すべき

8月14日の日経新聞では、日銀の長期国債保有残高が発行日銀券量を上回ったと報じられています。

日銀の長期国債保有残高80兆円 初めて発行銀行券を上回る
日経新聞2012/8/14 20:30
 日銀が保有する長期国債の残高が初めて銀行券(紙幣)の発行残高を上回った。日銀は国債の買い入れに歯止めをかけるために、長期国債保有残高が銀行券の発行残高を超えないようにする「銀行券ルール」を定めている。ただ、ルールの対象外である資産買い入れ基金による買い入れという臨時措置が主な要因であるため、日銀は「ルールには抵触していない」としている。
 日銀が14日発表した営業毎旬報告によると、日銀が保有する長期国債の残高は今月10日時点で80兆9697億円となり、銀行券の発行残高の80兆7876億円を1821億円上回った。
 国債保有残高が積み上がっているのは、日銀が追加緩和で資産買い入れ基金による国債購入ペースを引き上げ続けているためだ。日銀は今年2月と4月に長期国債の買い入れ規模の増額を実施し、長期国債を年末までに24兆円、来年6月末までに29兆円保有する方針。国債償還などもあるため残高には振れがあるものの、年末までには長期国債保有残高が銀行券の発行残高を上回る状態が常態化する見通しだ。
 日銀は資産買い入れ基金による長期国債の購入は、長めの金利に働きかけることを目的とした臨時の措置であり、通常の国債購入とは分別管理されているため「銀行券ルール」の範囲外としている。
 ただ、日銀が市場から大量の長期国債を買い上げている事実は変わらない。日銀が国の財政赤字を穴埋めしていると受け取られれば、「財政に対する市場の信認が低下し、金利が急上昇するリスクにつながりかねない」(みずほインベスターズ証券の落合昂二チーフマーケットエコノミスト)と指摘する声もある。

 日銀は日銀券ルールという自主ルールの外側に資産買い入れ基金を設定していて、この基金保有した長期国債残高の増加が日銀券ルール越えの原因だから、「ルールには抵触していない」と言いますが、お金に色がついていない以上、日銀のバランスシート全体でみれば、日銀券ルールは既に破られたと言って良いでしょう。
 日銀は「財政に対する市場の信任が低下し、金利が急上昇するリスクにつながりかねない」ので日銀券ルールを設定したのでしょうけれど、長期金利は今日も0.8%程度で低位安定(国債価格は高値安定)しています。 

 日銀券ルールは何のために存在するのか - 常夏島日記 日銀券ルールは何のために存在するのか - 常夏島日記 このエントリーをはてなブックマークに追加では、

「日銀は財政規律の確保やオペを柔軟に行えるようにする目的で」って何なんでしょうねぇ。財政規律の確保を行うべきなのは、内閣における財務省であり、最終的には憲法の規定の下で国会が責任を負うべきものであるはずなのですが、憲法にその存在が直接示唆されていない日本銀行が、なんで財政規律の確保のために何かしなければならないのでしょうか?
(日銀法を見ても、)
どこにも、日本銀行は財政規律の確保に責任を負うべきなんて書いていないわけですね。むしろ、日本銀行の目的は通貨及び金融の調整であって、それが(政府が責任を負うべき)「経済政策の一環をなすものであることを踏まえ、それが政府の経済政策と整合的なものとなるよう、政府と連絡を密にし、十分な意思疎通を図らなければならない」ということなので、あくまで日本銀行が行う通貨と金融の調整は、経済政策の従属変数というか、経済政策の下位概念というか、経済政策の大きな方針に従わなければいけない性質のものです。
 ところが、銀行券ルールとかという日銀が自分で勝手に決めたルールで、財政規律の確保という、自分たちの本来の責務でないことを追い求めている、それが今の日本の中央銀行なわけです。
 日本銀行が、自分に本来課せられていない財政規律の確保を言い訳に、日本円の供給を出し渋っている結果として何が起きているかというと、日本円が他通貨に比べて供給不足であるがゆえの円高、また、継続的に物価が下落するデフレーションです。いずれも「物価の安定を図ることを通じて国民経済の健全な発展に資する」という視点から見たときに疑問なしとしない結果です。

と指摘されています。

 元々この日銀券ルールは故速水優総裁が、2001年3月の量的緩和政策を実施するときに導入しました。
 白川総裁も「日銀券ルールが破られれば市場の信頼が失われ、長期金利が上昇する恐れがある」とことあるごとに指摘して来たのですから、日銀券ルールが実際に破られても何事も起こらないことに対してコメントする義務があると筆者は考えます。

 たまたま今日は終戦記念日ということで、今日のNHKスペシャルでは、終戦間際の日本のリーダーたちが何度もチャンスがあったのにことごとくそれらを見送り、沖縄上陸・原爆投下・ソ連参戦といった惨事のあとでしか終戦の決断ができなかったことが取り上げられていました。
その終戦間際に、終戦のために奔走しながら叶わなかった高木惣吉海軍少将が、組織の論理に振り回されるだけで勝ち目のない戦争の終結を決められなかった戦時リーダー達について述べた一文が紹介されていました。
「現実に太平洋戦争の経過を熟視して感ぜられることは、戦争指導の最高責任の将に当たった人々の無為無策であり、意思の薄弱であり、感覚の愚鈍さの驚くべきものであったことです。 反省を回避し過去を忘却するならばいつまで経っても同じ過誤を繰り返す危険がある。 勇敢に真実を省み批判することで、新しい時代の建設に役立つものと考えられるのであります。」

高木少将の指摘は、戦中の軍部だけでなく、同じ官僚組織である今日の日銀にもそっくり当てはまるように思います。