シェイブテイルのデフレ脱却実践記

シェイブテイル日記ではデフレ経済研究を行ってきました。今後はこれをデフレ脱却実践につなげます。

世界一中央銀行の能力が高い国はどこか?

 皆さんよくご存知のように、日本がデフレであるのに対し、世界には、物価安定の為にインフレ率の目標を明示する、いわゆるインフレ目標政策を掲げた国々があります。
 このインフレ目標政策については、日本国内ではつぎのような様々な批判があるようです。

■インフレ目標に対する批判

1.インフレ目標政策はデフレ(持続的な物価下落)を克服できない《無効論タイプ》
a.デフレは中国などからの輸入のためであり日本では対処できない【輸入デフレ論】
b.効果の波及メカニズムがない【波及メカニズム論】
c.実績・実例がない【実例論】
2.インフレ目標政策には副作用がある《弊害論タイプ》
d.インフレはコントロールできずハイパーインフレになる【ハイパーインフレ論】
e.名目金利が上昇し金融機関や日銀のバランスシートを毀損させる【金利上昇論】
f.財政規律を弱める【財政規律論】
g.構造改革が阻害される【改革阻害論】 
http://www.rieti.go.jp/jp/special/policy_discussion/07.html

この批判について検証するため、世界各国の物価変動を、少し違った切り口から考えてみます。

ある国がインフレ目標を掲げた場合、事前に定めた目標からのブレが小さいことがその国の政府・中央銀行の物価コントロール能力の高さを示すことになります。
そこで、インフレ目標政策採用国と非採用国で、2001年−2009年の9年間の物価(GDPデフレータ)の対前年比(%)について「バラつきの程度」の尺度である標準偏差を計算しました。物価変動の標準偏差が小さい国は物価を狙った通りにコントロールできている国、という訳です。

 下の図は、データの分析可能な世界161カ国のGDPデフレータ標準偏差(×)順に並べたものです。
インフレ目標政策採用国はで、非採用国はで、示しました。

標準偏差GDPデフレータ(1位〜161位) 
International Monetary Fund, World Economic Outlook Database, October 2009)
物価水準標準偏差(×)
インフレ目標政策採用国:、インフレ目標非採用国: 
縦軸:GDPデフレータ対前年比(9年平均値)及び、GDPデフレータ9年間の標準偏差

これを見ますと、インフレ目標採用国は全体に左寄りにあり、非採用国に比べると物価を狭いレンジにコントロールする能力が高いようです。では更に、このグラフの左半分の、物価水準の変動の小さい国々だけを拡大してみます。

標準偏差GDPデフレータ(1位〜81位) 
International Monetary Fund, World Economic Outlook Database, October 2009)
物価水準標準偏差(×)→ ×の値がゼロに近づくほど、その国の中央銀行は狙った物価水準を達成している。
インフレ目標政策採用国:、インフレ目標非採用国: 
縦軸:GDPデフレータ対前年比(9年平均値)及び、GDPデフレータ9年間の標準偏差

 これらの国々の大半は物価には問題を抱えていません。 
 特にインフレ目標採用国では、9年間の物価変動がGDPデフレータでほぼ1%−6%の範囲に収まっています。またインフレ目標採用国は、この物価が安定している81カ国の中でも左寄りにあることが確認できます。
 つまり、インフレ目標を掲げることが物価の安定に寄与していることはデータからも明らかです。
ただ、この図を見ていると、気になる国が2つあります。
それはGDPデフレータ標準偏差が最小、つまり物価が最もコントロールされた国()は、過去9年間の物価水準の平均値がマイナス(-1.0%)なことです。 (なお、もう一つの物価水準の過去9年平均値がマイナスの国(標準偏差の小ささの順位10位)は台湾です。)
勘の良い方はもうお気づきかと思いますが、この国()は日本なのです。
 要するに、日本は物価水準が世界最低であると同時に、物価が世界一中央銀行によってコントロールされている国でもあるのです。

 日銀は、2006年 3月10日に公表した『、「物価の安定」についての考え方』という文書の中で、こう述べています。

(日銀の目指す) 「物価の安定」とは、概念的には、計測誤差(バイアス)のない物価指数でみて変化率がゼロ%の状態である。現状、わが国の消費者物価指数のバイアスは大きくないとみられる。

この文章でいう消費者物価指数(CPI)は、計測誤差が少ない物価指標のGDPデフレータとは異なり、物価水準が高めに出る誤差(上方バイアスと言われています)が約1%程度あることが知られています。それにも関わらず、この「物価安定」についての考え方では、「現状、わが国の消費者物価指数のバイアスは大きくないとみられる」とわざわざ断りをいれています。
一方、日銀の白塚という方がが出した論文で、CPIの上方バイアスは0.9%であった と、実証研究として述べています。ところが、この論文の結論は「指数精度の改善に向けて意欲的な対応がなされた結果、上方バイアスも縮小している。このため、上方バイアスの存在自体は、物価情勢の判断にさほど大きな影響を与えるものではなくなってきていると考えられる。」と、実証研究とは矛盾した結語で終わっています。おそらくはこの論文の結語を根拠に、上述の断り書きが付いているのでしょう。
しかし、CPIの上方バイアスが縮小した、などという話は日銀以外からはほとんど聞いたことがなく、実際には恒常的に  CPIで測定した物価=GDPデフレータで測定した物価+約1%が成立し続けている と考えられます。

以上をまとめますと、
1)日銀は、行内ではCPIで0%のインフレ目標政策を実施している。
2)CPIは正しいものさしではなく、正しいものさしであるGDPデフレータより1%高く測定誤差が出る。
3)その結果、日銀はGDPデフレータでマイナス1%を狙い続けてしまっており、また世界一ブレなくそれを達成し続けている。
このように推定できます。

前回のエントリーで見たように、物価がマイナスを2年以上継続するいわゆるデフレの状態となっても、日本以外の国々は、普通にマイルドインフレに復帰していること、また日銀はマイナス1%という自ら設定した物価目標を達成するのに世界一の能力を発揮しているのですから、この目標を2ないし4%に変更した途端日本はデフレ脱却できると思うのは私だけでしょうか。

 デフレ脱却となれば、円高の懸念もなくなり、景気も回復し、税収も回復し、新規国債発行額は低下するのです。  消費税アップだとか、年金支給年齢アップだとかにうつつを抜かしている某国(亡国?)首脳はそんなことは知らないでしょうね。

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